2013年11月噴火後初めてとなる海洋調査船による西之島火山の学術調査研究について -火山活動、地震、津波の観測体制を整備し、西之島周辺の地形調査、空振観測、 映像撮影等を実施-

ターゲット
公開日

藤浩明 理学研究科准教授と独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学地震研究所の研究チームは、2013年11月の噴火後初めて、西之島周辺海域(西之島から6km以上外側の海域)で、海洋調査船による西之島火山活動の学術調査研究を実施しました(KR15-03航海(主席研究者:藤准教授、使用船舶:JAMSTEC深海調査研究船「かいれい」)、期間:2015年2月20日~3月1日)。

研究者からのコメント

世界的にみても火山活動に伴う津波が観測された実例は少なく、まして今回のように離島火山あるいは海底火山の場合は、観測網が近傍に無いため、実態はほとんど分かっていません。

SFEMSおよびOBS回収後には、そのデータを解析し、津波発生と地震活動の関連性から火山性津波の発生メカニズムを明らかにしていく計画です。

概要

小笠原諸島・西之島では、2013年11月以来、活発な噴火活動が継続し、溶岩流出によって、新しく形成された島が成長を続け、新しくできた島は旧島を飲み込んで東西2km南北1.8kmまで拡大しています(2014年2月5日計測・東京大学地震研究所)。島の中央やや南には火砕丘が成長し、小規模の爆発が頻発しており(海上保安庁)、その爆発によるものと思われる空振は、父島で体感されることもあります。火山噴火予知連絡会は、2014年6月に西之島総合観測班(班長:中田節也 東京大学地震研究所教授)を立ち上げ、気象庁、海上保安庁、および各研究機関と連携して、西之島の活動把握と災害予防のための予測を試みていますが、観測情報は非常に限られています。

一方で、成長中の西之島の崩壊を想定した津波シミュレーション(東京大学地震研究所)の結果では、崩壊量によっては小笠原村に津波の影響が出る可能性が示唆されています。小笠原に影響が及ぶ津波が発生する可能性は、今の段階では非常に低いと考えられますが、将来の火山島成長に伴う災害軽減のためにも、新島形成を伴う火山活動の推移やメカニズムに関する知識の蓄積と、離島火山活動を監視する観測技術の開発が重要です。

これらの状況を受け、本調査では、⻄之島の活動、およびそれに伴う地震や津波の観測体制を整えること、航空機観測では得られない⻄之島周辺海域の地形調 査、そして⻄之島近傍での空振・映像観察を行うことを主たる目的として、⻄之島火山の斜面崩落に伴う微小津波観測のために海底微差圧計を装備した海底⻑期電磁場観測装置(SFEMS:図)と、火山噴火に関係する微小地震活動観測のための海底地震計(OBS)5台を設置しました。また⻄之島周辺海域におよそ2日間滞在し、周辺の地形調査、空振観測と目視観察、映像撮影を行い、連続的な噴火の様子を把握することができました。


図:SFEMSの船上からの投入風景

詳しい研究内容について

2013年11月噴火後初めてとなる海洋調査船による西之島火山の学術調査研究について -火山活動、地震、津波の観測体制を整備し、西之島周辺の地形調査、空振観測、 映像撮影等を実施-