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  京都大学メールマガジン Vol.47
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   目次:
   ◆総長室長 小寺秀俊
   ◆総長メッセージ「学問とは真実を巡る人間関係」 松本紘
      ◆総長賞受賞者 岸本展
   ◆大学の動き
   ◆研究成果
   ◆イベントのお知らせ
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◆総長室長 小寺秀俊
 
  総長室と言うと総長の秘書業務を行っている秘書室と勘違いする方が多いと思います。本学には、総長室とは別に秘書室がありますので、秘書室ではありません。さて、それでは総長室は何をする部門でしょうか。総長室は総長の行う業務を支援するため(1)京都大学の総合的な戦略に関し、必要事項を調査研究(2)総長が行う対外的な活動に関し、必要な企画立案、連絡調整その他の支援をすることが主な役割であり、企業でいう経営戦略を行う組織と認識いただければよいかと思います。総長室は、平成20年10月に設けられました。
 
  日本の成長戦略の中で、高等教育が担う役割は大変重要です。知識や技術が高度化している今日、私たちが学生だった頃よりもはるかに多くのことを広範囲にかつ深く学ぶことが必要になっています。このような中で教育・研究を行うにはどうしたらよいか、また教育・研究環境を整備するためにはどうしたらよいかという大きな課題があります。これらの課題を検討するために、昨年12月に未来戦略WGという組織を総長室に作りました。そこでは、総勢40名の若い教職員の方々に集まっていただき、6つのWGに分かれて、10年後・20年後の京都大学の姿を考え、そのためには今後何をすべきかを検討してもらっています。
 
  また、法人化以降、最先端の研究とそれに基づいた先端的な教育を行うためには、多くの競争的資金を獲得することが必要です。そのためには、様々な情報収集と情報発信が必要であり、これらも総長室の重要な仕事です。ただし、大学における研究は、競争的資金が対象としている分野・領域のみではありませんので、競争的資金になじまないような、基礎的な研究を行うことも必要なのです。これらの研究を進めるためには大学として何をすべきかについても、総長室で様々な資料を集め検討しています。

 さて、私は総長室長を平成20年10月に拝命しましたが、現在も工学研究科マイクロエンジニアリング専攻(機械系専攻の一つで小さな構造や機械の研究をしている専攻)の教授ですので、学部は物理工学科、大学院は機械系専攻で講義を行うと共に研究も行っています。私の専門は、マイクロ・ナノメートル領域の物作りやその領域での現象を研究することですので、小さな世界の研究に興味のある方はhttp://www.ksys.me.kyoto-u.ac.jp/をお読みください。

 

◆総長メッセージ「学問とは真実を巡る人間関係」 松本紘

 今回は、4月のメールマガジンの最後に紹介しました「学問とは真実を巡る人間関係」という言葉について書いてみたいと思います。

 私たち人間は、ひとりでは生きていけない弱い生物です。人間が生まれて最初に築くのは、母親との関係、そして家族です。家庭の次は幼稚園、学校、そして地域社会。社会に出て働き始めると、ネットワークは大きく広がります。私の場合は4世代家族の中で育ち、兄弟げんかはもちろん、夫婦げんかに嫁姑問題と、社会の縮図のようなものを家族の中で勉強しました。子供なりにいろいろな関係を見聞きするうちに、人はどう行動するかということが自然と身につきました。

 大学教授になった私には学問が職業となりました。

 学問という知的な営みであっても、これは「真実を巡る人間関係である」と、私は強く信じています。それは、長年学問を究めようとする中で人間関係を勉強したのではなく、人間関係をもとにして学問を学ばせてもらったと私は感じているからです。非常に頭のよい優秀な人が、なぜか学問がうまくいかないことがあります。私は一つの原因として、人間関係がどこかうまくいかなかったのではないかと推測します。例えば、私たちは資料を調べるにもデータをとるにも、人を頼らないとやっていけません。論文を書く場合でも、人の論文を読んだり議論をしたりしながら、自分を高め、人とは違うオリジナリティを出していきます。鋭い議論や対話の中から良いアイデアが生まれる事もあり、自分と関わりのある人とどのような人間関係を築くかによって、研究の成果が大きく変わる時もあります。社会活動がうまくいかないと何もできないというのは、人間の本質です。

 もちろん、学問はそのような側面だけではなく、非常に客観的で、特に自然科学の場合はだれが行っても同じ事実を導き出せるということが重要です。だから、人間関係なんか関係ない、数式を出し、自然観察をして客観的な事実を積み上げていけばいいのだという考えもあると思います。しかしながら、私は客観性はあくまでベースであって、その上に積み上がるものの大きさには、人間関係が非常に重要な要素になってくると思っています。

 学問はあらゆる分野で細分化、深化、専門化が進んでいます。細分化が進むと付き合う人の範囲が狭くなるおそれがあります。人間関係を築く際に重要なコミュニケーション力や深い教養、高い見識は、若い時に育てなければなりません。時間・空間を超えて、見聞きしたこと、読み書きしたこと、興味を持ったことというのは、自分のその後の人生に、大きく影響するだろうと思っています。この意味でも、「学問とは真実を巡る人間関係」であると思います。

 

◆総長賞受賞者 岸本 展

 この度は京都大学総長賞受賞者の一人としてお選びいただき、誠に有難うございました。学生生活8年間の集大成として、このような形で京都大学の歴史に名を遺すことができ、大変光栄に存じます。指導教員の堤教授をはじめ日頃支えてくださっている皆様に心よりお礼申し上げますとともに、今後もより一層の努力を続けてまいる所存です。
 
  博士課程在学中の昨年秋、私の研究成果に対して日本数学会より「建部賢弘奨励賞」をいただき、その功績により今回総長賞に選ばれたと伺っております。ですので、残りの紙面で私の日頃の研究の対象である微分方程式について簡単な解説を試みたいと存じます。
 
  中学や高校で習う方程式は未知の数xを含む等式で、方程式を「解く」とは等式をみたすxの値を求めることです。これに対し微分方程式とは、未知の「数」でなく「関数」を含む等式で、さらに関数そのものだけでなくその微分(導関数)が含まれるものを指し、等式をみたす関数が方程式の「解」です。微分方程式は様々な自然現象を司る法則としてしばしば現れます。馴染み深い例として高校物理で習うニュートンの運動方程式があり、その解は外部からの様々な力を受けながら運動する物体の様子をシミュレートします。
 
  私が研究している非線形偏微分方程式にはいわゆる「解の公式」がなく、解の様子を調べて実際の自然現象にあてはめる以前に、適切な解がきちんと存在することを保証するのが研究の第一歩となります。これに対して私が用いている手法は、過度に単純化すると次のようなものと言えます:(1)方程式をだいたいみたす関数をまず見つけ、それを基に方程式をより際どくみたす関数を次々に見つけていく、(2)得られた関数の列が一つの関数に限りなく近づいていくことを証明すれば、その関数が解。このうち(1)についてはある程度統一的な方法が知られており、(2)が最も難しい部分です。特に、関数の「近さ」の尺度を適切に決めることが重要で、近いことの基準が厳しいほど(2)の証明は困難になり、逆に緩くしすぎると、実際の自然現象とはかけ離れたおかしな解がつかまってしまって良くありません。近さの基準をうまく選べた時点で証明の大半は終わりと言っても過言ではないでしょう。これを見つけるため、計算用紙の上で日々試行錯誤を繰り返しています。

 

◆大学の動き◆

○工学研究科・エネルギー科学研究科・エネルギー理工学研究所がニューヨーク・シティ大学エネルギー研究所と部局間学術交流協定を締結しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100518_1.htm

○第4回中外学長会議に松本紘 総長が出席しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100504_1.htm

○生存圏研究所がインドネシアのタンジュンプラ大学森林学部と部局間学術交流協定を締結しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100416_2.htm

○iPS細胞研究所(CiRA)竣工式・開所式を開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100508_1.htm

○霊長類研究所がソウル大公園と学術交流協定を締結しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100428_3.htm

○京都大学総合博物館 春季企画展「科学技術Xの謎」を開催中!
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100510_1.htm

○寄附研究部門「防災公共政策(国土技術研究センター)研究部門」を新設しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100501_1.htm

○稲盛財団「平成22年度稲盛財団研究助成金」に本学から9件採択されました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/090417_1.htm

○栄誉
・2010年春の生存者叙勲受章者が発表されました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100506_1.htm

・林民生 理学研究科教授、森和俊 理学研究科教授および今中忠行 名誉教授の紫綬褒章受章が決定
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/100428_1.htm

 

◆研究成果◆

○電子スピンの向きを揃える半導体表面の作製に成功 (超低消費電力の半導体素子に向けての一歩)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100518_2.htm

○微小物質を運搬できるナノメートルサイズの繊維でできた「分子の線路」を開発
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100518_1.htm

○次世代人工皮膚を用いた難治性皮膚潰瘍治療~難治性皮膚潰瘍患者に朗報~
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100510_1.htm

○論考「日本の幹細胞研究に対して、規制がもたらした影響」を発表しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100507_1.htm

○ビーム出射方向を自在に制御可能な半導体レーザの開発に成功
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100503_1.htm

○暑さから身を守るための温度感覚の仕組みを解明
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100427_2.htm

○野生チンパンジーとその子どもの死についての事例報告
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100427_1.htm

○細胞膜たんぱく質が物質を細胞内へ運ぶ仕組みを分子レベルで解明 (神経疾患やがんの治療に役立つ可能性)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100423_1.htm


◆イベントのお知らせ◆

○京都大学春秋講義
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2009/100526_1.htm

○2010年度春季企画展「科学技術Xの謎-天文・医療・文化財 あらゆるものの姿をあらわすX線にせまる-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2009/100829_1.htm

○Challenge! 最前線の行政官が語る 霞が関 (京都大学公共政策大学院・人事院)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100603_1.htm


○神保道夫 名誉教授 特別講演会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100524_2.htm

○NEDO三次元光デバイス高効率製造技術 第10回 光集積ラボラトリ-公開セミナ- 
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100527_2.htm


○京都大学人文科学研究所・人文研アカデミー 連続セミナー 「フィクション論の諸相-SF、映画、マンガ、歌謡曲、ヴァ-チャル・リアリティー」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100624_2.htm

○京都大学人文科学研究所・人文研アカデミ- レクチャ- 「中国近代の通俗小説を読む」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100527_1.htm

○2010年親子理科実験教室[連続5回]
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100829_1.htm

○インテグリティセミナ-:科学者の生き方と責任 -2010年度 第1回:現代社会に生きる科学者の役割と責任-
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100603_2.htm

○京都大学附置研究所・センタ- 「品川セミナ-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100903_1.htm

○総合博物館第26回公開講座 「科学技術Xの謎」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100626_1.htm

○京都大学未来フォーラム (第43回)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2010/100614_1.htm

○平成22年度創立記念行事音楽会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100618_1.htm

○総合博物館 レクチャーシリーズ no.80(ジュニアレクチャー) 地震波で地下を覗く
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100619_1.htm

○平成22年度京の府民大学 2010年アフリカ地域研究資料センタ-公開講座[連続5回]「アフリカ研究最前線: 解る・アフリカ」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100925_1.htm

○情報学研究科同窓会イベント 超交流会2010「みんなのクラウド」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100627_1.htm


 >>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?c2=1

 

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