丸い円盤銀河の出現時期は70億年前?

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太田耕司 理学研究科教授は、東京大学、国立天文台の研究者からなるチームと共同研究を行い、ハッブル宇宙望遠鏡の撮像データを解析することによって、丸い円盤銀河が出現した時期が赤方偏移0.9付近(宇宙年齢約60億年、現在から約70億年前)の時代であることを明らかにしました。

本研究成果は、2015年3月1日発行のアメリカ天文学会の「アストロフィジカルジャーナル」誌に掲載されました。

研究者からのコメント

太田教授

今回の研究で、円盤銀河が「丸い」円盤になったのは70億年ほど前であることがわかりましたが、どうやってだんだん丸くなったきたのかはまだよくわかりません。銀河の中心にある「バルジ」と呼ばれる構造が急激に成長し、その影響で丸くなったという可能性も考えられますが、そもそもどうやってバルジができて、現在の宇宙に見られるような円盤銀河の構造に進化したのかという問題も大きな研究課題です。このような銀河構造の進化については、建設の始まった30m望遠鏡によって大きく研究が進展するものと期待されます。

概要

銀河とは、約1000億の星とガスの大集団で、その大きさは10万光年くらいです。現在の宇宙では、銀河はその構造と性質によって大きく二つのタイプに分類されています。渦巻き模様の見られる渦巻銀河と、模様の見えない楕円銀河です。渦巻き銀河では、星やガスが円盤状に分布しており、円盤銀河とも呼ばれます。また、星やガスはこの円盤の中心のまわりを回転運動しています。一方、楕円銀河は、みかんやレモンのような楕円体をしており、その中で星はランダムな方向に運動しています。また、円盤銀河にはガスが多く含まれ、現在でも星が誕生しているのに対して、楕円銀河では星を生み出すガスが欠乏していて星形成が見られません。

宇宙の歴史の中で、いつどのようにして銀河が誕生し、成長してきたのかという問題は、現代天文学の重要な研究課題の一つです。銀河は宇宙の初期にはガスだけで、その中で星がだんだん誕生して成長していくと考えられています。このようなガスから星への転換史という観点からの銀河進化の研究は以前から盛んに行なわれています。一方、銀河の形態進化も重要な問題ですが、近赤外線域での角分解能の高い観測が困難であったため、これまでよくわかっていませんでした。

そこで本研究では、赤方偏移2付近(約100億光年、あるいは宇宙年齢30億年頃)の星形成銀河を多数選んで、その見かけの軸比を測定し、軸比分布を調べるだけというシンプルで直接的な手法によって、丸い円盤銀河が現れてきた時代が、約70億年前であることを明らかにしました。


丸くなる円盤銀河の進化のイメージ図

詳しい研究内容について

丸い円盤銀河の出現時期は70億年前?

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1088/0004-637X/801/1/2

T. M. Takeuchi, K. Ohta, S. Yuma, and K. Yabe
"WHEN DID ROUND DISK GALAXIES FORM?"
The Astrophysical Journal, 801:2, 2015 March 1