京都大学ICT基本戦略

平成25年7月10日役員会決定

はじめに

ICT基本戦略策定の目的

  • 大学の諸活動(研究、教育、社会貢献、運営等)に対するICTの支援範囲と方向性ならびに教育・研究を加速させる情報環境を定義する
  • 大学におけるICT環境整備のロードマップを示し、ICT投資の最適化を図る
  • 大学の構成員へICT基本戦略実施の参加・協力を仰ぐ

 情報がデジタル化されインターネットを利用した共有が進むとともに、情報サービスへもインターネットを介して共用するクラウドサービスが台頭してきている。この流れの中で全てのアプリケーションソフトウェアがWebベースで提供されようとしており、それにアクセスする端末も机上に置かれた、いわゆるPCから、どこにでも持ち運べる携帯電話やタブレット端末に急速に変わりつつある。大学もこのような社会の流れに対応していかなければならない。

 情報技術(ICT: Information and Communication Technology)の発展は、ドッグイヤーと称されるように、これまで我々の経験した各種技術の発展速度と比較にならないほどの速さであり、その技術の恩恵を享受するには、技術動向の深い洞察とそれを導入する現場の意識、ワークフローとの整合性が必要である。日々生み出されるバズワードに惑わされることなく、必要なICTを必要な時機に、必要な場所に導入することが、投資効果を高める道であると言えよう。

 ICT基本戦略の策定の目的は、今後約10年間に京都大学に導入すべきICTを時間軸上にマッピングし、各構成員の意見の収集、反映を繰り返すことで、情報化の道すじを全学で共有し、ICTの利活用を通じた大学の機能強化を実現することにある。

 対象期間は、2013年度から2021年度末までの9年を対象とし、一期をおおよそ3年とする。一期ごとに見直しをはかる。

 京都大学の各構成員はそれぞれの立場で、世界トップレベルの総合大学として求められる教育・研究に従事している。大学に導入するICTは、この教育・研究活動をより一層の高度化、先鋭化するものでなくてはならない。

1.情報資源の有効活用、ディペンダビリティ(安全性・信頼性)の確保

情報セキュリティが確保されている

 ICTはあらゆるものが情報を発信し、共有できる環境を提供している。一方でその情報共有の拡散速度・拡散範囲が著しく高速かつ広大なために、情報漏洩は非常に大きな問題を引き起こす。大学の情報環境はファイアーウォールなどにより外部の攻撃から守るだけでなく、情報へのアクセスを適正に管理し、情報セキュリティを確保することが重要である。過度に脅威を怖れずに、適切な配慮により情報資源とICTのメリットを最大限に活かして、安心して利用できる情報環境を提供する。

2.世界的な標準技術の採用

分かりやすく使いやすい

 教育・研究活動で世界の主要大学との協調・競争に対応するためには、他大学との情報交換や比較を行いやすい情報環境が必要になる。そのためには、世界標準のシステム・技術・データ形式を用いる必要がある。どの大学でも利用される基本的なシステムは、すでに広くオープンソースシステムとして提供されている。システムの設計・開発にかかる時間や費用を抑えつつ、わかりやすく使いやすいシステムやサービスを提供するために、オープンソースシステムを活用して、本学や部局の特色に合わせたカスタマイズを行い、各構成員が各自にあった情報環境を享受できる事を目指す。

3.高度な双方向コミュニケーションの実現

より円滑なコラボレーションを創発

 大学の構成員同士および社会と大学の間のコミュニケーションを活性化させ、教育・研究環境を充実させていくための情報環境を整える。学内の情報の共有・連携を進めることで、大学構成員が新たな課題に遭遇したときに、その解決策につながるリソース(事例やノウハウなど)に容易にアクセスでき、また自身の成果を教育・研究活動の中で記録しておくことで、受け手の望む適切な表現で提供できる環境を整備する。大学構成員それぞれの教育・研究活動成果を社会に還元するために、大学内および社会との間の円滑なコラボレーションを可能とする。

4.教育や研究のための多元的表現の支援

多様な表現媒体での情報発信が容易

 教育・研究の成果やその意義を的確に伝達するための多様なツール・コンテンツを提供することで、研究者の研究成果の発信と伝達を支援する。汎用性の高い表現と多様な表現媒体を、より容易に使用できる環境を提供することによって、発信者の表現能力とその機会を向上させ、教育・研究成果の発信の促進と表現の伝達精度の向上を図る。さらには、異分野の研究者間の交流による研究の創造・発展と、学生への教育効果の向上、ならびに社会への説明責任を果たすための情報発信を支援する。

5.本務の最先鋭化・強化

管理運営業務を効率よくする

 重複した情報入力を避け、入力された情報は統一データベースに格納し、関連業務での共有、活用を図る。ただし、国のシステムや部局特有のシステムに関しては連携することを目指す。また、情報間の関連を分析あるいは整理し、ある情報から自動的に導出できる情報に関しては、システムが提供できるようにする。例えば、シラバス情報や学生の受講状況からは大学の教育活動報告が、外部資金受け入れ状況からは研究活動報告が得られる。このように、多くの大学活動の実態報告を、統一データベースからのデータの抽出・選別・集約で得られるよう情報環境整備を進め、各種義務的報告書の作成業務の大幅な自動化を実現する。

目的が容易に達成できる

 学内に散在しているデータや構成員らの情報環境の利用統計から得られる集合知に基づき、学内業務や活動の進め方、手続き等に関するノウハウやスキルを「見える化」して共有化できるようにする。それを利活用することにより、構成員が日々の活動の中で、本来業務を高度化・先進化・先鋭化し、新たな創発につながることを目指す。