川添 信介(かわぞえ しんすけ)

学生・図書館担当

メッセージ

平成27年11月に理事・副学長を務めることとなりました。身の引き締まる思いでおります。京都大学のように多くの多様な構成員からなる組織のマネージメントは、山極総長のリーダーシップを7名の理事が支えるだけでは、とても上手く行くものではありません。学内外の多くの皆さまの京都大学への熱い思いとご協力によって本学はそのミッションを実現しており、また今後の発展を期することができるのだと思います。

私が担当を命じられました「学生」と「図書館」の分野についても同じことが言えるでしょう。それぞれについて、課題となるいくつかの論点を掲げておきたいと思います。

図書館の今後

文学部・文学研究科出身で本を読むことが仕事であった私にとって、大学図書館の将来は重大な関心事です。デジタル技術や通信技術の急激な発展は知識のインプットとアウトプットの形態を大きく変えつつあることは確かです。いわゆる「理系」分野では、教育も研究におけるデジタル化はいっそう進展するでしょうし、電子ジャーナルの価格高騰の問題とも絡んで、知識・サイエンスのオープン化の方向は京都大学みずからの「オープンアクセス方針」が明確しているところです。しかし他方で、「文系」分野の大半では、今でも冊子体の書籍が重要な媒体であり続けていますし、世界に1点しかない写本を研究対象とすることも珍しくありません。

このように教育・研究の実態の変化と多様性の増大という状況のなかで、京都大学の図書館・室もその状況に対応しなくてはなりません。冊子体の書籍の保存やアクティブラーニングのための物理的空間の確保が喫緊の課題であると同時に、他方ではオープンアクセスやオープンデータのためのデジタル空間の利活用方法を構築することも課題です。つまり、「建物としての図書館」と「機能としての図書館」の両方のあり方とその関係を、利用者である学生・研究者の視点にたって考えることが必要だろうと思います。

現在、図書館機構・附属図書館で平成21年に策定された「京都大学図書館機構将来構想」の改訂が検討されています。本学の教育・研究の「現場」である部局・研究科・研究所・センター等は、教育・研究の現状と図書館に期待する役割とをお知らせください。京都大学にふさわしい大学図書館の姿を追求したいと思っています。

学生支援の充実

大学には学生にとっての「正課」と「課外の活動」の区別があります。私の理事・副学長としての任務はこの広義での「課外の活動」にあります。京都大学の学生に関わる本来のミッションが教育と研究にあるのですから、「正課」が最重要です。しかし、学生諸君一人ひとりの視点から見るならば、「正課」はトータルな「京都大学での大学生活」の一部でしかないことも確かです。授業で学び研究室で研究活動を行うという「正課」のまわりには、そもそも住居や食事をどうするのかという問題があり、友人や恋人との関係に悩んだり、授業後にスポーツやサークル活動をし、卒業後の進路を考え活動するといった「正課外の大学生活」が存在していますし、そのような活動が「正課の活動」を支えているとも言えます。頭脳は頭脳だけではたらくのではなくて、いわば身体の全体が頭脳の活動を支えているのです。

しかし、このような課外の諸活動に関わる「学生支援」については、これまで京都大学は充実していたとは言えないように思われます。平成27年4月から、本学でそれまで学生部や学務部と呼ばれていた部署は「教育推進・学生支援部」となりました。「学生支援」が本学でも用語としても定着するよう期待しています。

その具体的な課題はたくさんあるのですが、重要なことの一つは「学生総合支援センター」のさらなる充実です。現在、様々なレベルでのサポートを必要としている学生は増加していると感じています。この学生の変化に対して、カウンセリングルーム、キャリアサポートルーム、それに障害学生支援ルームの三つからなる本センターについては、部局との連携・協力を図りながら、より充実した機能を発揮できるように、必要な検討を行っていきます。

もう一つは、「正課」と「正課外」の中間的な問題ですが、留学あるいは国際化の促進という課題です。本学は国際戦略として海外で学ぶ学生の数を大幅に増やすこととしており、ジョン万プログラムなど様々な機会を提供しています。これを学生支援の観点からもより実のあるものにしていきたいと思います。同時に、海外から本学に来て学びたいという学生を増やすことも必要で、そのためには奨学金や宿舎といった学生支援の側面の充実も欠かせません。

最後にやはり、吉田寮老朽化の問題を挙げておきたいと思います。吉田寮が100年を超えて、大規模な自然災害などのことを考えると、現状のまま居住することが危険であることは明らかで放置できません。早急な対応で学生の安全性を確保するとともに、京都大学の福利厚生施設としての吉田寮について、これからの100年を検討していきます。

以上のような諸課題に対して、学内関連部局の皆さまとの意思疎通と連携を図ることはもちろん、学外の方々のご意見も伺いながら、一歩でも前進できますように微力を尽くしたいと思っています。ご協力のほど、あらためてお願いします。