小木曽哲 人間・環境学研究科教授、丸岡照幸 筑波大学准教授、 西尾嘉朗 高知大学准教授、鈴木勝彦 海洋研究開発機構海底資源センター長、大澤崇人 日本原子力研究開発機構研究主幹、初川雄一 量子科学技術研究開発機構専門業務員、寺田靖子 高輝度光科学研究センター主幹研究員は、白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界層試料について、放射光を利用した蛍光X線微量元素マッピング分析、中性子放射化分析、質量分析計全岩元素分析を行い、隕石衝突直後の地球環境変動のうち、大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を発見しました。
白亜紀最末期(約6600万年前)に直径10km程度の巨大隕石が衝突し、生物大量絶滅につながったことは、これまでの様々な研究により、広く受け入れられています。しかし、生物大量絶滅を引き起こした、隕石衝突直後の環境激変がどのようなものであったかに関しては、未だに不明な点が多く残されています。
本研究では、K-Pg境界層試料に対して、大型放射光施設SPring-8の放射光(BL37XU)を用いたマイクロメートルレベルでの微量元素マッピングを適用し、酸性雨によって形成されたと考えられる銀・銅に富む微粒子を発見しました。これまでも、K-Pg境界の隕石衝突直後に大規模な酸性雨が発生したことは示唆されてきましたが、その決定的な証拠は得られていませんでした。このような大規模な酸性雨は、K-Pg境界における生物大量絶滅を引き起こした原因となった可能性があります。
本研究成果は、2020年2月5日に、国際学術誌「Geological Society of America Bulletin」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1130/B35403.1
Teruyuki Maruoka, Yoshiro Nishio, Tetsu Kogiso, Katsuhiko Suzuki, Takahito Osawa, Yuichi Hatsukawa, Yasuko Terada (2020). Enrichment of chalcophile elements in seawater accompanying the end-Cretaceous impact event. GSA Bulletin, 132(9-10), 2055-2066.
- 京都新聞(5月13日夕刊 2面)に掲載されました。