最速で瞬くオーロラの撮影に成功

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海老原祐輔 生存圏研究所准教授、福田陽子 東京大学博士課程学生、片岡龍峰 国立極地研究所准教授らの研究グループは、名古屋大学などと共同で、3年間にわたるオーロラの連続高速撮像により、これまで観測された中で最速のオーロラの明滅現象を発見し、その発生メカニズムを明らかにしました。

本研究成果は、2017年5月13日に米国の科学雑誌「Geophysical Research Letters」で公開されました。

研究者からのコメント

極限的なオーロラを求め、粘り強く観測を続けました。

概要

オーロラと聞くと、ゆっくりとゆらめく光のカーテンを思い浮かべるかもしれません。ところが、ブレイクアップと呼ばれるオーロラの爆発現象が起こると、カーテンの一部で明るさや動きが非常に激しく変化する「フリッカリング」という現象が見られることがあります。このフリッカリングオーロラは、オーロラ現象の中でも明るさが最も速く変化するもので、酸素イオンのサイクロトロン振動数(電子やイオンが磁力線の周りを円運動する際の角振動数)に相当する10分の1秒前後の周期で明滅していることが報告されています。

本研究グループは、さらに高速の明滅を検出するため、毎秒160フレームの撮影が可能な高速撮像カメラを使用して連続観測を実施しました。その結果、酸素イオンによる10分の1秒周期の明滅と同時に、50分の1秒周期の明滅や、80分の1秒周期という高速の明滅を発見しました。これは、フリッカリングオーロラが酸素イオンだけではなく、水素イオンの影響を受けた電磁イオンサイクロトロン波(宇宙空間に存在するプラズマ波動の一種)によっても引き起こされている証拠と言えます。この結果は、オーロラの発生要因である電子とプラズマ波動の相互作用についての理解に貢献することが期待されます。

図:フリッカリングオーロラ。真ん中の淡いピンク色の部分が明滅する。
(撮影:Ayumi Y. Bakken、撮影地:米国・アラスカ州フェアバンクス、撮影日時:2015年3月18日)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/2017GL072956

Yoko Fukuda, Ryuho Kataoka, Herbert Akihito Uchida, Yoshizumi Miyoshi, Donald Hampton, Kazuo Shiokawa, Yusuke Ebihara, Daniel Whiter, Naomoto Iwagami and Kanako Seki (2017). First evidence of patchy flickering aurora modulated by multi-ion electromagnetic ion cyclotron waves. Geophysical Research Letters, 44(9), 3963–3970.