研究成果

霊⻑類において動機付け⾏動に関わる投射経路の機能を解明 -「我慢して多くの報酬を得る」ための回路を同定-


2020年08月17日


     伊佐正 ⾼等研究院ヒト⽣物学⾼等研究拠点(ASHBi)教授らは、Wim Vanduffel ベルギー・ルーバンカトリック⼤学教授の研究グループ、および⼩林憲太 ⽣理学研究所准教授と共同で、霊⻑類の腹側被蓋野(VTA)から側坐核(NAc)への投射経路は動機付けに基づく意思決定には関与するものの、強化学習には必ずしも重要ではないことを明らかにしました。

     VTAは辺縁系や⼤脳⽪質へドーパミンを供給する脳部位として知られ、特にNAcへの投射経路は、動機付け⾏動や薬物依存などに関与する経路として注⽬されています。しかし、これまでは霊⻑類が経験に基づいて 多様な選択肢から⾏動を決定していく過程で、この経路がどのように機能しているかは不明でした。

     本研究では、2種類のウィルスベクターを組み合わせて特定の経路を⼀時的に遮断する⽅法を⽤いて、アカゲザルにおいてVTAからNAcへの経路を⼀時的に遮断し、その影響を調べました。その結果、(1)前頭葉 と側頭葉を中⼼とする広汎な脳領域間の結合性が増強すること、(2)動機付け⾏動選択課題において「より我慢強く待ってより多くの報酬がもらうことを好む」⾏動特性が、「より短い待ち時間で少ない報酬を得る」 ような傾向に変化すること、(3)その⼀⽅で、報酬がより⾼い確率で得られるゴールを選択するという強化 学習課題における学習速度には変化が⾒られないことが明らかになりました。

     この結果は、VTAからNAcに⾄る経路が「努⼒によって多くの報酬を得る動機付け⾏動」に重要であるということを霊⻑類で明確に⽰した点で画期的です。また、この経路が霊⻑類において強化学習には重要ではないことを⽰したことは、従来のげっ⻭類での研究を覆す結果です。

     本研究成果は、2020年8⽉5⽇に、国際学術誌「NEURON」のオンライン版に掲載されました。

    図:本研究の概要図

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.neuron.2020.07.013

    Pascaline Vancraeyenest, John T. Arsenault, Xiaolian Li, Qi Zhu, Kenta Kobayashi, Kaoru Isa, Tadashi Isa, Wim Vanduffel (2020). Selective Mesoaccumbal Pathway Inactivation Affects Motivation but Not Reinforcement-Based Learning in Macaques. Neuron, 108.


    霊⻑類において動機付け⾏動に関わる投射経路の機能を解明 -「我慢して多くの報酬を得る」ための回路を同定-
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