ナノマシンにできないことを表現する不等式を発見 -応答の基本的限界をゆらぎであらわす-

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Andreas Dechant 理学研究科特定研究員と佐々真一 同教授は、ゆらぐ機械が本質的にできないことを表現する新しい不等式を見出しました。 機械が作動する条件を変えたときの応答の限界がゆらぎとエントロピーによってあらわされます。

空気や海にある膨大なエネルギーを熱として取り出して仕事をしつづける機械はつくれません。これは科学技術がどんなに進歩しても絶対にできない宇宙の規則です。熱力学により、この規則はエントロピー とよばれる物理量を使った不等式として表現されます。近年、生体内で働く大きさ10ナノメートル(ナノは10億分の1)くらいの小さな機械に関する物理法則が議論されてきました。特に、小さな機械では周りの分子の影響を受けて相対的に大きくゆらぎながら作動するので、ゆらぐ機械の本質的限界を明らかにすることが問題になっていました。

今後、新しい不等式を使って、個々のゆらぐ機械の性能を特徴づけることにより、生体内分子機械の設計原理が不等式によって解き明かされることが期待されます。

本研究成果は、2020年3月9日に、国際学術誌「PNAS (米国科学アカデミー紀要) 」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.1918386117

Andreas Dechant and Shin-ichi Sasa (2020). Fluctuation-response inequality out of equilibrium. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117(12), 6430-6436.