創立125周年記念行事

創立125周年記念行事イメージ

2022 年6 月18 日(土)、19 日(日)の両日にわたり、ロームシアター京都にて、京都大学創立125 周年行事が開催されました。ノーベル賞受賞者による講演や、プロスポーツ界で活躍したOB・OG によるトーク、研究者と市民との対話イベント、マルシェなど多彩なプログラムを実施。同窓生や在学生のみならず、子どもから大人まで多くの方々に参加いただきました。熱気あふれる2 日間の様子をリポートします。

▼2022 年6 月18 日(土)
10:00~12:00 OB・OG 講演会「アスリート魂~勉学とスポーツ、そしてその先へ~」
12:00~18:30 創立125 周年記念 アカデミックマルシェ
13:00~14:00 創立125 周年 記念式典
14:30~18:15 創立125 周年 記念フォーラム
▼2022 年6 月19 日(日)
10:00~16:00 京都大学アカデミックデイ2022~創立125 周年記念~
13:30~16:30 体育会学生主催イベント「京大体育会、まるごと魅せます」
14:00~16:00 創立125 周年 記念音楽会

創立125周年 記念式典

歴代総長をはじめ9名が登壇して行われた/多くの来賓者が見守った/湊長博総長/澤田純社長

式典では湊長博総長をはじめ、歴代の京都大学総長、田中英之 文部科学副大臣、澤田純 京都大学鼎会会長・日本電信電話株式会社代表取締役社長 社長執行役員(当時)、京都府副知事、京都市長の9名が登壇。全国の大学学長、衆参議員、本学支援者らなど多くの来賓者の出席のもとで執り行われました。式辞では湊総長がこの25 年間での大学院研究科の7増設、大学院生と教職員の増加を例に挙げ、「京都大学の過去半世紀は、本格的な研究大学としての飛躍の時代であった」と述懐。さらに「今後の学術は異なる領域同士が結合し、新領域でのイノベーションを起こすことが求められ、そのためにはグローバル化が喫緊の課題である」と力を込めました。田中副大臣は祝辞でオンサイトラボラトリーの設置や京大モデルといった産官学連携の取り組みなどについて触れ、「これまでの125 年の歩みを未来につなぎ、世界を先導する研究大学としての真価を発揮し、社会に貢献されることを期待しています」とエールを送りました。式典の最後は学歌静聴で厳かに幕を閉じました。

創立125周年 記念フォーラム

ノーベル賞受賞者4名と湊総長によるパネルディスカッション/在学生や高校生たちも熱心に耳を傾けた

テーマは「真理の探究と地球規模の課題解決」。京都大学ノーベル賞・フィールズ賞受賞の系譜をまとめた12分間の映像上映では、1946年に日本で初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士に始まり、朝永振一郎博士、福井謙一博士といった11名の本学にゆかりのあるノーベル賞受賞者を紹介。また数学におけるノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した廣中平祐博士、森重文博士の功績も伝えました。その後はノーベル賞受賞者5名による講演と利根川進博士からのビデオメッセージの上映、湊総長をファシリテーターとしたパネルディスカッションが行われました。フォーラムはノーベル賞受賞者の話を直接聞ける貴重な機会とあり、来賓や関係者に加え、本学学生、高校生など多数の聴講者が参加。受賞者の学生時代の意外なエピソードや、偉大な功績を生んだ背景にある発想や創造のヒントなどの話に真剣に耳を傾けていました。フォーラムの様子はYouTube を通じてリアルタイムで世界に発信されました。

ノーベル賞受賞者からのことば

記念フォーラムでは野依良治博士、小林誠博士、本庶佑博士、吉野彰博士が登壇し、山中伸弥博士はVTRによる講演を行いました。利根川進博士からはビデオメッセージをお寄せいただきました。
その内容から、特に本学の学生や研究者へ向け、学業や研究のヒントとなるメッセージをお伝えします。

野依 良治
野依 良治

科学技術振興機構 研究開発戦略センター長
(2001年ノーベル化学賞受賞)

「湯川秀樹先生が残した「一枚の手ぬぐい」 ~科学者がつなぐ文化と歴史~」

2005年、コロンビア大学で湯川先生の部屋をそのまま使われていた李政道先生を表敬訪問した際、一枚の手拭いをいただきました。湯川先生がテーブルクロスとして使われていたものです。小学5年生の時に湯川先生に憧れ、そこから始まった私の化学者人生。奇しくも私の両親は1939年の引揚船「靖国丸」で湯川先生と同乗しており、それから10年後に先生がノーベル賞を受賞され、私も2001年に受賞。その私に大物理学者を通して先生の手拭いが渡された。多くの優れた研究者たちは「この世の文化と歴史はどこかでつながっている」と言われますが、私も、この世界にはすべての研究者をつなぐ赤い糸が存在すると確信した次第です。

小林 誠
小林 誠

高エネルギー加速器研究機構 特別栄誉教授
(2008年ノーベル物理学賞受賞)

「素粒子研究の歩み」

125年前の1987年とは、J.J. トムソンにより電子が発見された年であります。京都大学は近代科学と歩みを共にしてきたと言えるでしょう。湯川先生の中間子理論、朝永先生の繰り込み理論、そして益川先生と私によるCP対称性の破れの説明を可能にする6種類のクォークの存在の解明。これらは素粒子現象の片隅の小さな発見というものではありません。すべての物質は粒子からできており、その研究は宇宙の進化の過程を紐解くことに通じるのです。アブラハム・パイスの書にある「過去は序幕に過ぎない」という一文。私が科学史を考える時に共感を覚える言葉です。

山中 伸弥
山中 伸弥

京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団 理事長
(2012年ノーベル生理学・医学賞受賞)

「iPS細胞 進捗と今後の展望」

2010年に設立された京都大学iPS細胞研究所の使命は、iPS細胞の医療応用です。現在すでにパーキンソン病やがんなど、さまざまな病気の治療の臨床試験が進んでいます。また、これまで治療薬がなかったALS(筋萎縮性側索硬化症)をはじめとする難病に対する創薬研究も行っています。多くの方のご支援を賜り、2020年より公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団が始動し、iPS細胞ストックプロジェクトや患者さん自身の細胞からiPS細胞(my iPS)を作製するプロジェクトに取り組んでいます。今後、iPS細胞の研究技術を産業界へ「橋渡し」し、社会に還元していきたいと考えています。

本庶 佑
本庶 佑

京都大学大学院 医学研究科附属 がん免疫総合研究センター長、京都大学高等研究院 特別教授
(2018年ノーベル生理学・医学賞受賞)

「獲得免疫の思いがけない幸運」

コロナワクチンを2回投与することで、抗体との結合能力が強くなるということはご存知だと思います。なぜこういうことが起こるのか、それがまさに免疫獲得の謎です。がん患者の免疫にブレーキをかける「PD-1」を阻害する抗体の投与が治療に有効であることが明らかになり、治療薬の開発につながりました。現在、世の中には、環境、人口、エネルギー、食糧などさまざまな問題があります。それらはすべて生命科学に関わることであり、生命科学にはまだわからないことばかりです。わからないからこそチャレンジの対象です。未来を担う若い皆さんに、生命科学のおもしろみに足を踏み入れてほしいと願います。

吉野 彰
吉野 彰

旭化成株式会社名誉フェロー
(2019年ノーベル化学賞受賞)

「リチウムイオン電池が拓く未来社会」

2019年にノーベル賞を受賞した際、受賞理由の一つに「サステナブル社会の実現に大きな期待」とありました。まだ余生をのんびり過ごせないなと思った次第です(笑)。リチウムイオン電池は今やモバイル機器よりxEV(電動車)への利用が多くなり、2030年以降には無人自動運転を行う人工知能搭載の電気自動車「AIEV」がシェアリングカーとして普及していくのではないかと思っています。そうした未来を描いた動画を作成したのは、今の環境問題に際して不安や罪悪感を抱いている子どもたちに向けて、AIEVがもたらすサステナブル社会の道筋を見せてあげることで希望を持ってもらい、「それを実現するのはあなたたちなのです」とのメッセージをお伝えするためです。

利根川 進
利根川 進

マサチューセッツ工科大学教授、理研-MIT神経回路遺伝学研究室所長、理研フェロー
(1987年ノーベル生理学・医学賞受賞)

「脳科学と人工知能学の融合」

私たちの研究チームは、「記憶」が脳の特定の細胞群に記録されるメカニズムを発見し、それらの記録を「エングラム」と名づけました。エングラム細胞の再活性化によって初期アルツハイマー病も改善できることを示しました。また最近は、エピソード記憶よりさらに上位にある「知識エングラム」についても重要な発見をし、この成果によって膨大なデータの収束をはじめ、人工知能の分野における新しい技術開発への道を拓くことが大いに期待されます。まさに今、脳科学と人工知能学が融合されるというエキサイティングな時代を迎えようとしています。

パネルディスカッション

 吉野先生は学生時代に考古学に打ち込んでおられましたが、研究に共通する点はありましたか。
吉野 考古学は文字のない時代の歴史なので、物的証拠がすべてであり、そういう意味では自然科学に近いですね。実験データをもとに仮説を立て、それが正しいか実証する作業ですから。また研究開発というのは未来を予測しなければならない。「歴史に学べ」と言われる通り、歴史の中での流れを読み取ると、未来の動きも予想できます。
 文系理系を問わず経験が活かされるということですね。次に、小林先生はどのような視点で素粒子研究に取り組んでおられたのかお聞かせください。
小林 素粒子分野に限らず、研究というのは何らかの壁にぶつかって停滞します。その場所は多くの人が集中しているような主流のアプローチであることが多い。逆に言えば人と同じ考えだと進まないということです。ただ、最近はリアルタイムで情報が入手できるため、考えを「育てる」時間がなくなった。若い方には、ご自分で考えて、先入観にとらわれず、柔軟な思考でプランを育てていただきたいですね。
 若い皆さんも心に染みる言葉だと思います。さて本庶先生には、わが国の生命科学の今後のあり方についてお話しいただければと。
本庶 突然ハイレベルな質問ですね(笑)。生命科学は昔と違い、今はお金がないと成果が出ない学問になりました。新しい技術開発には費用がかかります。また情報が急速に、過多になることによって、間違った情報の中で流される可能性があります。そういう中で若い人がどうやって自分の考えを貫き通せるのか、総長としても考えていただければ。
 真摯に受け止めさせていただきます。最後に、野依先生がよくおっしゃっている「世界を知ること」の意味を、メッセージも込めてお話しいただけますか。
野依 ノーベル賞の受賞者を統計的に見ると、5~6カ所の機関を経ている方が多い。1カ所に留まるのが悪いわけではありませんが、いろいろな考えや物事、つまり「異」に会うことが大切です。外との絆を結び、競争ではなく共創をする。京都大学がそうした新しい知識、知恵をつくっていける場所になることを期待しています。
 ありがとうございます。皆様フィールドは違いますが、どこか似た部分があると感じた若い方も多いのではないでしょうか。その共通点は何かということを友達同士で話し合ってみて、今後の学業や進路のヒントにしていただければと思います。

OB・OG講演会 「アスリート魂 ~勉学とスポーツ、そしてその先へ~」

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プロスポーツ界で活躍したOB・OGの3名が講演しました。元女子ラグビー日本代表の中嶋亜弥さんは「女性らしさとは何か」を問う動画を用い「自分がなれる最高の自分になろう」と力説。元プロ野球選手の田中英祐さんは自身の経験から「焦ることと努力は違う。体と心のSOSに耳を傾けて」と訴えました。競歩選手の山西利和さんはビデオメッセージを寄せました。座談会では「スポーツと学業の両立」などをテーマに、OBでアナウンサーの岩本計介さん、新実彰平さんの軽快なトークで盛り上がりました。

創立125周年記念 アカデミックマルシェ

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14の学部・研究科・サークルと、同窓生が活躍する10の企業ブースが出展し、研究成果や製品を発表しました。木材生まれの新素材でつくった自動車のVTRによる紹介のほか、「傾聴ロボット」との会話や、北山杉を使ったお箸づくりに挑戦するコーナーもあり、参加者は五感を使って最先端の研究を体感していました。企業ブースでは、125周年記念パッケージの「萩の月」や農学研究科附属農場とコラボした新柑橘の発泡酒などが販売されました。ものづくり×ビジネスサークル京大工房によりスタンプラリーも実施され、50個限定の景品は開始後およそ40分でなくなるほどの盛況ぶりでした。

京都大学アカデミックデイ2022 ~創立125周年記念~

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さまざまな領域の研究者と市民が直接対話する名物イベント。研究者が参加者に研究内容をわかりやすく説明する「研究者と立ち話」、異分野の研究者同士が意見を交わす「クロストーク」、約100冊の愛読書を紹介する「研究者の本棚」などが実施されました。「ちゃぶ台囲んで膝詰め対話」では、ナメクジ研究の宇高寛子助教のちゃぶ台に子どもたちが集まり、「ネバネバはどうやって出るの?」「塩をかけたらなぜ溶けるの?」などの質問が活発に飛び交っていました。

体育会学生主催イベント 「京大体育会、まるごと魅せます」

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京大体育会55の部活による個性豊かな動画を一挙に上映。オンラインによる投票も行われ、1位ラグビー部、2位グライダー部、3位サイクリング部の順位が決定しました。座談会ではアメフト部出身でスポーツコミュニケーションKYOTO株式会社代表取締役社長(当時)の森田鉄兵さんと硬式野球部出身の新実彰平さんが登壇。「学業をしっかりやっている自信があってこそ部活に打ち込める」など、文武両道を確立するアドバイスや体験談を話しました。また応援団によるパワフルな演舞演奏も会場を圧倒させました。

創立125周年 記念音楽会

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本学出身でソプラノ歌手の飯田みち代さん、チェリストの谷口賢記さんと京都市交響楽団が共演。指揮に広上淳一さん、ピアノにイリーナ・メジューエワさんを迎え、本学卒業生の酒井千佳さんの司会のもと、ヴェルディのオペラ「椿姫」やハイドンの「チェロ協奏曲第1 番」など全5曲を披露。卒業生3名のトークセッションでは飯田さんが「他者の感覚を理解し受け入れるという心理学の専修経験が、オペラで役を演じる際に生きている」、谷口さんは「学生時代にサイエンスを学んだ素養から、現在アートと科学をつなぐ活動に取り組んでいる」と話し、大学での学問の先に今の音楽活動があることを伝えました。

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