2種類の評判への関心と日常の利他行動の関連 -周りから好かれたい人、嫌われたくない人ほど人助けをよくするか-

ターゲット
公開日

河村悠太 教育学研究科博士課程学生、楠見孝 同教授の研究グループは、周りからの評判への関心と利他行動を取る頻度に関する調査を行いました。その結果、良い評価・評判を獲得したいという「賞賛獲得欲求」の高い人ほど友人/知人および他人への利他行動をより多く取っていることが分かりました。一方、悪い評価・評判を避けたいという「拒否回避欲求」の高い人ほど他人への利他行動を取らない傾向が明らかとなりました。

本研究成果は、International Society for the Study of Individual Differencesの学術誌「Personality and Individual Differences」に掲載されました。

研究者からのコメント

評判と利他行動の関係については多くの研究がなされてきていますが、個人差についてはあまり研究されてきませんでした。本研究では、一般市民を対象として、評判への関心と利他行動を取る頻度の関連について検討しています。今回は回答者の自己報告で利他行動の頻度を測定しましたが、今後は実際の行動を調べる必要があると考えています。

概要

評判と利他行動は密接に関連しています。これまでの研究では、他の人に見られているような自分の評判が気になる状況で、人はより利他的に振る舞うことが示されていました。ただし、評判への関心の個人差と、利他行動を取る頻度の間に関連があるかについての検討は行われていませんでした。

本研究グループは、2種類の評判への関心、すなわち良い評価・評判を獲得したいという「賞賛獲得欲求」および悪い評価・評判を回避したいという「拒否回避欲求」の個人差と、利他行動を取る頻度の関連について、20歳から59歳の416人(男性208人、女性208人)の一般市民を対象としオンラインで調査しました。

その結果、賞賛獲得欲求の高い人ほど、友人/知人および他人への利他行動をより多く取っていること、賞賛獲得欲求・拒否回避欲求とも、家族への利他行動とは関連していないことが明らかとなりました。これらの結果は仮説を支持しており、評判と利他行動の関連を示した従来の知見とも整合しています。

一方、拒否回避欲求の高い人ほど他人への利他行動をあまり取っていないことも明らかとなりました。先行研究では、規範から逸脱した利他行動に対しては否定的な評判が与えられうることが示されています。他人への利他行動は家族や友人/知人への利他行動に比べて規範的でないと考えると、拒否回避欲求の高い人は、否定的に評価される可能性があるために、他人への利他行動をあまり取らない可能性があります。しかし、本研究はこの可能性を直接調べたものではないため、今後の検討が必要といえます。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.paid.2017.09.003

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/228310

Yuta Kawamura and Takashi Kusumi(2017). Relationships between two types of reputational concern and altruistic behavior in daily life. Personality and Individual Differences, 121, 19-24.