京都大学留学フェア 挨拶 (2004年11月2日)

尾池 和夫

スクリーンに映し出されたロゴマーク

 京都大学が初めて開く留学フェアです。京都大学だけでなく、多くの大学からのご参加も含めて、たくさんの方々が集まってくださっています。うれしく思っています。かわいいポスターができました。ロゴマークにして、名前を募集して賞を出したいですね。
今日の計画のために、海外の機関の、あるいは学外の団体からの応援もいただきました。ありがとうございます。日頃お世話になっている、近くのブリティッシュ・カウンシルや関西日仏学館、ドイツ文化センターや日本イタリア京都会館など、また、駆けつけてくださった在大阪中国総領事館、オーストラリア政府国際教育機構など、それに多くの留学を経験した先輩の学生さんたちのご協力も得て、内容のある密度の高い催しとすることができました。みなさまに厚くお礼を申しあげます。

満員の会場

 留学の目的は人によってさまざまです。目的はみなさん方それぞれが持っておられる、あるいはこれから持つことになるものです。それを明確にするための情報を得ることにも、このフェアが役立ってほしいと思います。
 このフェアだけでなく、みなさんは先生方から、あるいは先輩から、海外留学のための情報を得てほしいと思います。京都大学にはさまざまな実例があります。国際インターンシップという制度があって、大学院の教科の中にそれを組み込んであるコースもあります。また、海外でのフィールドワークが学位論文の中心課題であって、海外で生活している大学院生もいます。とりあえず外国での生活を体験しようという目的でも、もちろんいいと思います。海外に出ると言っても、なかには外国ではないという例もあります。広い太平洋の真ん中で測定して帰国する、南極で調査して帰ってくるという体験の実例もあります。これも海外での研究ですが、留学とは言えないかもしれません。

カンフォーラでスタッフと

 もう一つ、たいへん大事なことは、海外に留学するにあたって、自分の持っている何を、あるいは自分は日本のどんな文化を海外の人たちに伝えるか、それをはっきり持ってほしいと思います。日本を出て外国に入国したとたんに、あなたが外国人です。その土地の人たちが、あなたを外国人としての興味で接してくる場合も多いでしょう。そこでは自己の確立した日本人としてのあなたが問われます。そのときの用意をして海外へ出かけてほしいと思います。
 昨日、佐野奨学金をもらっている学生たちと佐野ご夫妻との懇談会がありました。そこに出席した留学生たちは、みな自国語で自己紹介をして、それを日本語でも話して、全員がとても雄弁でした。これを学んでほしいと思います。
 言うまでもなく、大学時代に海外で学習する経験をもつことは、多くの人たちにとって有益なことであるのですが、京都大学の学生が海外留学する事例は決して多くありません。京都大学では、海外からの留学生は今年5月現在1253名、昨年度の派遣留学生が245名です。京都大学全体で22000人ほどの学生がいますから、海外へ出る学生がたいへん少ないのです。この留学生フェアは海外へ留学するきっかけを作ることが目的で考えられた企画ですが、それが少しでも参加してくださった方々のお役に立てば幸いと思います。また、参加してくださったみなさんを通して、多くの方々に海外留学の機会が生まれることを祈っております。
 ご参加とご協力、どうもありがとうございます。