2025年秋号
輝け! 京大スピリット
令和6年度総長賞受賞
石橋真央さん(教育学部4回生)
たった三十一音で、言葉にしがたい寂寥感やふと心が動いた一瞬、何気ない日常の光景など、多彩な世界を歌い上げる短歌。そんな世界に魅せられた一人が、「津島ひたち」の筆名で活躍中の石橋真央さん。素朴な言葉でありながらも、豊かな詩情をたたえるその短歌は、歌壇の四大新人賞のうち三つで高評価を得た。「短歌の魅力は、口ずさんでもらえるところ。読む人の身体感覚をとおして作品を味わってほしい」。
短歌をはじめたのは、京大に入学した春。友人に誘われて参加した新歓歌会(新入生を歓迎する歌会)で、歌について詳細に議論を交わす楽しさに魅了され、京都大学短歌会に入会した。「最初は作品をつくっても『何を表現しているかわからない』と評されることが多く、詠みたいように詠むだけではだめだと思い知りました」。どうすれば伝わるかと頭をひねり、ひたすら歌を詠むなかで徐々に短歌の「定型感覚」を掴んだ。「たとえば、三句目と四句目のあいだに休符を置き、三句目に余韻を込めるなどの型があります。どう読んでほしいのかをリズムで表現する感覚を体得し、歌を詠む楽しさを実感しました」。
同じ短歌会の仲間と組んだバンド。
一人ひとりが短歌と向き合う創作の合間に、
ともに演奏を楽しむことで絆をさらに深めている
一方で、「わからない」と言われることを恐れるあまり、表現が委縮し、作品に自信をもてずにいた。転機は、三回生の夏。「充分伝わっているから、もっと自由に詠んでいいよ」と友人に言葉をかけられ、「大胆になっていいんだ」と霧が晴れた。「歌壇賞に応募した連作『風のたまり場』では、直接的に表現しなくても、『床の冷たさ』や『オーボエがない』といった描写から、『何かが終わってしまったあとの寂しさ』を伝えられた実感がありました。モチーフに想いを託せるのも、短歌の魅力の一つです」。手応えを掴んだ『風のたまり場』はみごと第36回歌壇賞を受賞。新たな境地へと大きく踏み出した。
第36回歌壇賞の授賞式。
受賞の感慨と今後の抱負を述べた
幼少期から「変わり者の京大生」に憧れ、「京大に行く!」と心に決めていた石橋さん。高校では理系だったが、教育学部のアドミッションポリシーに惹かれ、一浪ののち、合格を果たした。「京大生はわが道を進む人にとても寛容で、『変でいること』をおもしろがってくれる。選んでよかったなと思います」。短歌会ではバンドも組み、鴨川で友人と熱唱するなど、京都での学生生活を満喫する。自由に感性を遊ばせるその姿勢に、三十一文字からひろがる歌の世界の源泉を垣間見た気がした。
第36回歌壇賞を受賞した連作『風のたまり場』から。
身近なモチーフと説明を抑えた描写が読者の想像を喚起する