RNAiの仕組みに1分子観察で迫る -複合体RISCが標的RNAを素早く正確に切る仕組み-

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公開日

多田隈尚史 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)特定研究員、上田卓也 東京大学新領域創成科学研究科教授、泊幸秀 同分子細胞生物学研究所教授らの研究チームは、1分子イメージング技術を用いて、RISCが標的RNAを切断する過程を分子1個のレベルで観察することに、初めて成功しました。これは、RISCが標的を切断する仕組みを解き明かす画期的な研究成果であるとともに、現在進められているRNAiを利用した次世代医薬品の開発など、RNAiのさらなる応用を加速することが期待されます。

本研究成果は、科学誌「Molecular Cell」誌の7月2日付けで掲載され、表紙を飾りました。

研究者からのコメント

研究の波及効果として、現在進められているRNAiを利用した次世代医薬品の開発など、RNAiのさらなる応用を加速することが期待されます。

概要

RNAiとは、小さなRNAが標的とするメッセンジャーRNAの切断を引き起こし、特定のタンパク質の合成を抑えるという生命現象です。RNAiは、小さなRNA1本鎖とアルゴノートと呼ばれるタンパク質からなる複合体RISCが、正しい標的を認識し切断することで引き起こされます。これまでの研究からRISCが"どのような"標的を切断するのかに関しては詳しく分かってきましたが、"どのように"切断するのかは詳しく調べる方法はなく、謎に包まれていました。

今回、モデル生物であるショウジョウバエを用いて、RISCに取り込まれる小さなRNAに蛍光分子で目印をつけ、1分子イメージング技術を用いることで、RISCが標的を切断する過程を分子1個のレベルでリアルタイムで観察することに、初めて成功しました(図)。その結果、これまではとらえることができなかったRISCが標的を切断する詳細な過程が分子レベルで明らかになりました。


RISCが標的切断する過程の1分子観察

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2015.05.015

Chunyan Yao, Hiroshi M. Sasaki, Takuya Ueda, Yukihide Tomari, Hisashi Tadakuma
"Single-Molecule Analysis of the Target Cleavage Reaction by the Drosophila RNAi Enzyme Complex"
Molecular Cell Volume 59 Issue 1 Pages 125–132 July 2, 2015