世界で初めて、X線自由電子レーザーを用いたフェムト秒領域でのX線直接吸収分光測定に成功 -極短時間に起こる化学反応の追跡手法をSACLAで実証-

世界で初めて、X線自由電子レーザーを用いたフェムト秒領域でのX線直接吸収分光測定に成功 -極短時間に起こる化学反応の追跡手法をSACLAで実証-

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用語解説

X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)施設SACLA

X線自由電子レーザーとは、X線領域におけるレーザーのこと。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。SACLAとは、理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における五つの国家基幹技術の一つとして位置付けられ、2006年度から5年間の計画で建設・整備を進めた。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAser の頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用運転が開始され、利用実験が始まっている。大きさが諸外国の同様の施設と比べて数分の1と、コンパクトであるにもかかわらず、 0.1ナノメートル以下という世界最短波長のレーザーの生成能力を有する。

フェムト秒・ピコ秒

1フェムト秒は1000兆分の1秒で、光が0.3マイクロメートル進むのにかかる時間。例えば、分子の振動周期や化学反応による分子間の結合の形成・切断に要する時間はフェムト秒の時間スケールで起こる。1ピコ秒は1兆分の1秒であり、1000フェムト秒に相当する単位

X線直接吸収分光法

試料にX線を照射すると、試料に含まれる元素に固有なエネルギーのX線が吸収される。照射するX線のエネルギーを変えながら物質による吸光度を測定する実験方法で、注目した原子周辺の局所的な構造や化学状態を知ることができる。測定できる試料は固体・液体・気体を問わず、軽元素以外は大気中でも測定可能なため、自由度が高い。X線が測定対象試料を通過する前と後で、X線の強度を比較する方法を直接吸収法と呼ぶ。化学反応が起こる時間と同じくらいの短い時間だけX線パルス光を物質に照射して観察すれば、 化学反応が進んでいく途中経過を追うこともでき、化学反応の全容を解明することも可能

LCLS

米国スタンフォード線形加速器センター(現在のSLAC国立加速器研究所)で建設された世界で初めてのXFEL施設。Linac Coherent Light Sourceの頭文字をとってLCLSと呼ばれている。2009年12月から利用運転が開始された。

吸光度

光が物質を通過した際にどの程度吸収されたかを示す無次元量(α)。入射光強度I0と透過光強度Iの比の対数をとり、吸収がある場合を正とするために負号をつけたもの
α = -log10(I/I0