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名誉教授称号授与式 挨拶 (2006年4月5日)

尾池 和夫

 本日、57名の方々に名誉教授の称号を授与しました。ご列席の理事、副学長、部局長とともにお祝い申し上げます。私の以前つとめていた理学研究科の先生方16名にも授与して、皆さま私よりも若い方々で、ふと寂しい気もいたします。中には教授の人事にあたって私自身がかかわった方々がたくさんおられるのが懐かしく、また、期待に応えて大いにご活躍いただいたことへの深い感謝の念もあり、一段と感慨深いものがあります。研究科長のとき、副学長のとき、あるいは最近、大学運営にきびしいご意見を賜った方々もおられ、ずいぶん励まされた思いがいたします。

 水崎 隆雄(みずさき たかお)博士は、超低温における量子凝縮系の研究という題で最終講義をなさいました。また、3月31日に低温物質科学研究センターの「ダークマター・アクシオン探索実験棟」の完成のお祝いに出席しましたが、そのセンター長として、実験棟の実現までにたいへんなご努力をしてくださいました。そして、寒剤の供給システムで多くの研究者たちがお世話になっています。

 私がいた地球惑星科学専攻の先生方もたくさん退職されます。

 地球惑星科学専攻 竹本 修三(たけもと しゅうぞう)博士は、測地学の教育と研究、とくに地球潮汐・地球内部ダイナミクスの研究を行い、日本測地学会の会長をつとめられました。かつて京都帝国大学の志田 順(しだ とし)教授は、「Shida number」という地球潮汐に関する学術用語を残した方ですが、竹本さんは日本の大学でも他に類のないそのような測地学の学問分野を次いで発展させた教授でした。

 同じく、活断層、第四紀地殻運動などを研究する岡田 篤正(おかだ あつまさ)博士は、フィールドワークで世界の活断層を知っている学者です。私も多くのことを教えていただき、近畿地域の多くの自治体の活断層調査委員会で、私も一緒に仕事をさせていただきました。

 同じく木田 秀次(きだ ひでじ)博士は、気象や気候の数値シミュレーションの分野でご活躍になり、大気・水圏・土壌・植生の物質循環システムを論じておられます。これから、とくに京都盆地の気候変動などを詳しく議論してみたいと、先日お目にかかったときに言っておられたので、たいへん楽しみにしています。

 同専攻の瀬戸口 烈司(せとぐち たけし)博士は、博物館長としてもご活躍いただきました。極東アジアにおける中生代哺乳類に関する古生物学的研究と題して最終講義をされました。

 米井 脩治(よねい しゅうじ)博士は、分野は私と異なって生物科学ですが、同じ建物にいてよくお目にかかり、お話しをうかがう機会があり、また、京都に大地震は、と聞かれて、可能性が高いですよと答える場面もありました。

 黒河 宏企(くろかわ ひろき)博士も分野はちがいますが、附属天文台の台長の時、たびたびお目にかかりました。天文台の写真を持って来られて、建物の建て替えと設備の更新を熱心に訴えられました。飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡は、太陽表面の活動を精密に観測する、世界第一級の高い分解能をもつ最先端の望遠鏡として、今、大活躍をしています。黒河さんの課題である太陽表面爆発現象の観測的研究も、私は、京都大学のフィールドワークの伝統を基礎として発展する学問分野だと思っています。

 私の所属していた理学研究科の先生方をご紹介しましたが、その他にも、京都大学にある幅広い分野について、多くのことを思い出します。折にふれて興味深い話を聞かせていただき、貴重な学習をさせていただきました。今、私は入学してくる学生たちに、進路を定めて入ってきた学生にも、まだ進路が決まっていなくても、どんな分野を選んでも、京都大学では必ず、おもしろくてたまらないという学問の分野が待っていると、確信を持って言うことができます。これも皆さまの築いてこられた知の蓄積があればこそと思っています。

 法人化前後を含めて、この激動の時期と言われる時にも、京都大学をしっかりと支えてくださって本当にありがとうございました。皆さまのご努力を今後の京都大学に活かすよう、さらなる努力を私の続けてまいります。今後とも、ますますお元気でご活躍くださり、後進にご指導を賜りますようお願いして、お祝いの挨拶といたします。

 名誉教授の称号、まことにおめでとうございます。

名誉教授称号授与式の会場の隣では新入生の健康診断が行われていました。


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