2025年秋号
私を変えたあの人、あの言葉
はいどっち?
ヒャダインさん
音楽クリエイター
「三つ子の魂百まで」なんていうが、人間なんて誰かの一言や一瞬の出来事でパラダイムシフトを起こしてしまうもので。特に柔軟さがウリみたいに生きてきた私はあらゆる局面でぐにゃぐにゃと考え方が変わってしまう。「過去の自分」なんてもはや他人だわ。
私はもう十年以上フジテレビ系列の『久保みねヒャダこじらせナイト』という番組に出演している。漫画家の久保ミツロウ氏とエッセイストの能町みね子氏と3人で楽しくお喋りをするエンジョイ仕事なんだが、久保ミツロウ氏がメディアに顔出しするきっかけがかの伝説的な昼番組『笑っていいとも! 』。プロデューサーから何度も口説かれた結果、生放送で大ハネ、その後何度も出演することになり先述の冠番組を持つことになる。元来顔出しをせず、なんなら性別も隠していた彼女が「いいとも」に出る時に自らにつぶやいたのが「いいともに出る人生、出ない人生どっちがいい?」。
私、その話を聞いて脳に雷撃直撃。あー、なんという便利な装置なんだろうか。その後、私もそれなり波瀾万丈な芸能生活を送ってきた。「京アニの主題歌をする人生、しない人生」、「さいたまスーパーアリーナで歌を歌う人生、歌わない人生」、「ドラマで織田裕二さんと共演する人生、しない人生」、「小室哲哉さんと曲作りをする人生、しない人生」などなど。自分の臆病さや勇気のなさ、プライドの高さなどなどでスッキリと選択できないことがたくさんある。しかしその度に私は装置にかける。「これをする人生としない人生、どっちがいい」って。まあ読者のみなさん、わかるよ。文字にすると平易に見えるでしょ。でもこれを声に出したらまあまあヘビーにのしかかるから面白いもので。友人が何かに悩んでいる時にこれを口にすると皆「はっ」とした顔になる。
大学生活も選択の連続だろう。「する人生、しない人生」、とてもイージーな装置にかけてごらんなさいよ。スルッと答えは出るんだから。


大学生時代のヒャダインさん
ヒャダイン
本名 前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学総合人間学部卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストに楽曲提供を行うとともに、自身もタレントとして活動する。