SiCパワーデバイスを適用した三相電力ルータ装置の実証試験 -鉄軌道(ニュートラム )上の電力線を用いた分散電源系統運用実証実験-

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引原隆士 工学研究科教授らの研究グループは、平成25年度より、文部科学省・科学技術振興機構(JST)による支援プログラム「研究成果展開事業(スーパークラスタープログラム)」の委託事業において開発してきたSiCパワーデバイスを適用した「三相電力ルータ」の実証試験を、平成27年9月に環境省地球温暖化対策技術開発・実証研究事業(既設熱源・電源を自立分散型エネルギー化し鉄道網を利用した地域融通エネルギーシステムの開発)の一環として大阪市咲洲地区において実施しました。既存の鉄軌道部の配線スペースを活用し、安価に自営電力線を敷設することが可能であるか、また、電力ルーティングにおける切替え時等のノイズが鉄軌道の信号、通信設備に対し、影響を与えないかの検証のため確認を行いました。

分散電源の電力をニュートラム(コスモスクエア駅-トレードセンター前駅間)に沿って敷設した自営電力線を介して送電し、負荷側配電系に設置した電力ルータを用い、供給する負荷の切り替えを伴う運用試験を営業終了後の深夜に行いました。電力ルータ動作時に電力系統から試験車両を使用し、設備および軌道上を走行する車両の信号、通信に与える影響を測定しました。この結果、開発した電力ルータの負荷切替え機能が実証され、SiCパワーデバイスの開発によって、新しい電力制御機器の開発につなげることができました。

開発した電力ルータは、電源と負荷の接続を物理的にかつ時間的に動的に切替えるばかりではなく、これまでの研究から変圧器としても機能することが確認されており、将来分散電源を地域に敷設する際に適用できるオンデマンドの電力制御装置として期待されます。この機能の実現には、ワイドバンドギャップ半導体であるSiCパワーデバイスおよびその適用技術の研究開発が重要となっています。

電力ルーティングの概念図

詳しい研究内容について