日本発・高強度マグネシウム合金の強度の鍵、長周期積層秩序構造の形成機構解明に成功 -材料開発指針への寄与による実用化の加速に期待-

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公開日

奥田浩司 工学研究科准教授は、山崎倫昭 熊本大学准教授、河村能人 同教授と大阪大学、名古屋大学と共同で、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光科学研究施設(PF)と高輝度光科学研究センター(JASRI)の大型放射光施設(Spring-8)を用いて、世界最強のマグネシウム合金、KUMADAIマグネシウム合金の強化相である長周期積層秩序構造(LPSO構造)の形成機構を世界に先駆けて解明しました。

本研究成果は、2015年9月21日(月曜日)午前10時(ロンドン時間)に、オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

実用構造材料でこのような複雑な構造を持つ軽量材料は非常に珍しく、その形成過程は非常に魅力的なテーマです。得られた相変態機構の一般化による理解 を進めることで、材料開発のための指針としての有効性を検証していきます。こ のため、今回適用した手法を応用した近縁元素を含む材料の検証を進める予定です。

概要

日本で開発されたKUMADAIマグネシウム合金は、Mg-Zn-Y系の合金であり、世界最強の機械的特性を持つことから、次世代の超軽量高強度材料として航空機、自動車、高速鉄道車両、生体材料などへの応用が期待されています。この日本で開発された新合金は長周期積層秩序構造という新奇で複雑な原子配列構造を持つことによって優れた機械的特性が発現しますが、その複雑構造がどのように形成されるのかは不明であり、世界中の研究者が最新の計算科学や構造解析技術を駆使して、その形成機構の解明に取組んでいます。

今回、共同研究グループは、特殊な方法で強い非平衡状態の試料を作り、放射光の強力なX線による原子レベルからナノスケールレベルでの相変態過程を同時実時間観察した結果、最初にLPSO構造内部のYとZnのクラスターが形成し、そのクラスターが自発的に規則配列することを明らかにしました。この2段階の相変態を経る構造形成過程は新しい発見であり、材料科学分野に新しい材料設計の指導指針を与えるものです。

Mgのhcp格子中にクラスターが形成・成長し、最終的にクラスターの格子が形成される様子。上はクラスター間距離の分布を示すピークの変化

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep14186

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/200619

Hiroshi Okuda, Michiaki Yamasaki, Yoshihito Kawamura, Masao Tabuchi & Hajime Kimizuka
"Nanoclusters first: a hierarchical phase transformation in a novel Mg alloy"
Scientific Reports 5, Article number: 14186 Published online: 21 September 2015