京大の「実は!」Vol.49 「京大の授業を全世界に!大規模オープンオンライン講義MOOCの実は!」

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 「MOOC」って、みなさんご存知ですか?

 「モック」?「ムック」?・・・いえいえ、読み方は「ムーク」。世界の有名大学の授業を、ネットを通じて誰でも無料で受講できる、大規模オープンオンライン講義です!一方向の映像配信ではなく、受講者同士の議論や成績評価もあり、まるで実際に大学の授業を受けているような気分になれます。

 京大もMOOCを配信している大学の一つ。京大のユニークな授業がどのように世界に発信されていくのでしょうか?その制作過程に迫ります!

あらためて、MOOCって何?

 MOOC(Massive Open Online Courses:大規模オープンオンライン講義)は、スタンフォード大学のある教員が配信したオンライン講義の大成功の後、「MOOC元年」と呼ばれる2012年にMOOCのプラットフォームが米国内で相次いで設立され、全世界に広がっていきました。

 京大は、ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)が設立した「edX(エデックス)」というプラットフォームに所属しています。しかも京大は、世界トップレベル44校からなる「チャーター校」に日本から初めて参加!「KyotoUx」という名称で講義を配信しています。 

京大MOOCの特徴はコレ!

 

  • 講義は全て英語。日本人の教員が頑張っています!
  • 修了条件を満たした受講生には、修了証を発行!
  • 実際の授業と同じように課題アリ。採点が難しいレポートなどの記述式課題は、受講生同士で採点!(ピアアセスメント)
  • 山極総長もMOOCを配信!学長自ら講義を行うということで、当時話題に!(詳しくはコチラ

気になるMOOC制作の裏側に、広報Hが潜入してきました!

 オンライン講義ということで、まずは動画を制作せねばなりません。実際に教室で行う授業とはまた違う苦労や工夫がありそうですね。

 今回は特別にスタジオにお邪魔し、MOOCの動画撮影現場に密着しました!

スタジオがあるのは、学術情報メディアセンター南館。学内に、そんな本格的なスタジオがあったなんて!

地下に行くと、「コンテンツ制作室」といういかにもな部屋が・・・

この向こう側がスタジオです。よくレコーディングなどで見かける光景ですよね!

スタジオの中は、こんな感じ。本格的です!

MOOC動画撮影に欠かせない、スタジオ設備!

 臨場感溢れる講義を演出するための工夫がスタジオには満載!その一部をご紹介します!

講義といえば黒板!これは電子黒板「ビッグパッド」(BIG PAD)。スタジオでかなりの存在感を放つサイズです。

パソコンと接続してパワーポイント資料を投影したり、本物の黒板のように書き込んだりもできます!

向かいには、スクリプトを写す「プロンプター」が(ただのカンペではありません!)。
上半分は鏡になっていて、実は・・・

その裏にはカメラが!つまり、スクリプトを見ていてもきちんとカメラ目線で話しているように見えるのです!最近の設備はスゴイですね~!!

横には確認用モニターが。うっかり映り込み注意です。。

背景は黒幕で覆われていますが、グリーンバックにもできます!天気予報でもおなじみの「クロマキー」技術を用い、人物と背景を合成することで楽しい動画を作れます。

 撮影前のリハーサル!

 ひととおりスタッフがスタジオの機器を点検した後、先生を交えてリハーサルが始まりました!短い動画でも、入念に撮影準備を行います。

★本日講義を行うのは、山本量一 工学研究科教授!

 山本先生の研究分野は、複雑流体の移動現象やソフトマター(高分子、コロイドなどやわらかい物質)の計算科学。主に計算機シミュレーションを用いて研究しています!

 この講義では、プログラミング言語のPython(パイソン)を使い、「ブラウン運動」という粒子の拡散モデルについて、実際にシミュレーションプログラムを作成しながら解説していきます!

 *山本先生の詳しい研究成果についてはコチラ!


ビッグパッドにスライドを映して、本番と同じように講義を始めます!

スタッフは、講義内容とスクリプトにズレがないか一緒に確認していきます。モニターで映りもチェック。

ときには画面を指しながら・・・おや、ここで誤りを発見!どうしましょうか。

スクリプトの方を訂正することに。パソコンでささっとデータを修正すれば、すぐにプロンプターにも反映されます。

10分間の講義に対し、使うスクリプトは50枚以上!あらかじめ先生に作ってもらうそうですが、このようにリハーサルの中で修正することもよくあります。

リハーサルでも緊張感を持ち、真剣に臨むスタッフの背中、頼もしい!

確認が終わったので、本番が始まるようです。防音扉を閉めて、広報Hは外から見学。

いよいよドキドキの本番!

 撮影中は、雑音が入らないように空調を切るという徹底ぶり!静まりかえったスタジオで見えない相手に向けて講義をするのは、先生にとっても慣れない経験。反応がない中、学生を前にしているのと同じテンションで講義を行うのはとても難しいと思います。(広報H、外から見学中の感想)

 講義を撮り終えた後は、講義開始1週間前に配信するPR動画を撮影!グリーンバックに変えて撮影し、後ほど別撮りした背景を合成します。

ポーズに悩む先生(笑)。PR動画なので、より視聴者に親しみを持ってもらわねばなりません。最後に"See you!"と言うところでは、「手を挙げてみてはどうですか?」とスタッフも提案!

収録が終わり、ホッとした表情の一同。和やかムードが漂います。みなさんお疲れさまでした!

 

休憩中の話の流れで始まった総長のダンス!台本にない面白さを引き出すのも、スタッフの腕の見せ所!?(笑)

★ちなみに・・・山極総長の動画撮影はこんな感じでした!

 国際的な会議で、「高等教育(大学教育)に世界中の人々が平等にアクセスできるようにすべきだ」という世界的な動向を知った総長。京大発の「霊長類学の息吹」を世界に発信すべく、MOOCの提供を決意したそうです。

 講義紹介ビデオの冒頭に出てくるゴリラのお面や、背景に並んでいるゴリラの人形の数々は、総長自らこの撮影のために用意したもの!ビデオの1:45辺りからのダンスシーンは、総長が好きな「リンガラ・ポップス」に合わせて突然始まったそうです(笑)。

 疲れていても、エナジードリンクを飲んで撮影に臨んだそう。受講者に楽しいと感じてもらえるように、当初の予定をどんどん変えながらより良い動画を作っていきました!

*メイキング映像もぜひご覧ください!

 MOOCの受講者からは、話している先生の姿しか見えません。しかし実際に撮影現場を見てみると、ノウハウとアイデアを持った制作チームと先生が協力して、一つの講義を作り上げているのだということが分かりました!

 制作チームのみなさんに、MOOC制作の苦労、やりがい、裏話などなど聞いてみました。

「京大の授業をもっとオープンに!」制作にかけるスタッフの思い

本日撮影に携わったスタッフの方々!制作には、他にもedXのシステムを担当したり、英語チェックをしたりするスタッフ、学生スタッフも関わっています!
左から、藤岡千也 高等教育研究開発推進センター特定研究員、酒井博之 同准教授、岡本雅子 同特定助教、長島大賀 同技術補佐員

京大MOOCに対する受講者の反応は?

 京大は、MOOCを始める前の2005年から、OCW(オープンコースウェア)で講義ビデオを配信してきました。学内で実際に利用している教材をインターネットで公開し、あらゆる人に京大の講義内容を知ってもらおうという取組み!

 それをよりパワーアップさせたMOOCでは、世界中どこにいても、京大の講義に積極的に参加できるように。

 さて、受講者の反応はどうでしょう?

酒井先生:「全て英語の講義なので、やはり海外からの注目度が高いです。講義で優秀な成績を修めた海外の学生を京大に招待し、日本の学生と交流を持ってもらう機会を設けたことがあるのですが、その中の1人が今、京大の大学院で学んでいます。MOOCをきっかけに、京大に留学したいと思う学生が増えたら、こんなに嬉しいことはありません!

山極総長が実施した講義では、コンペティションを勝ち抜いた優秀者2名を京大に招待!

講義を行う先生の反応はどうでしょう?

岡本先生:「最初は、対面とオンラインの違い、毎週の課題作成などに不安を感じる先生もいます。できるだけ打ち合わせの中でその不安を払拭し、先生の持ち味を出せるような講義をプランニングするのが私たちスタッフの役目。受講者が投稿するMOOCの掲示板に、先生自ら登場して盛り上がったこともあるくらい、最終的には先生にも楽しんでもらっています!」

 

 実は、残念なことに学内ではMOOCの認知度があまり高くないそう・・・。

 一度講義をしてみて、すっかりMOOCの魅力にとりつかれた先生もいるそうですが(笑)、もっとMOOCを活用してもらいたいというのがスタッフの思い。たとえばこんな教育展開が可能です。

★MOOCを使った反転授業

3年連続で講義を配信した上杉志成 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)教授は、学内の講義でMOOCを活用!学生は授業時間外にMOOCで講義を受けておき、授業時間中はグループワークや発表などに専念。同様に海外の大学でも、このような反転授業を行いました。授業の可能性が一気に広がりますよね!ちなみに上杉先生の4回目の配信は2017年4月1日からスタートします。(登録はコチラ!

面白い講義作りの秘訣はありますか?

藤岡さん:「ビッグパッドなど基本的な設備は提示しますが、講義スタイルは人それぞれなので、こちらでかっちりとは決めません。先生の「こんなことしたい」を引き出し、それを叶える方策を考えます。もちろん何でも実現できるわけではありませんが、初めから「できる、できない」を決めずに、とりあえず「やってみよう」!ときには無茶ぶりもありますが(笑)、見る人に何となくでも「あっ、面白そう」と関心を持ってもらえるしかけ作りに励んでいます。」



 OCWのときから約10年間、動画制作に携わってきた藤岡さん。「軸を持ちつつ、臨機応変に。毎回新しい経験の連続です」。どれだけノウハウが蓄積され、技術が進歩しても、常に新しい何かに取り組み続ける・・・もちろん苦労もあるでしょうが、世界中の人々に影響を与えられる、達成感のある仕事だと思います!

今後やってみたいことはありますか?

長島さん:「VR(バーチャル・リアリティ/仮想現実)のような、メディアの流行を取り入れられたら良いなと思います。今は講義をする先生しか映っていませんが、人形やキャラクターを登場させたりして、動画ならではのアイデアを盛り込んでいきたいですね。」

 


 人工的に作られた3次元環境で、あたかもそこにいるかのような感覚を味わえるVR。近年テーマパークでも導入されたりゲーム機器が開発されたりと、私たちにとっても身近な技術になってきました。これを実現できたら、いよいよ全世界京大キャンパス化計画も夢じゃない!?(笑)

 「もっともっと京大の教育をオープンにし、京大の得意分野を多くの人に発信していきたい」と語るスタッフのみなさん。

 MOOCを通して、「京大の授業って面白そう!」「この先生に会ってみたい!」と少しでも感じてもらえれば、京大で学ぶきっかけになるかもしれません。

 今回動画撮影した山本先生の講義は、2017年3月30日からスタートします!これをきっかけにMOOCに興味が出てきたという方は、ぜひ一度受講してみてくださいね。(登録はコチラ!

 取材にご協力いただいたMOOC制作チームのみなさん、山本先生、ありがとうございました!

 次回の「実は!」もお楽しみに!

京大MOOCについて、もっと知りたい方はこちら!

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