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京都大学大学院エネルギー科学研究科創設エネルギー理工学研究所改組10周年記念式典 挨拶 (2006年5月13日)

尾池 和夫

 京都大学大学院エネルギー科学研究科の創設とエネルギー理工学研究所改組の10周年記念式典ならびに記念祝賀会を挙行するに当たり、京都大学を代表して一言お祝いを申し上げます。

 京都大学が基本理念を制定したのは、平成13年のことです。そこでは、「京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎に、ここに基本理念を定める。」と始まっています。本日10周年を迎えた両部局は、それよりも前に、平成8年、人類の生存に必須のエネルギーの分野で、今の京都大学の基本理念の趣旨を含んで、大学院独立研究科と研究所を発足させました。この独立研究科は京都大学では初めての学部を持たない研究科でありました。今、エネルギーの課題にはさまざまの厳しいものがありますが、誠に時宜を得た、また京都大学の基本理念を先取りした発足でありました。

 人類の存在を支えるこの地球の豊かな自然は、太陽エネルギーの恵の下にあります。エネルギーは生物存在の最も根源的なものです。しかし、エネルギー問題の現状は楽観的なものとは到底言い難く、化石エネルギーの枯渇は時間の問題とも言われ、水力発電、地熱発電の開発にも限りがあり、一方原子エネルギーの利用は安定期に入ったとはいえ種々の問題を抱えています。

 太陽エネルギーなどの所謂再生可能なクリーンエネルギーの開発はまだ不充分であり、究極のエネルギーといわれる核融合エネルギーが利用段階に入るのは今世紀半ばと言われます。その一方で、人類全体で消費するエネルギーの総量が、地球環境全体を脅かすスケールになるのもそれほど遠い将来のことではないと考えられます。先進国におけるエネルギー需要の増大する量は、効率的エネルギー利用による節約の量を越えており、発展途上国のエネルギー需要は爆発的に増大しつつあります。21世紀以降の人類の持続可能性は、エネルギー問題の解決にかかっていると言えるでしょう。

 このような認識のなか、将来におけるエネルギー問題に関する全般にわたっての解決と、先端的科学技術発展のためのエネルギー利用の高度化の研究・開発を目指して、工学部物理工学科エネルギー応用サブコースを母体に、地球工学科並びに工業化学科、理学部、農学部、経済学部などの多岐にわたる学問分野を結集させ、更には原子エネルギー研究所から2部門、へリオトロン核融合研究センターから2部門を加えて、京都大学で最初の独立研究科として、大学院エネルギー科学研究科を創設し、併せて、車の両輪の片方として原子エネルギー研究所並びにヘリオトロン核融合センターを、エネルギーの生成、変換、利用の高度化の研究・開発を目的とする、エネルギー理工学研究所に転換・統合することが、当時の井村総長を委員長とする「京都大学将来構想検討委員会」で検討され、エネルギー科学研究科の創設並びにエネルギー理工学研究所の改組の実現へとつながったわけです。

 以来10年、エネルギー科学研究科とエネルギー理工学研究所は車の両輪として創設理念に基づいた教育・研究活動を展開し、国内外から注目される数々の優れた成果を上げ、また1,000人を優に超える博士・修士学位取得者を輩出し、大きく発展しつつあることは、京都大学総長として誇りとするところです。

 特に、平成14年度に始まった21世紀COEプログラムでは、エネルギー科学研究科とエネルギー理工学研究所、および生存圏研究所が合同で提案された、「環境調和型エネルギーの研究教育拠点形成」プログラムが採択されました。これは採択数113件のなかで最高額のプログラムでした。そこでは、環境調和性の高い未来エネルギーとして、太陽エネルギー、水素エネルギー、バイオエネルギーを取り上げ、それらの発展のための基礎学理の究明と研究開発を行うとともに、各種エネルギーシステムの環境調和性や社会的受容性を総合評価するための方法論や評価システム、関連データベースの構築を行う環境調和型トータルエネルギー評価、また教育拠点形成では、高い専門性と総合性を備え、国際的に活躍できる次世代の人材を育成するための教育組織・教育体制の構築を鋭意進めております。併せて国際情報エネルギーセンター事業として、海外研究拠点の設置、国際エネルギーシンポジウム及び国内シンポジウムの開催、エネルギー環境調査、産官学連携事業、広報事業を大きく展開しております。

 エネルギー科学研究科では、平成17年度から、文部科学省の「魅力ある大学院教育」イニシアティブ事業で、「学際的エネルギー科学研究者養成プログラム」が採択され、現在その課題を推進しています。このイニシアティブ事業では、21世紀の国際社会の喫緊の、エネルギー資源の確保や環境問題を中心とした人類の生存にかかわる様々なエネルギー・環境問題に対して、文系と理系の融合による幅広い国際性と深い専門性をもって社会の要請に応えるとともに、自然環境と人間社会との調和を図りながら、創造性と活力にあふれる21世紀社会をリードする若手研究者の育成に努めておられます。

 また、エネルギー理工学研究所においては、平成10年度には10年計画で、韓国ソウル大学と共同で、日本学術振興会の日韓拠点大学方式学術交流事業を実施し、毎年300人近いエネルギー関連分野の日韓の研究者交流、共同研究を主宰すると共に、平成15年11月には21COEバンコクオフィスや、タイ国 ラジャマンガラ工科大学内に共同研究施設を設けるなど、海外との協力事業でも積極的な事業展開を推進しております。

 さらに、エネルギーにかかわる国の大型研究事業にも積極的に参画され、既に多くのプログラムを受託、実施されており、多くの成果を出しておられます。また最近新たに大きな文部科学省の受託事業を実施されるなど、エネルギー理工学研究所はこの10年の間で基盤分野としてのエネルギー分野で大きな実績を挙げ、エネルギー研究拠点として国際的に知らております。

 エネルギーと環境の問題の解決は、人類の持続的な発展に最も重要な課題であります。今後とも、エネルギー科学研究科とエネルギー理工学研究所が、お互いに密接に協力しながら、教育と研究の活動を通して益々ご活躍になり、国際社会に大きく貢献していただくことを心より期待して、挨拶の言葉といたします。

 10周年の記念、おめでとうございます。

 ありがとうございました。

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