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輝け!京大スピリット

2022年春号

輝け! 京大スピリット

仲間とともに積み重ねた一矢で結果を射抜け

アーチェリー部
写真右から
主将 𠮷田遥紀さん(経済学部3回生)
女子主将 大西友子さん(医学部人間健康科学科3回生)
主務 渡辺理久さん(農学部食品生物科学科3回生)

弓を構え、的を見つめる。その間には誰もいない。打った矢がどこへ飛ぶか、的のどこを射止めるか、そして自分は何点を獲得したか。自らの責任が結果に直結するのがアーチェリーというスポーツだ。「まさにそこがアーチェリーのおもしろさ。自分ができるかできないかが一目瞭然なのです」。主将の吉田遥紀さんは、雄弁に語る。

自分の強みを聞かれ頭を悩ませる渡辺さんに吉田さんから「プレッシャーに強いところ!」との助け舟が。互いのことをよく見て、理解し合っていることが伝わってくる。いざ、弓を構えると、インタビュー時の雰囲気とは一転、ビリビリとした緊張感が流れる

自分好みにカスタマイズした弓。こだわりのポイントを聞くと3人揃って「色」との答えが返ってきた。そんなところまで息がぴったり。矢の1つとっても戦略があり、矢の太さで変わるわずかな重さや幅が勝負の行方を左右する

高い集中力と精神力を必要とするこのスポーツ。部の雰囲気もさぞ張り詰めたものなのだろうと、おずおずと練習場に足を踏み入れると、迎えてくれた3人の間に流れるのは意外にも和やかな空気。「的の真ん中に当たる瞬間が最高に気持ちいいです」と語る女子主将の大西友子さんの言葉に、傍らの2人も顔をほころばせうなずく。

取材した3人を含め、部員のほとんどは大学からアーチェリーを始めた初心者。中には文化部や帰宅部出身の部員もいる。しかし、コーチや監督などは置かず、部員のみで日々切磋琢磨する。練習方法を尋ねると、主務の渡辺理久さんが厚さ5㎝はあろうかという冊子を見せてくれた。「先輩たちが代々残してこられた練習の記録です。体の動かし方から道具のカスタマイズまで、受け継がれてきた知識と経験が詰まっています」。膨大な情報の中から、自らの課題に沿ったものを選び出すのだという。

部員たちの努力の集大成が5月の関西学生アーチェリー・リーグ戦。1試合72本の矢を打ち、8人のチームでの合計得点を競う。渡辺さんは「飛び抜けてうまい人が点数を稼ぐのではなく、みんなが同じくらい良い点を出せるのが京大アーチェリー部の強みです」とほほ笑む。仲間との研鑽で、実力は磨かれる。吉田さんが言葉を重ねる。「アーチェリーには的の中央を射抜ける〈正しいフォーム〉が一つあって、誰もがそれを追い求めています。だから、互いに指摘し合えるし、仲間を見ることが自分の力の向上にもつながるのです」。

練習方法などが記載された「技術誌」。後輩指導に長けた部員が中心となり、約10年前から制作している

とはいえ初心者が多いゆえに、経験者揃いの対戦相手に実力不足を思い知らされることも多い。10点×72本=720点のうち、600点を取ることが初心者の目標だが、到達はなかなか難しい。悔しい思いをしながらも続けられるのはなぜか。やはりそこには仲間の存在がある。素人同士が横一線のスタート。苦しい時には仲間の声を聞いたり、初心を思い出すために新歓時のイベントを再現したりと工夫を重ねる。「どんなに調子が悪くても、ほぼ毎日練習場に足を運びます。私の姿で部員の気持ちを引っ張れたら」と大西さんははにかむ。部員たちが趣向を凝らして制作した練習記録には、それぞれの練習時間と、獲得点数が載っている。コロナ禍で顔を合わせる機会が減っても、そこに仲間の努力を感じ、自分を奮い立たせ、高め合っている。

弓を構え、矢を放つ瞬間は自分1人だ。しかし、その1射には仲間たちと切磋琢磨した経験が乗っている。

1年の締めくくりとして、毎年12月に山の中で「納射会」を開催。アーチェリー競技の一種であるフィールド・アーチェリーのルールに則り、山の中に標的を設置し、得点を競う

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