ヒト細胞のコドン(遺伝暗号)に隠された暗号を解明 -ヒトコドン最適化制御による治療戦略の開発へ-

ターゲット
公開日

竹内理 医学研究科 教授らの研究グループは、ヒト細胞において、遺伝暗号であるコドンの偏りが、メッセンジャーRNA(mRNA)の安定性を制御し、タンパク質発現に影響していることを見出しました。

DNAから転写され作られるmRNAは、タンパク質を構成するアミノ酸配列へと変換される3つの塩基配列であるコドン(遺伝暗号)を持っています。mRNAの分解は、さまざまな機構で調節されていますが、ヒト細胞で、mRNAのタンパク質コード領域がmRNAの安定性にどのように影響するかは不明でした。

本研究では、ヒトのコドンが、3番目の塩基位置にGまたはCを持つコドン(GC3)と3番目の塩基位置にAまたはTを持つコドン(AT3)に大きく分類できることを見出しました。GC3コドンは、mRNAの安定化に、AT3コドンはmRNAの不安定化に関与することを見つけ、核酸配列内のコドンを変更することにより、選択した遺伝子のタンパク質発現を増加または減少させることが可能となることを見出しました。この機構を利用することにより、将来的に、細胞でのタンパク質発現の調節を介して、医療や工業的に利用されることが期待されます。

本研究成果は、2019年9月4日に、国際学術誌「EMBO Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:コドンの偏りによるmRNA分解とタンパク質翻訳制御

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.15252/embr.201948220

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244816

Fabian Hia, Sheng Fan Yang, Yuichi Shichino, Masanori Yoshinaga, Yasuhiro Murakawa, Alexis Vandenbon, Akira Fukao, Toshinobu Fujiwara, Markus Landthaler, Tohru Natsume, Shungo Adachi, Shintaro Iwasaki, Osamu Takeuchi (2019). Codon bias confers stability to human mRNAs. EMBO reports, 20(11), e48220.