ゲノム編集技術を用いてカニクイザルモデルにおいて常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の病態再現に成功 -小動物では病態再現できない難病の研究に新たな道-

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築山智之 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 (ASHBi) 研究者(兼・滋賀医科大学特任准教授)、依馬正次 同主任研究者(兼・同教授)らの研究グループは、実験的操作が可能な霊長類の一種カニクイザルで、CRISPR/Cas9法を用いたゲノム編集により、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の病態再現に成功しました。

PKD1遺伝子の変異によって引き起こされるADPKDは、世界中に約600万人の患者がいると言われている最も頻度の高い遺伝的腎疾患ですが、げっ歯類などの小動物モデルでは、ヒトの病態を正確に再現できないことが知られており、治療法の開発は限られていました。

本研究では、カニクイザルにおいて、CRISPR/Cas9法を用いたゲノム編集によりPKD1遺伝子の変異誘導を行い、ADPKDモデルを作製しました。これにより、従来のマウスにおける研究では成し得なかった、ヒトにおける最初期の病態を再現することに成功しました。また、様々な深刻度の嚢胞形成を示すADPKDモデルサルの作製にも成功し、経過観察の結果、ヒトと同様に加齢とともに嚢胞が拡大することを確認しました。

本研究で得られた知見により、ADPKDに対する新規薬剤の開発へ道が拓かれるのみならず、作製されたサルモデルは、新しい治療戦略を確立するための技術基盤となることが期待されます。

本研究成果は、2019年12月11日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

図: 本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-019-13398-6

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245133

Tomoyuki Tsukiyama, Kenichi Kobayashi, Masataka Nakaya, Chizuru Iwatani, Yasunari Seita, Hideaki Tsuchiya, Jun Matsushita, Kahoru Kitajima, Ikuo Kawamoto, Takahiro Nakagawa, Koji Fukuda, Teppei Iwakiri, Hiroyuki Izumi, Iori Itagaki, Shinji Kume, Hiroshi Maegawa, Ryuichi Nishinakamura, Saori Nishio, Shinichiro Nakamura, Akihiro Kawauchi & Masatsugu Ema (2019). Monkeys mutant for PKD1 recapitulate human autosomal dominant polycystic kidney disease. Nature Communications, 10:5517.

  • 読売新聞(1月24日 17面)に掲載されました。