極限環境でDNA複製の安全管理を行うCdc45/RecJファミリーの機能解明 -遺伝子複製装置の原理解明に期待-

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跡見晴幸 工学研究科教授、石野良純 九州大学教授らの研究グループは、極限環境でDNA複製の安全管理を行うCdc45/RecJファミリータンパク質の機能を解明しました。

本研究成果は、2017年12月5日に英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

超好熱性アーキアを用いて、生化学的手法と遺伝学的手法を用いて、DNA複製フォークが正しく進行する仕組みの一端を解明できたと思います。生命の起源にもっとも近いと言われる超好熱菌の研究からは、生命現象の原理が見えてくると期待しています。

概要

本研究グループは、アーキアのDNA複製・修復・組換えからなる、遺伝情報維持機構の解明に挑んでいます。アーキアはバクテリアと同様に原核生物でありながら、その遺伝情報システムはヒトなどの真核生物と共通の祖先から進化したと考えられます。したがって、アーキア研究は、生物の複製機構の起原を理解することに繫がると共に、特に超好熱アーキアの研究から100℃という極限環境での独自の生命現象の理解が期待されます。

Cdc45/RecJファミリーに属するタンパク質のうち、真核生物のCdc45はDNA複製反応の進行を担い、真正細菌のRecJはDNA分解酵素としてDNA修復・組換えに働くことがわかっていました。第3の生物ドメインであるアーキアに属する T. kodakarensis という超好熱細菌には、2種類のCdc45/RecJタンパク質が存在しており、一方のGANと名付けたタンパク質はDNA複製進行装置構成因子であると今年8月に本研究グループが報告しました。今回はもう一方のHANと名付けたタンパク質の役割を提唱したものです。HANは、複製反応を進行させるCdc45やGANとは異なり、何かの原因により複製反応が停止した際に、素早く修復して複製反応を再開するために働いていることを実験的に示しました。

本研究成果は、地球上の生物が有するCdc45/RecJファミリータンパク質の機能の多様性を示すと共に、複製反応時のトラブル解消の方法に新たな知見を提供したものです。

図:DNA複製フォークの進行・再開を2つのCdc45/RecJが制御している

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-017-17306-0

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/228172

Mariko Nagata, Sonoko Ishino, Takeshi Yamagami, Jan-Robert Simons, Tamotsu Kanai, Haruyuki Atomi & Yoshizumi Ishino (2017).
Possible function of the second RecJ-like protein in stalled replication fork repair by interacting with Hef.
Scientific Reports, 7, 16949.