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  京都大学メールマガジン Vol.14
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   目次:
   ◆7月から8月の旅行の報告  尾池和夫
   ◆ホームカミングデイ 11月24日(土曜日)開催
   ◆同窓会
   ◆お知らせ
   ◆トピックス
   ◆ニュースリリース
   ◆イベントのお知らせ
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◆7月から8月の旅行の報告 尾池和夫

●インドネシアの旅(2007年7月24日−7月30日)

【7月25日(水)】
  インドネシアのバンドンで開催される、第10回京都大学国際シンポジウムに、副学長の横山俊夫さんたちと参加するため、ジャカルタへ向かった。2007年7月24日である。ジャカルタの空港に遅く着いた。ジャカルタオフィスの阿部健一さんと運転手のジュンピさんが出迎えてくれる。空港の近くで一泊し、朝の国内線でジョクジャカルタに向かった。案内役は東南アジア研究所長の水野広祐さんである。河野泰之さんも同行する。
  近くの空港までの道の両側を水野さんが説明してくれる。マングローブが残っていたり、低い道路が水に浸かりそうだったり、高級住宅地があったり、話題は尽きない。
「インドネシアの国内線は、20社くらいと、かなり多くて、競争が激しいですよ」
  水野さんがさまざまのインドネシア情勢を語ってくれる。
「乗務員の上着は会社の制服でも、下はジーパンだったりして」
「それは見たいですね」
「これから乗るのは、ちがいます」
  放射状に屋根がのびる明るい空港に着いた。待合室には韓国の大学生たちが20人ほどいた。HANSEO大学の学生たちで、赤十字のマークを付けている。水野先生は韓国の学生たちに話しかけている。何にでも興味を示して近づくのはフィールドワークを仕事とする研究者の特長の一つである。
  搭乗を待つ間にも水野先生と、さまざまのことを話す。
「ジャワの火山が今は活動・・・」
「そうそうそう、火山の噴火がいくつも起こっています」
「ジャワでは噴火は肥えた土地を・・・」
「そうそうそう、ジャワの火山はアルカリ性ですから、農作物がよく育つ」
「ムラピ火山の麓では・・・」
「そうそうそう、火山の噴出物を使って肥料にする」
  西ジャワが水野先生のフィールドであり、これから行く中部ジャワも東南アジア研究所のメンバーがたくさん活躍している地域である。
  しばらくすると、私たちの便は遅れて10時なるというアナウンスがある。ラウンジへ戻ってしばらく待っていたら9時35分になって突然「今から搭乗します」というのでゲートに急いだ。
  雲の切れ目から火山と大河のうねりが見える。窓からの景色が私の記憶にあるが、東部ジャワに向かって大きな火山がずらっと並んで見える。ムラピ火山の特徴のある山頂が見えた。かすかに煙を吐いている。
  10時45分、着陸のサインがあり、海岸の景色と六甲山や生駒山系と同じような、定高性のある活断層地形が見える。まっすぐな崖があり、きっとその崖に沿って活断層があって、それが昨年活動したにちがいないと思って見る。10時57分、私たちのボーイング737-400は、大きく一回バウンドして、激しく逆噴射がある。
  ジョクジャカルタの空港には現地で活躍している方たちが迎えてくれた。中でも濱元聡子さんが現地の人たちと一緒に村の復興に参加して活動している。
「これから行く村では、いろいろの高さの有用な樹木を植えて、鶏がいて、庭に捨てたゴミを鶏が食べて、薬草を植えて、毎日食べる野菜を植えます。唐辛子を植えたり・・・」
  車が郊外にさしかかるにつれて、水野さんの説明がますますいきいきしてくる。
「村では伝統的に自治がしっかりと育っていて、その組織を中心として復興の作業が自助努力で進み、防災教育を進めるのです」
  前方に石灰岩の台地がある。その麓が活断層だと思って見た地形である。
「どれぐらいの高さですか」
「キラキラ、800mかな」
「キラキラ」というのは「だいたい」という意味で、よく聞く言葉である。
  村に着いた。私たちを迎える横断幕が村の入り口にある。村長さんやたくさんの村の人たちと日本人のボランティアの方たちが迎えてくれた。
「この村では90パーセントの家が倒壊しました」
  2006年5月27日、マグニチュード6.4の浅い地震が起こって5,800名の死者を出した。ほとんどが圧死であったという。この地域ではコミュニティーが発達しているために被害状況の把握が迅速であったということが知られている。
  濱元さんたちが活躍するこの村の名は、中部ジャワのジョクジャカルタ特別州バントゥル県パンダック郡ウィジレジョ村ゲシアンIII集落という。村長さんはドゥク(Dukuh)さんという。ここでの活動は「ブカランガン計画」という。ブカランガンとは「屋敷林」で、本来は個人の住居での概念であるが、それを村のブカランガンと位置づけて、非常の時に村の人びとが集まる場所として創出しようという計画である。そこに防災情報拠点を置き、住民が楽しみながら情報を得て学習する。
「スラマト・シアン。ナマサヤ、カズオオイケ、ダリ、ジュパン」
  村の人たちに挨拶して、話を聞いて、お茶を飲んで、スナックをつまんで、村長さんの畑に記念の植樹をした。私はジャックフルーツの苗を選んで植えた。用意してくれたお茶は、村の女性が特産にしようとしているハイビスカスティーで、いい香りが疲れを癒してくれる。
「ワントさんの家も今再建中です」
  ブカランガン計画で、そのワントさんと濱元さんたちが協力して建設し、村の子供たちに防災の知識を伝える「防災情報拠点」を見学する。そこでも植樹した。こんどはドリアンの木を選んで植えた。
  村の中ではいくつかの産業が奨励されている。濱元さんたちがさまざまのヒントを提供して協力する。ブリンジョ(Belinjo)という木の実の煎餅を作っている家内工場を見て味見した。とてもおいしい、癖になる煎餅である。村の長老であるヤント(Yanto)さんの家の前に集会所があり、そこで村の人たちが昼食を用意して待っていてくれた。集会所は「ムシャワラ」というが、ジャワ語では「ジョグロ」と呼ぶという。村では伝統的に合議制でものごとを決めるから、このような集会所が要所に作られている。
  料理がどれもおいしい。Rosさんという女性が、赤茶葉とキノコを栽培して、そのチップを油で揚げたものを紹介してくれた。しばらくして、ロスさんがキノコの実物とチップを詰めた入れ物を持って来てくれた。大きな入れ物に3つもおみやげにいただいた。
  KIDSという「京大防災教育の会」が2005年6月に結成され、バンダアチェの小学校で、2006年9月に学生たちが防災授業を実施したというニュースは朝日新聞で紹介された。KIDSのメンバーで防災研究所から来て、スマトラ・アンダマン地震のときの被災地でも活動している阪本真由美さんも来ていて、2006年度のインドネシアでの活動報告書を渡してくれた。彼女たちの活動にも、もっともっと支援がほしいという。今、KIDSのメンバーは9月にインドネシアで防災授業を実施するための教材作りに忙しい。このような日本の学生たちの活動を、もっともっと日本の人たちにも知ってほしいと思う。
  村の人たちにお礼を述べて、この地域の産業である焼き物の村を通って空港へ向かった。KASONGANという村で、鉄分の多い赤い焼き物が名物である。ヨーロッパにたくさん輸出しており、地震のときには焼き物が全滅して、ヨーロッパからの支援が早ばやと届いたという。復興も早かった。道路沿いにたくさんの大型の赤い瓶や壺が並ぶ。
  農家では日本では珍しくなった風選をしている。広大な地域で、生育に長い年月が必要なチークをたくさん植えてある。私有地に植えてあるが、チークは国が管理する木であり、住民が勝手に売ることはできない。チークの下にも生活に必要な植物を植えてあり、それは自由に使える。
「この地域に育っているのは、どれも有用植物ばかりです」
  水野さんが何度も強調する。
  ジョクジャカルタの空港を18時に離陸してジャカルタに帰り、車で渋滞の高速道路を走ってバンドンのホテルに22時過ぎに着いた。明日の朝の国際シンポジウムの開会式での挨拶を準備して休んだ。

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【7月26日(木)】
  バンドンでの国際シンポジウムのことは別に報告があるだろうから、シンポジウムの感想と番外のことをここで紹介しておきたい。
  シンポジウムの開会式では、バンドン工科大学の新しく就任した学長であるサントソさんが出席して開会を宣言した。地球科学の広い分野から、世界的な第一人者が参加して分かりやすく講義するという企画で、たいへんよい学習ができる。地震学の分野からは今年の京都賞の受賞が決まっている金森博雄博士も参加している。前理事の入倉孝次郎さんも講師の一人である。

【7月27日(金)】
  11時から貸し切りバスで野外へ出かけた。温泉で昼食をとり、タンクバンプラウへ登った。硫黄が匂い噴煙が立ち上っている。帰りにレンバン断層の地形を見た。見晴らしのよい岩山に登って、上からレンバン断層の地形を確認し、バンドンの町も見おろした。
  夜は京都大学が主催する歓迎会を開いた。スピーチの後で私は中部ジャワのソロ川を語るクロンチョンである「ブンガワンソロ」をインドネシア語で唱った。竹の楽器であるアンクルンを皆で持って、さまざまの曲を演奏する企画がおもしろかった。隣のITBの副学長、Surahmanさんは「ミ」を、妻の葉子は「ラ」を、私は高い「ド」を受け持った。

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【7月28日(土)】
  少しの時間を利用して、車を雇って地質博物館に行った。前回は金曜日の休館日で、せっかくの瀬戸口先生の案内を楽しみにしていたのに残念な思いが残っていたので、今度こそはと思っていた。
  ピテカントルプスエレクツスの骨を見ていたら、小学生が2人、ノートを持って話しかけてきた。宿題のインタビューだという。
「何の目的でこの博物館に来ましたか?」
「有名なピテカントルプスエレクツスに会いに来ました」
「この博物館に何か意見があったら言って下さい」
「2004年の大津波のことも展示してほしいと思います」
「ありがとうございました」
  その後、ハイヤット・リージェンシーのガーデンでピザとスパゲティーを食べ、アルンアルンバンドンのモスクを見ていたら、珍しく雨が降ってきた。きっと喜雨である。
  国際シンポジウムでは、モリさんの司会でパネル討論が最後に行われた。地球科学分野以外に、生存圏研究所長の川井さんや副学長の横山さんや東南アジア研究所長の水野さんが加わって、人類社会のための地球科学についての議論を行った。
「2004年の津波の後、若者が地球科学に興味を持つようになりました。日本の理科離れという現象が信じられません」
  プスピトさんがこのように発言したのが印象に残った。
  先生たちが30人ほど集まって下町の「Queen」という中国料理店へ行った。ここには中国人がたくさん集まって食事していた。余田さんが私の願いを覚えていて酢豚を注文してくれて、久しぶりの豚肉料理がおいしかった。

【7月29日(日)】
  朝の7時半にバンドンを出て、日曜日の高速道路をマイクロバスで走った。棚田を見下ろしていると谷ごとに田植えをしていたり、草取りをしていたり、収穫していたり、季節感が次々変わる。ゴムの木の植林地がたくさんあって樹液を採っている。
  ジャカルタに入って高速道路を出てすぐ、10時に東南アジア研究所のジャカルタ事務所に着いた。近くに韓国街がある。
  たくさんの人で事務所があふれた。60人ほどが集まった。会長はボゴール農家大学教授のスピアンディ・サビハムさん、副会長はLIPIのバンバン・スビヤントさんである。その他の役員も決まってインドネシア京都大学同窓会準備会の「HAKU」が正式に発足した。HAKUは「Himpunan Alumni Kyoto University」であり、博士の博を表すという。私は挨拶して、スライドで簡単に京都大学の近況報告をした。もちろん今回のジョクジャカルタやバンドンの様子も写真で紹介した。すごい熱気で、文字通り熱かった。
  この同窓会のこともきっと別に報告があると思うので、皆さんのご協力と歓迎に感謝してこの日記を終わることにしたい。
  ジャカルタ事務所で用意されたさまざまの日本料理がおいしかったが、とくに久しぶりに食べる豚肉と白菜のうどんがおいしかった。
  インドネシアの研究機関と京都大学の交流協定は、今までにインドネシア科学院(LIPI)とバンドン工科大学(ITB)との間で結ばれている。いずれも昨年サインした。部局では14の機関と交流協定が結ばれている。ジョクジャカルタから、わざわざ私に会いに駆けつけてくれたガジャマダ大学のマルセムさんが、京都大学と交流協定を結びたいという学長の希望を伝えてきた。ジョクジャカルタと京都府との交流もある。ガジャマダ大学は18の学部を持つ。インドネシアで最古の1949年の設立であり、学生数4万人の最大規模の国立総合大学である。このガジャマダ大学と、ぜひ大学間交流協定を結びたいと私も望んでいる。

●長崎から熊本へ(8月13日−15日)
【8月13日(月)】
  霊長類研究所の松沢哲郎先生の薦めで、京都から長崎へ、寝台特急「あかつき」の旅を楽しむことになった。「あかつき」は京都と長崎を結ぶ。2000(平成12)年から「彗星」と併結して運転していたが、2006(平成17)年10月からは「なは」と併結して運転している。「なは」は京都と熊本を結ぶ。
  列車編成は、B1が、ソロ(3・8号車)、シングルツイン(7号車)、B2が、デュエット(4号車)、ツイン(7号車)、10号車には女性専用席があり、7号車のシングルツインは補助ベッドが使用できる。
  19時50分に列車が7番ホームに入り、20時02分に京都駅を出発した。右側の車窓を見ながらひたすら西へ走る。姫路城が遅くまでライトアップされている。姫路を過ぎると外は真っ暗な景色となる。

【8月14日(火)】
  朝早く目が覚めると九州である。青田と里芋畑と苅田とが混在している。6時20分に鳥栖の駅で「なは」と分かれる。隣のホームに「つばめ」が後から入ってきて先に出発した。
  諫早駅で伊谷原一さんが迎えてくれて、レンタカーで私たちを案内してくれる。伊谷さんは、林原類人猿研究所の所長で、三和化学研究所の寄附による霊長類研究所福祉長寿研究部門の担当教員である。
  干拓地を経由して島原に向かう。久しぶりに見る雲仙であるが、噴火活動が終息した平成新山は、私も初めて見る。

 雲仙・普賢岳の噴火活動は、1990(平成2)年11月17日、地獄跡と九十九島から始まった。水蒸気爆発だった。1996(平成8)年5月30日に終息宣言が出されるまでの4年半あまりの間に、水無川で土石流発生が発生したほか、火砕流も発生し、多くの死者行方不明者を出した。雲仙普賢岳の山頂が標高1359m、現在の平成新山が1482.7mである。
  島原城の天守閣の最上階から平成新山と明日行く熊本県側の目的地を見る。かなり霞んでいる。
  昼食に六兵衛というサツマイモの麺を食べたあと、武家屋敷と錦鯉のいる町を歩いた。町のいたるところに清流が流れ、湧き水を汲める場所がある。湧水の多くは、「島原大変」のときからと言われる。「島原大変肥後迷惑」というのは、1792(寛政4)年に雲仙普賢岳の噴火と眉山の崩壊とそれによる津波の被害をいう。そのとき、島原で有感地震が続き、その後普賢岳から溶岩流やガス噴出があり、さらに大地震で眉山が崩壊した。その土砂が有明海に流下して津波を起した。有明海に流れ込んだ岩塊が流れ山として小さい島になって残っている。
  まゆやまロードを登って、平成新山を間近に見たあと、土石流被災家屋保存公園で埋もれた家を見た。2002(平成14)年8月8日〜14日の間に被害にあった実際の建物11棟が保存されていて、家屋の1階がほぼ埋もれている。平均で約2.8メートル埋没しているという。

 明日向かう対岸の宇土地区を確認したあと、この日は雲仙温泉に宿泊し、松沢哲郎さん、松林公蔵さん、伊谷原一さん、藤澤道子さんたちの興味深い話を聞くことができた。

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【8月15日(水)】
  雲仙温泉の地獄を見て硫黄の臭いを身体にまといながら、フェリーに乗り、対岸の熊本に渡った。左にJR三角線、右に島原湾を見ながら、走る。
  宇城市三角町太田尾990番地にある株式会社三和化学研究所のチンパンジー・サンクチュアリ・宇土施設に着いた。名古屋の本社からわざわざ社長の山本一雄さんが私たちを待ってくださっており、施設管理所長の小林 久雄さんたちが出迎えてくださった。
  施設をゆっくり見学した。ここでは、現在、78人のチンパンジーが暮らしている。全員に名前が付いていて、着任したばかりの藤澤さんも、彼らの顔と名前を覚えようとしているところだそうだ。
  屋外放飼場の塔の横に、雲仙の平成新山が見える。かなり暑い日であったが、放飼場にいる全員が塔の思い思いの場所にいて気持ちよさそうである。

 チンパンジーは、1978年からここにいたから、ここからあの火砕流も見ていたに違いないなど、いろいろのことを思いながら施設をあとにした。

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●北海道研究林へ(8月17日−19日)
【8月17日(木)】
  昨日は今年の夏の貴重な休暇を1日いただいて、家でパソコンに向かって、たくさんの文書を仕上げた。いろいろのニュースが伝わった1日だった。
  まず、日本列島は、勢力の強い太平洋高気圧に覆われ、多治見市で14時20分、熊谷市でも14時42分に、観測史上最高の40.9度を記録した。この記録は1933年7月に山形市で観測した40.8度の記録の更新だという。
  また、昨日は大文字の送り火の日であり、今年は珍しくテレビで見た。
  さらに、ペルーで15日にマグニチュード7.9というような巨大地震が発生し、死者510人、負傷者は約1,500人と伝えられた。気象庁は津波予報を今朝1時過ぎに発表した。
  日本列島の太平洋沿岸では、今日、津波の第1波が最も早かったのは宮古市だった。17日午前5時23分に微弱な津波を観測した。その後、高さ10センチの津波が到達した。津波の波高の最大は20センチで、午前8時20分に北海道浦河町と、11時41分に和歌山県那智勝浦町での記録である。津波注意報は13時にすべて解除された。
  私たちは伊丹空港から11時50分に飛び立ち、13時50分に釧路に着陸した。空港では偶然高校のときの同級生に会った。釧路行きの阿寒バスは国道240号をひたすら東に走る。窓の外は一面の緑である。丹頂鶴がいる。大楽毛(おたのしけ)駅の前には、津波注意という標識があり、標高は4.6mと書いてある。鳥取大通り4丁目で乗客が1人降りて、バスは私たち4人だけとなった。
  釧路に着いて荷物を置いて、和商市場へ行った。花咲蟹は7月から9月20日までだという。公園にはエゾヤマサクラやナナカマドの木があり、機関車があり、田邊朔郎の記念碑が建っている。
  ホテルでフィールド科学教育研究センター長の白山さん(基礎海洋生物学部門教授)、同森林ステーション北海道研究林事務職員の川合さん(事務掛長)、技術専門職員の佐藤さん(管理技術班班長)にお目にかかり、夕食をとりながら、研究林の話を聞いた。白山さんは海洋研究所にいたとき、白鳳でたびたび釧路港に来たという。
  白山さんに和商市場のことを話したら、タラバガニや花咲蟹は、ヤドカリの仲間だという。京都大学にいるといろいろの知識が増えて楽しい。

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【8月18日(土)】
  朝の釧路港は明るい。14日にいた雲仙は、東経130.17度、北緯32.45度で、今朝いる釧路(標茶)は東経144.37度、北緯43.19度である。その差の分だけ朝が早い。
  9時に釧路のホテルを出発した。佐藤さんが運転しながら、沿道や土地のことを、さまざまの視点から説明してくれる。研究林に勤めて25年のベテランである。鉄道と平行して走る。白山さんが演習のことを聞く。
「学生たちはこの鉄道で演習に参加するのですか」
「ええ、でも最近は空港まで迎えてきてくれという学生たちも多くて」
  9時10分、遠矢を通過する。
「義経と弁慶が弓を競って、義経の矢が遠くまで飛び、ここに刺さったそうです」
  アキタブキがたくさん生えている。
「もう堅くて、虫が入っています。6月頃には食べます。タラの芽もたくさんあります」
  9時30分、細岡展望台の入り口である。
「元の地名ではなくて、細い岡だったとか、開発にあたった人が細岡さんだったとか、諸説があります」
「この辺のは淡水湖です」
  カヌーが見える。
「珍しい」
  踏切が閉まっていて一両が通過する。道の両側にミズナラやカシワが茂っている。
  展望台に着いた。釧路湿原を見渡す。遠くの山は曇っていて見えないが、展望台からは釧路川の蛇行がよく見える。
「湿原に木が増えました」
「富栄養化が進んでいるのですね」
「湿原を守っても、周辺の川を守らないから」
「土砂の流入がひどいのです」
「湿原には高層湿原と低層湿原があって、高層湿原は苔が覆っています」
「梅雨はないのでしょう?」
「蝦夷梅雨というのがあります。霧雨がふります。春先に雨が降ると、凍っているので染み込まずにいきなり洪水になるのです」
  10時5分、標茶町に入る。
「この辺はみな植林地でカラマツです。成長の早い木を植えたのですが、曲がりがあって材になりません。最近はまた技術があって利用できる材になり、杉より高いものが出ました」
  10時10分、塘路湖。
「ワカサギが釣れます」
「冬は凍りますか」
「はい、ワカサギ釣りをやってます」
  次はシラストロ湖。
「夕日の名所で、SLが走るときにはカメラマンも走ってます」
「この辺は鹿の食害は?」
「ありますよ。芦生ほどではないけど、牧草をよく食べるのでたいへん」
「白糠は山全体を柵で囲って鹿がでないようにしてます」
  標茶の管理棟に着いた。事務所でお茶をいただき、説明を聞いた。

 >> フィールド科学教育研究センター 北海道研究林
    http://www9.ocn.ne.jp/~sibe/

 学生の宿舎を見た。最近は大部屋では嫌がる学生も多い。まずは女子専用の宿舎と風呂場の増設が必要である。宿舎の条件を整えて、少しでも多くの学生にこの演習林を体験させたいと思った。
  管理棟の前に、ミヤマサクラを植樹させていただいた。5月20日頃に咲くという。
  ここの気候は今は快適で、連日猛暑の京都から来ると別天地である。そこに今、9名の職員がいて研究林を守っている。しかし、気象観測記録によると、最高気温は1994年8月8日の36.0度、最低気温は1966年1月20日の零下32.7度である。積雪は1m程度だが、最近は40cmくらいだという。
  牧場で昼食の後、摩周湖を経由して、研究林を一周した。ランドサットから見ると、研究林の周りは牧場であり、研究林が浮かび上がっている。
「標茶では人より牛の方が多いですから」
  鶴居村のホテルに着いて荷を下ろし、村の中を散歩して温泉に浸かった。ここの湯は重曹泉で40度の湯が溢れている。

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【8月19日(日)】
  8時半に出て、また標茶に向かい、丹頂鶴を育てているお宅に立ち寄った。鶴の夫婦に子供が2羽、餌を食べていた。年間1.5トンの餌を食べるという。鶴の子別れの厳しさを教えてもらった。なかなか子離れしないのは人間だけかもしれない。
  鶴居村の展望台から釧路湿原を見た。昨日の展望台のちょうど反対側で西から見た。乾燥化が進み、木がたくさん生えている様子がわかる。
  南へ走り、海岸に出て白糠町を西へ向かう。津波注意、この道路は標高2.4mというような標識がある。漁船が停泊し、漁業組合の建物が見える。白糠町は漁業の町である。根室本線を渡って山に向かう。
  昨日と異なり青天である。
「この地域は日照量が多く、研究林も樹種が多いのです」
「この研究林は深い山で、阿寒山系に続いています」
  昨日に続き、佐藤さんの解説がくわしい。
  白糠の管理棟に着くと、日曜日なのに職員の古本さんが迎えてくれた。技術職員として親子2代でこの研究林を守ってきた人である。すでに定年を過ぎたが、再雇用職員として研究林の気象観測などを続けてもらっている。毎日離れた研究林の観測点に通う。
「気象観測は現地へ行かないとだめですから」
  管理棟でお茶をいただき、地図でもう一度ルートをたどって確認し、町の食堂でボリュームたっぷりのチーズカレーの昼食をとって空港に向かった。
  今日の釧路は最高気温21度、大阪空港は今日は気温が下がって、35度だった。

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◆ホームカミングデイ 11月24日(土)開催◆

 昨年度、本学におきましては念願でありました京都大学同窓会を設立するとともに「第1回京都大学ホームカミングデイ」も開催いたしました。今年度も引き続き「第2回京都大学ホームカミングデイ」を11月24日(土曜日)開催いたします。
  卒業生・修了生、学生、現旧教職員等の本学関係者とご家族の方々に本学の教育研究の活動の現況をお知らせし、会員相互の交流と親睦を図り、連携を深めることを目的としております。 皆様には有意義で楽しい一日をお過ごしいただけるよう準備を進めております。
  なお、今年度は、11月祭の開催中でもあり、現役学生たちが創る数々の企画も楽しみの一つです。是非この機会にお越し下さるようお願い申し上げます。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/hcd/index.htm

◆同窓会◆

○インドネシア京都大学同窓会(HAKU)が発足
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708061126497755

○北カリフォルニア洛友会(洛友会@SanFrancisco)が京都大学同窓会に加入しました

 アメリカ合衆国サンフランシスコ・ベイエリア在住の同窓生が会員の北カリフォルニア洛友会(洛友会@SanFrancisco)が京都大学同窓会に加入しました。入会など詳しいことは、

 北カリフォルニア洛友会ホームページ
  http://www.rakuyukai-sf.com/

をご覧ください。

◆お知らせ◆

○オープンキャンパス

 「京都大学オープンキャンパス2007」終了しました。

8月9日・10日の両日、京都大学吉田キャンパス(一部桂キャンパス)を会場として開催いたしましたオープンキャンパスは、猛暑の中、全国から多くの受験生・高校生やご家族の方々にご参加いただき、大盛況のうちに終了いたしました。ありがとうございました。
  このオープンキャンパス参加が、皆様の将来の夢に繋がれば幸いに存じます。

 当日の様子
  http://www.kyoto-u.ac.jp/nyugaku/03_open/2007/oc2007.htm

○無料法律相談のお知らせ
−10月2日(火曜日)・10月4日(木曜日)実施分について申し込みを受付中−

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_notice/ippan/070719_1.htm

◆トピックス◆

○第10回京都大学国際シンポジウムを開催
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708031328285418

○全国七大学応援団・応援部合同演舞演奏会が開催されました
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708131704514160

○助成金等採択結果

・財団法人 村田学術振興財団 平成19年度研究助成等(15件)

 http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200707251551193782

・文部科学省
「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」(1件:東南アジア研究所)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708221608379516

「がんプロフェッショナル養成プラン」(1件:医学研究科)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708011754503301

「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」(1件:経営管理教育部)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200707310854438418

「ナショナルバイオリソースプロジェクト」(1件)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200704041907181717 

「専門職大学院等教育推進プログラム」(2件:法学研究科)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/2007.htm#200708201122058172

◆ニュースリリース◆

○早稲田大学=京都大学=黄桜共同開発ビール「ホワイトナイル」のリニューアルと発泡酒「ブルーナイル」発売について

 京都大学と早稲田大学は昨年4月、黄桜株式会社とビール「ホワイトナイル」を共同開発したことを発表しました。同ビールは黄桜から発売され、大好評を博してまいりましたが、材料をデュラム小麦からエンマー小麦に変更するリニューアルを8月23日に行ないます。また、新規開発したフレーバー系発泡酒「ブルーナイル」も同日、黄桜から販売開始されることになりました。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070820_1.htm

○mRNA前駆体の核内係留におけるESEの役割

 大野 睦人ウイルス研究所教授らの研究グループは、細胞の持つRNAの品質管理機構の重要な局面を明らかにしました。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070814_1.htm

○家計のためのメタボ予防 体重増加は家計も圧迫。
肥満による糖尿病医療費分析、体重20kgアップで医療費2.5倍

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070808_1.htm

○分節時計におけるHes7オシレーションの開始と伝搬はFgfおよびNotchシグナルにより協調的に制御される

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070807_1.htm

○Q値200万をもつ光ナノ共振器の開発に成功

 野田 進工学研究科教授らの研究グループは、フォトニック結晶を用いて世界最大のQ値(光閉じ込めの鋭さを示す値)200万をもつ光ナノ共振器の開発に成功しました。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070802_1.htm

○「ニュータイプ」巨大ブラックホールの発見
  −高エネルギーX線で暴く隠れたブラックホールの謎−

 上田 佳宏理学研究科准教授らの研究グループは、愛媛大、NASAと共同で「ニュータイプ」巨大ブラックホールを世界で初めて発見しました。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070730_1.htm

◆イベントのお知らせ◆

○企画展

・京都大学大学文書館
  第5回企画展「京大のアーカイヴズ−文書(ぶんしょ)がひらく世界−」

 大学文書館には、京大創立以来の膨大な文書があります。
  それらの文書は、時を超えて、われわれに多くのことを教えてくれます。
  本展示を通して、アーカイヴズがひらく豊かな世界をお楽しみください。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/buhin/070902_1.htm

・びっくり!エコスポ!2007 at 京大サロン

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/buhin/070831_1.htm

・京都大学大学院生命科学研究科生命文化学研究室 Presents
  「小さな写真展」−その形を見る II−

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/buhin/070902_2.htm

○京都大学未来フォーラム(第30回) 持続可能な社会へのライフスタイル
  講師 石川県立大学教授(京都大学名誉教授・環境まんが家)高月紘(ハイムーン)氏

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070919_1.htm

○第3回 由良川フォーラム 〜森と海へのいざない 心と体の癒しを求めて〜
  http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070902_1.htm

○こころの未来セミナー
・第16回 「自己・他者の認知とコミュニケーション −社会的随伴性検出 の発達メカニズム−」
  開一夫先生(東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系 准教授)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070911_1.htm

・第17回 「『遠野物語』の心的構造」
赤坂憲雄先生(東北芸術工科大学大学院長)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070913_1.htm

・第18回 「意思決定の意識的・無意識的過程」
渡邊克巳先生(東京大学先端科学技術研究センター認知科学分野 准教授)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070927_1.htm

○第5回 市民講座 「宇宙と物質の神秘に迫る〜物理科学最前線〜」

 http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/2007/070930_1.htm

 >>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
   http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/event.htm

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