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DNA二重らせんおよびその微細構造の直接イメージングに成功 -液中原子間力顕微鏡による高分解能イメージング-

2013年2月19日


左から山田准教授、小林助教

 山田啓文 工学研究科准教授、小林圭 産官学連携本部助教らのグループは、溶液中で動作可能な高分解能原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、細菌由来のDNAを観察し、その二重らせんおよび微細構造を水溶液中で非破壊に観察することに、世界で初めて成功しました(図(a)( b) )。

 本成果の基本的内容は、アメリカ化学会(American Chemical Society)出版のACS Nano誌(2013年2月号) に掲載されました。さらにその重要性が認められ、同誌のジャーナルカバー(表紙)として本研究の観察像が採用されました。

概要

 当研究グループで新規に開発された、周波数変調(FM)原子間力顕微鏡(FM-AFM)は、液体中で探針と試料との間に働く微弱な力を検出することが可能で、DNAやタンパク質分子に代表される柔らかい生体分子試料に対して、それらの構造を破壊することなく、液中で"生きたまま"ナノスケール観察するために、極めて有効な手法となっています。従来のAFMは、探針が試料に接触した状態で測定を行うため、その有限な接触面積より微細な分子構造を観察することは一般に困難であるだけでなく、探針の試料への強い接触によって引き起こされる生体試料の構造変化やダメージがしばしば問題となりました。一方、本研究で用いられたFM-AFMは、探針と試料が非接触の状態で動作するため、DNA分子の水溶液中の自然な構造を破壊することなく、ナノスケールで観察することが可能となりました。

 DNA分子は水中で一般に右巻き二重らせん構造(図(c))をとることはワトソンとクリックが1953年に提案したモデルによって、広く知られています。DNA二重らせん構造は主にX線を用いた構造解析によって解明されてきましたが、本研究で得られたDNA分子の水中FM-AFM表面形状像は、これまでに解明されてきたDNAの構造とほぼ対応した二重らせん構造を明瞭に表しているだけでなく、従来の単結晶化した試料を用いた構造解析では明らかにすることが困難な、DNA分子の平均的な構造からの局所的な違いをも浮き彫りにすることに成功しています。さらに、従来のAFMでは観察不可能であった、DNA二重らせん構造の骨格を構成している個々の官能基 (リン酸基) を明瞭に分解して、高分解能水中FM-AFM観察することにも成功しています。

 本成果により、非破壊実空間計測技術であるFM-AFMの利点を活かしたナノバイオデバイスの「その場」動作特性計測や、生体機能に結合した生体分子の「生きたまま」ナノスケール構造計測などへの応用が強く期待されます。


図:周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)で捉えられた二重らせんDNA分子(pUC18 プラスミドDNA)の(a)水溶液中における分子像。(b)は(a)の部分拡大像を表している。また、(c)は、(b)で観察された構造に対応する二重らせんDNAの構造モデル。(b)、(c)中の赤い矢印と青い矢印は、DNAの二重らせん骨格の間隙に交互に現れる、幅の広い溝(主溝)と幅の狭い溝(副溝)をそれぞれ示している。

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1021/nn400071n

Ido Shinichiro, Kimura Kenjiro, Oyabu Noriaki, Kobayashi Kei, Tsukada Masaru, Matsushige Kazumi, Yamada Hirofumi.
Beyond the Helix Pitch: Direct Visualization of Native DNA in Aqueous Solution.
ACS Nano (2013)


  • 京都新聞(2月20日 3面)および日刊工業新聞(2月20日 25面)に掲載されました。