環境憲章

環境問題が地域社会にとって重要な課題となりつつあることは周知のところであり、京都大学としても教育・研究機関の使命として、教育や研究を通じ、環境問題解決に向けて積極的な取り組みを行う所存であります。

また、大学運営に当たっても、最近定めた「京都大学の基本理念」の中で「京都大学は、環境に配慮し、人権を尊重した運営を行うとともに、社会的な説明責任に応える。」と明記しましたように、自らが引き起こす環境負荷を可能な限り低減することにも努めなければなりません。

この基本的な考え方をより明確にするため、環境保全委員会に京都大学の環境憲章の作成をお願いしていましたが、約1年間の議論の結果、このたび京都大学環境憲章の成案を頂き、評議会の決定をみましたので、ここに掲載し、広く本学関係者に周知いたします。

本学の構成員一人一人が、この京都大学環境憲章に掲げられた基本理念や基本方針を理解し、環境負荷低減に向けた努力をされることを強く望みます。

平成14年2月13日

総長 長尾 真

京都大学環境憲章

基本理念

京都大学は、その伝統によって培われた自然への倫理観と高度な学術性や国際的視野を活かし、環境保全のための教育と研究を積極的に推進し、社会の調和ある共存に貢献する。

また、本学は、人類にとって地球環境保全が最重要課題の一つであると認識し、大学活動のすべてにおいて環境に配慮し、大学の社会的責務として環境負荷の低減と環境汚染の防止に努める。

基本方針

  1. 環境保全の活動を積極的に進めるため、本学のすべての構成員(教職員、学生、常駐する関連の会社員等)の協力のもと、継続性のある環境マネージメントシステムを確立する。
  2. 教育・研究活動において、環境に影響を及ぼす要因とその程度を充分に解析し、評価するとともに、環境保全の向上に努める。
  3. 環境関連の法令や協定を遵守することはもとより、可能な限り環境負荷を低減するため、汚染防止、省資源、省エネルギー、廃棄物削減等に積極的に取り組み、地域社会の模範的役割を果す。
  4. 環境マネージメントシステムをより積極的に活用し、地域社会と連携しつつ、本学の構成員が一致して環境保全活動の推進に努める。
  5. 本学構成員に環境保全活動を促す教育を充実させるとともに、環境保全に関連する研究を推進し、その成果を社会へ還元する。
  6. 本学が教育と研究における国際的拠点であることから、環境保全面での国際協力に積極的な役割を果す。
  7. 環境監査を実施して、環境マネージメントシステムを見直し、環境保全活動の成果を広く公開する。

なお、本環境憲章は、総長の諮問機関である環境保全委員会が検討を重ね成案を作成、部局長会議での審議を経て、平成14年2月5日開催の評議会に附議され、承認されたものである。

京都大学環境憲章について(京都大学環境保全委員会)

1. 環境憲章制定の経緯

京都大学が研究機関として地域環境に様々な形で環境負荷を与えていることを実感し始めたのは、1970年に制定された「水質汚濁防止法」において、化学物質を扱う研究機関が特定事業所として規制対象となった時からであろう。

当時、本学では実験廃液をどのようにして適正処理すべきかが大きな課題となり、そのため、1972年に全学委員会として廃棄物処理等専門委員会が設置された。その後、この委員会は本学をとりまく様々な環境問題に対応するため、1977年に京都大学環境保全委員会へと変更された。

環境保全委員会は、京都大学の環境問題への基本的な方策を調査審議する委員会であるが、これまでは本学に発生する実験廃棄物の管理方法、排出水の管理体制の整備、アスベスト対策、医療廃棄物処理、廃試薬対策、ダイオキシン対策など様々な環境関連法の整備や強化に伴う、具体的な環境問題への対応に追われてきた。

しかし、1997年頃から環境保全委員会では、本学も主体的に環境問題へ取り組み地球社会へ貢献すべきであるとの議論がなされるようになった。

すなわち、「京大広報」(No.515)で紹介したように環境保全委員会は、「京都大学は、自ら率先して環境への影響を把握し、社会に対する責任を全うすべく環境保全へ向けて改善を自主的に進めていくシステムを構築すべきである」との考え方のもとに、下記のような項目について議論が始められた。

  1. 環境問題に対する京都大学の基本姿勢を明確にすること(例えば環境憲章の作成など)
  2. 京都大学の環境評価プログラムの検討(環境管理の体制、環境負荷の把握、環境美化対策、環境配慮行動の実施など)
  3. 環境意識の向上方法について(環境教育の充実、環境情報の提供、環境美化運動、広報、啓発)

2. 3. については、具体的な検討がなされ、一部実施に移されたものもあったが1. についてはやや後回しの状態にあった。

おりしも、工学研究科と情報学研究科が桂キャンパスへ移転することになり、そこに環境マネージメントシステムを導入することが検討されることとなったため、環境保全委員会では、これらの取り組みの中でとりわけ1. の環境憲章の作成を集中的に議論する必要性が出てきたのである。

そこで、環境保全委員会では新たに環境管理等検討部会を設置し、約1年間十分に議論を重ね、ついに成案を得るに至った。

2. 環境憲章の補足説明

環境憲章の内容を理解してもらうには、その制定の背景でもあり、憲章の中にも謳われている環境マネージメントシステムについて若干説明しておく必要がある。

環境マネージメントシステムとはもともとは企業等が自らと環境との関わりについて認識し、環境の管理すなわち、環境への配慮行動を経営活動のシステムとして組み込むための手段として規格化されてきたものである。この環境マネージメントシステムには様々なものがあるが、国際的に有名なものは、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が規格化したISO14001である。

ISOは、製品やサービスの国際取引を容易とすることを目的に1947年に発足した民間組織であり、製品等の国際規格を定めているが、最近では品質管理や環境管理という管理についても規格化を図っている。

ISO14001の規格では、対象となる組織が自発的に、環境関連法規の遵守のもと、自ら汚染の防止を含めた環境目的・目標を定め、それを組織的に実現し、さらに継続的な改善を行う仕組み(環境マネージメントシステム)を構築し運営することを求めている。

そして、環境マネージメントシステムを導入すると具体的には1)計画(Plan)2)実施(Do)3)点検(Check)4)見直し(Action)の経営サイクル(PDCAサイクル)に基づいて、継続的改善を行うことになる。

組織が導入した環境マネージメントシステムがISO14001規格に適合していることを一般に公表する方法として自己宣言等の方法もあるが、一般的には、第三者による認定すなわち「審査登録(認証)制度」によることが多い。

以上の説明から明らかなようにこの京都大学環境憲章は、この環境マネージメントシステムにおける環境方針に相当するものであり、基本方針に掲げられた各項目も、環境マネージメントシステム導入の柱となるものである。

3. 環境憲章の具体化について

さて、環境憲章にうたわれた基本方針を京都大学としてどのように具体化していくかについて、まずは、桂キャンパスへ工学研究科の系別の移転が予定されているので、ISO14001について桂キャンパスの区分毎に認証取得を目指したい。

桂キャンパスに続いて将来的には本学すべてのキャンパスにおいて、認証取得を想定しているが、これにはかなりの期間を要すると思われるので、桂キャンパス以外では各部局単位で、当面省エネルギーやゴミ減量などの環境配慮行動を評価する環境評価プログラムを導入して、環境憲章のフォローアップをする予定である。

いずれにしても、京都大学が真に環境に配慮した大学になるためには、本学の構成員一人一人が、いかに環境保全の大切さを理解し、そのための具体的な行動に取り組むかにかかっているのである。本学の構成員が、この環境憲章にのっとり、種々の環境配慮行動を自主的に取り組まれることに期待したい。