野生のチンパンジーの新しい道具使用行動を発見

ターゲット
公開日

2014年6月23日

山極寿一 理学研究科教授らの研究グループは、野生のチンパンジーが三つの異なる道具をセットとして用いてハリナシバチの蜂蜜を採取しているのを観察しました。さらに、大きな倒木の洞に隠れているマングースを追い出して捕獲するために、蜂蜜採集と同じような道具を用いていることも観察しました。同じような道具を二つの異なる目的と方法で用いたのは、これまでにまだ報告されていない新しい発見です。

本研究成果は、国際学術誌「PRIMATES」に掲載されました。

研究者からのコメント

山極教授

本研究では、チンパンジーが複数の道具を使って複数の目的を達成する柔軟な思考能力を持つことを発見しました。おそらく250万年前に最初の石器を作った人類の祖先も、このように同じ道具を別の目的で用いる思考能力を持っていたに違いありません。

今回の発見は、人間にもっとも近縁なチンパンジーにもこの認知能力があることを示し、人類の祖先がさらに古くから複数の用途をもつ道具を用いていたことを示唆しています。人類の知性の進化に新たな証拠を付け加える発見と考えられ、学術的な意義が大きいと考えます。

概要

野生チンパンジーの道具使用行動は、道具を作り、その使い方も含めて他の仲間に伝達する能力があることを示し、人間の認知能力がどのように進化してきたかを考察するために重要です。しかし、これまでさまざまな道具がアフリカの各地で知られていますが、すべて一つの目的に向かって製作され、用いられると考えられてきました。

しかし、今回の発見でチンパンジーに蜂蜜採取と狩猟という二つの異なる目的で、同じような道具を作り、使い方を変えて用いていることが判明しました。しかも、両方とも複数の道具をセットとして用いています。これは、チンパンジーが複数の道具を使って複数の目的を達成する柔軟な思考能力を持つことを示唆しています。

詳しい研究内容について

野生のチンパンジーの新しい道具使用行動を発見

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1007/s10329-014-0431-5

Ebang Ella Ghislain Wilfried, Juichi Yamagiwa
"Use of tool sets by chimpanzees for multiple purposes in Moukalaba-Doudou National Park, Gabon"
Primates Published online: 12 June 2014

掲載情報

  • 朝日新聞(6月26日 30面)、京都新聞(6月24日 26面)、産経新聞(6月24日 28面)、中日新聞(6月25日 3面)および毎日新聞(6月24日 2面)に掲載されました。