今吉格 白眉センター/ウイルス研究所特定准教授が、ドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞 2014」(最優秀賞)を受賞しました。(2014年6月18日)

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今吉 格(イマヨシ イタル) 白眉センター/ウイルス研究所特定准教授は、「成体脳における神経幹細胞の光操作」の研究で、ドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞 2014」で最優秀賞を受賞しました。

同賞は、日本に縁の深いドイツ人科学者、ゴットフリード・ワグネルにちなんで名付けられた賞で、日独間の産学連携の促進を目的として技術革新を重視するドイツ企業により創設されました。同賞は、日本の優れた若手研究者による豊かな未来を創造する革新的な研究成果に与えられます。

また、廣理 英基(ヒロリ ヒデキ) 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)特定拠点准教授が、「超高強度テラヘルツ光源の開発と非線形分光に関する研究」で同賞(秀賞)を受賞することになりました。

今吉特定准教授のコメント

従来、脳を構成する神経細胞(ニューロン)は個体の発生期にしか作られないと考えられてきましたが、近年、ヒトを含めた哺乳類の成体の脳においても、神経幹細胞が存在し、ニューロンの産生が一生涯続いているということがわかってきました(Imayoshi et al., Nature Neurosci 2008)。

そのため、損傷したり変性したりしてしまった脳の再生医療に、成体脳神経幹細胞を利用することが試みられています。こうした神経系の再生医療を実現するために、非侵襲的に脳の神経幹細胞を操作するような革新的手法の樹立が期待されています。

そうした中、我々の研究グループは、光を用いて、神経幹細胞の細胞増殖とニューロンの分化を人工的に操作する新しい技術を開発してきました(Imayoshi et al., Science 2013)。脳を構成する主要な3種類の細胞には、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトがあり、それらの分化を司る遺伝子はそれぞれに対応して3種類あります。私たちはまず、それら遺伝子の発現量は神経幹細胞においては振動発現をしていることを明らかにしてきました。次に、一例として、3つの遺伝子のうちニューロンの分化を司る遺伝子Ascl1の発現を、光応答性の転写因子GAVPOを用いて光によって人工的に制御する系を作り、ニューロンの分化を光でコントロールすることに成功しました(Imayoshi et al., Science 2013)。

私たちは現在、光を用いたこの神経幹細胞の操作方法を、神経外傷、神経変性、また精神疾患などの動物モデルに応用することを試みています。私たちが開発した技術が、動物モデルにおいて安全性や有効性が確認できれば、この方法をヒトの神経疾患の治療に応用できる可能性があると考えています。

主な経歴

平成19年4月~平成20年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)・京都大学ウイルス研究所
平成20年3月 京都大学生命科学研究科博士課程高次生命科学専攻修了
博士(生命科学)取得
平成20年4月~平成21年3月 日本学術振興会特別研究員(PD)・京都大学ウイルス研究所
平成21年4月~平成21年9月 特定研究員(科学技術振興機構(JST)・CREST) ・京都大学ウイルス研究所
平成21年10月~平成25年3月 JSTさきがけ「脳神経回路の形成・動作と制御」(専任→兼任)
平成23年4月~ 京都大学次世代研究者育成センター(平成24年4月より白眉センターに改称)
「白眉研究者」(特定准教授)・京都大学ウイルス研究所
平成24年8月~ 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)連携准教授(兼任)

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