わたしの京大力

No.015
青羽 悠

小説でも、研究でも、
「繋がり」の中に何かを見出したい。
多様な価値観の中で育む想像力。

総合人間学部 4年生 青羽 悠

Profile

2016年、初めて執筆した『星に願いを、そして手を。』(集英社)が第29回小説すばる新人賞を歴代最年少受賞し、16歳で小説家としてデビュー。京都大学総合人間学部に進学し、勉学に励みながら、文芸誌で作品を発表している。最新刊は『凪に溺れる』(PHP研究所)。

想像力を掻き立てる何かを求めて京都大学へ。

 小説を書き始めたのは高校に上がる前の春休み、15歳の頃でした。「このままだらだら大人になれば、何者にもなれないんじゃないか」そんな焦りがあったのだと思います。本を読むことはもちろん、音楽も漫画も好きだったのですが、PCが1台あればすぐに書き始められるという理由で選んだのが小説でした。ちょうど1年先の小説すばる新人賞を目標に書き始め、結果的にそれがデビュー作になりました。

 早々に小説家という生き方を手にしたものの、学問への憧れや、新しい環境で自分の世界を広げたいという思いがあり大学進学を決めました。京都大学を選んだのは、最先端の学問を学べるだけでなく、独特の異様な空気が漂っていて、想像力をかき立ててくれるものがありそうだと思ったからです。入学してみて、その印象は確信に変わりました。

 京都大学出身の小説家といえば森見登美彦さんや万城目学さんが有名ですが、あの突飛な世界観は頭の中だけで考えたものじゃないんだなと後々気がつきました。京都大学には本当にいろいろな価値観を持った人が共存していて、そこで過ごしていると自分が囚われていた常識の枠が取り払われていく感覚があります。まさに、小説の中のような突飛な出来事も当たり前に起こりそうな場所なんです。

 驚いたのは、ベンチで当たり前に寝ている人がたくさんいる光景ですね。「そんなところで寝ていいんだ!」と。私も影響を受けて、天気のいい日は昼寝しないと失礼だなと思ってしまうようになりました。常識が変わったという点では、京大変人講座も印象的です。世の中にはまだ知られていない価値や魅力がたくさんあるということを教えてくれました。

No.015イメージ

お気に入りの昼寝スポットは、大学構内の木漏れ日が差しこむベンチ。

No.015イメージ

快適な執筆環境にはコーヒーも欠かせない。

学問と小説がつながり、自分の外に世界が広がる。

 1年生の頃から宇宙飛行士でもある土井隆雄先生のもとで勉強させていただいたり、京都市立芸術大学のゼミに参加させていただいたりと興味の幅を広げました。現在は総合人間学部で地球科学を専攻しながら、複雑系科学を専門とされている総合生存学館の池田裕一先生に師事して、さまざまな対象を「複雑ネットワーク」という視点で捉えようとしています。

 複雑ネットワークとの出会いは、私にとってとても興味深いものでした。生態系、電力網、政治、人間関係、言語など、物事のつながりでさえあればどんな対象でも扱えてしまうんです。あらゆる事象をキャッチする力があり、分野を問わず包括的に何かを語れることに惹かれました。実は小説もこれに似ていて、人間関係の繋がりで物事が展開し、文章単体ではなく物語の構造全体によって作者の思いを伝えることができます。結局、小説でも学問でも「繋がり」を考えることが私に合っているんでしょうね。卒業後は大学院の総合生存学館に進学して複雑ネットワークの研究を続けながら執筆に取り組む予定です。

 大学に通う中で小説のテーマにも変化がありました。これまで自分自身の内面の変化や成長を見つめてテーマにしていたのですが、だんだんと自分の周囲の世界、つまり京都大学で出会った人や出来事へと興味が広がってきたんです。最近は卒論を通して、小説と学問の相性の良さを実感しています。研究も小説も「あちこちに散らばっているものを整理して、何か新しいことを見つけて伝える」という行為としてはすごく近いんです。小説の中に学問の面白さを持ち込むことができれば……作家としても、やれることはどんどん広がっているなと感じます。

 これまでは軸を定めずに好きなことに取り組んできましたが、今は究めたい学問があり、もっと面白い小説を書きたいという思いも強くなっています。どこにたどり着けるのか、少しだけ不安もありますが、それ以上にワクワクしている毎日です。最後はすべてが繋がって面白いところに辿り着けそうな予感がしています。

わたしの京大力MY KYODAI-RYOKU

価値観のるつぼから大切なモノを選び取り、自分を組み立ててゆくタフさ。

京都大学基金へのご寄付のお願い京都大学基金へのご寄付のお願い

人材育成を中心とする記念事業への取り組みや、
未来に向けて“京大力”を磨き続けるための運用原資として、
京都大学基金への寄付を募集しています。

↑↑