植物の姿勢を決めるしくみの解明 -まっすぐになろうとする力-

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西村いくこ 理学研究科教授と上田晴子 同特定准教授と岡本圭史 同大学院生らの研究グループは、植物の姿勢を決定するブレーキシステムの仕組みを明らかにしました。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Plants」のオンライン速報版で公開されました。

研究者からのコメント

左から、西村教授、上田特定任准教授、岡本大学院生

植物はさまざまな環境刺激を受けながら成長します。大きな環境変化に対しては植物を曲げることによって対応する必要がありますが、微弱な環境変化にまで振り回されるのは、植物にとって無駄なコストがかかります。そのような状況を避けるために、植物はこのようなブレーキシステムを獲得したと考えられます。

今後、ブレーキシステムの実体をより詳細に解析することによって、環境の変化に迅速に対応する植物の巧みな技の理解を目指します。

概要

植物は自ら移動することはできませんが、光や重力などの環境が変化すると、生育に有利な条件を求めて植物体を屈曲させることが知られています。この屈曲反応については多くの研究がなされてきました。しかし、その一方で、植物がまっすぐに伸びる性質については、1880年のダーウィンの著書の中にも登場するものの、まっすぐに伸びる仕組みやその意義は135年間謎のままでした。

今回、本研究チームは、ミオシンモータータンパク質(ミオシンXI-fとXI-k)やアクチンタンパク質が壊れたシロイヌナズナ変異体では、茎やサヤがグニャグニャに曲がってしまうことを見い出しました(図)。これらの変異体は、光や重力の刺激に対して過剰に応答します。また、光と重力の刺激をなくした状態(暗所かつ疑似微重力状態)では、野生型植物の茎はまっすぐに伸びますが、ミオシン変異体の茎は曲がり続けてループ状に変形します。これらの発見から、植物は、器官をまっすぐに伸ばすためのアクチンーミオシン主導のブレーキを働かせていることが分かりました。

さらに、ミオシンXI-fが茎の繊維細胞のみに存在していたことから、このブレーキの鍵は繊維細胞が握っていることが判明しました。周囲の細胞に比べてとりわけ長いという特徴をもつ繊維細胞は、長く発達したアクチンレールの束をもっていました。この長いアクチン束が屈曲センサーとして植物の姿勢を監視し、環境変化による曲がりとブレーキのバランスをとることによって、植物は体の姿勢を最適に保っていると考えています。このブレーキは、植物が環境変化に振り回されずに常に凛とした姿勢を保つために獲得してきたしくみといえるかもしれません。

図:環境刺激(重力)に過剰に応答するミオシンXI破壊株

詳しい研究内容について

植物の姿勢を決めるしくみの解明 -まっすぐになろうとする力-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/nplants.2015.31

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/197219

Keishi Okamoto, Haruko Ueda, Tomoo Shimada, Kentaro Tamura, Takehide Kato, Masao Tasaka, Miyo Terao Morita & Ikuko Hara-Nishimura
"Regulation of organ straightening and plant posture by an actin–myosin XI cytoskeleton"
Nature Plants Article number: 15031 Published online 23 March 2015

掲載情報

  • 京都新聞(3月24日 30面)および産経新聞(3月24日 30面)に掲載されました。