研究成果

単色X線とナノ粒子により、がん患部でX線エネルギー効果を増幅する方法の開発に成功 -オージェ電子発見から100年、放射線がん治療の新境地を開く-


2019年10月02日


     玉野井冬彦 高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)特定教授、松本光太郎 同特定助教、齋藤寛之 量子科学技術研究開発機構上席研究員らの研究グループは、単一エネルギーをもつX線(単色X線)を、ガドリニウムを多孔性シリカナノ粒子により取り込ませたがんの塊に照射することで、その塊がばらばらになり消滅することを明らかにしました。

     現在、放射線治療はがん治療の主要な方法として広く使われていますが、既存のX線は、幅広い波長が含まれているため、皮膚表面でX線が吸収されてしまい、がん組織に届きにくいという課題がありました。本研究グループは、1925年にピエール・オージェらが報告した原理を利用し、単色X線を、がん細胞に取り込ませたガドリニウムに照射することでオージェ電子が放出される原理を使い、がん細胞を死滅させることを目指しました。

     ガドリニウムは、本研究グループが独自に開発した多孔性シリカナノ粒子を用いてがん細胞の中に送り込み、単色X線は、大型放射光施設(SPring-8)の量研専用ビームラインBL14B1において照射しました。その結果、卵巣がんの塊に対して、ガドリニウムからオージェ電子を放出させるのに最も適した50.25 keVのX線を照射した場合に、効果的にがん細胞を攻撃できることが明らかになりました。本研究成果は、皮膚表面への影響を最小限にして効果的にがん細胞を狙って破壊する単色X 線治療法の開発に繋がることが期待されます。

     本研究成果は、2019年9月30日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

    図:ナノ粒子を用いてガドリニウムをがん細胞に取り込ませ、50.25 keVの単色X線を照射すると、他の部分に影響を与えずがん細胞だけを死滅させることができた(イラスト:高宮泉水 iCeMS特定助教)

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1038/s41598-019-49978-1

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/244189

    Kotaro Matsumoto, Hiroyuki Saitoh, Tan Le Hoang Doan, Ayumi Shiro, Keigo Nakai, Aoi Komatsu, Masahiko Tsujimoto, Ryo Yasuda, Tetsuya Kawachi, Toshiki Tajima & Fuyuhiko Tamanoi (2019). Destruction of tumor mass by gadolinium-loaded nanoparticles irradiated with monochromatic X-rays: Implications for the Auger therapy. Scientific Reports, 9:13275.

    • 京都新聞(10月1日 27面)および日刊工業新聞(10月1日 28面)に掲載されました。

    単色X線とナノ粒子により、がん患部でX線エネルギー効果を増幅する方法の開発に成功 -オージェ電子発見から100年、放射線がん治療の新境地を開く-
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