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退職者懇談会 挨拶 (2006年3月28日)

尾池 和夫

 昨年から戦後60年の行事がいろいろありました。ご定年を迎えられた方の多くが、1945年から1946年、昭和20年から21年、戦後の生まれの方々であります。その間、戦後まもなくの新制大学制度の導入と、2年前の法人化という大学の2度の大変革を経て、今日の京都大学があります。

 皆さまのお陰で、この4月からは、京都大学の教育と研究と医療を、効率よく推進し、支援することを目差して、事務体制が大きく変わることになり、本部棟でも今、大移動の作業が連日行われています。京都大学はずいぶん順調に新しい制度を導入し、仕事を進めることができたと思っています。教育と研究と医療を支える職員の皆さんの働きがあってこその進展であります。

 今日、この懇談会には、合計98名をお招きしました。うちご定年でのご退職者は51名です。その中には、事務員、事務補佐員、図書系職員、病理細菌技術者、診療放射線技師、看護師、医療技術補助員、薬剤師、技術職員、林業作業員、実験助手、労務補佐員、電工など、職種の数を数えていてわからなくなって申し訳ないのですが、本当にたくさんの種類の仕事が大学にあることがわかります。

 林 英夫さんは、京都大学フィールド科学教育研究センターの芦生研究林に勤務する管理技術班長です。芦生研究林で、推定樹齢200年から300年のミズナラの巨木が、相次いで枯れているとき、シイタケ菌を木に入れるなどして防除に努めているということが、新聞に紹介されたりしてご存じの方も多いことでしょう。林さんは、2003年、全国大学演習林協議会の第5回森林管理技術賞を受けた方です。その受賞理由には、「教育研究の基盤整備である林道網の計画・設計・施行維持管理に永年携わり」から始まる功績が描かれ、「技術を活かし学生実習や研修会の指導的役割を担っている」とあり、さらに「技術系職員の範となる」とされています。

 フィールド科学教育研究センターには、教職員の中に多くの技術職員がおられます。センターの和歌山研究林では、林学の学生や研究者とともに森林の手入れをする技術職員の松場 輝信さんがおられます。技術職員としての仕事が有形無形の京都大学の知財を生み出しているのはもちろんですが、松場さん自身が研究報告書の共著者となった論文があるだけでなく、多くの研究者たちの論文の謝辞にも、松場さんの名が登場し、その存在の大きさが京都大学の歴史に残る形で記録されているのです。

 言うまでもなく京都大学はフィールドワークを得意とする大学であり、それは京都大学の世界に誇ることのできる特長の1つですが、それを支えるのが、多くの技術職員であることを思い、貴重な技術を持つ職員の皆さんが、このように退職して行かれることも、無事定年を迎えられたお祝いも申し上げるとともに、技術の継承ということが大学の大きな課題であるということも、あらためて思い起こさせるものです。

 辻井 常男さんは、宇治の工学部附属電離層研究施設の技術員からお仕事を始められ、教務職員となり、事務官となって活躍され、今は、桂キャンパスで工学研究科教務課Aクラスター事務区教務掛長というお仕事です。さまざまのお仕事を経験された京都大学の生き字引のようなエキスパートです。

 廣井 利正さんは園丁さんで、いつも本部棟から学生部の周辺をきれいに手入れしてくださっていました。

 また、工学研究科の菊田 岬さんは40数年前、私が助手だったとき、同じ研究室に勤務されました。それ以来のお付き合いであります。

 たくさんの職種がありますが、その一例を紹介させていただいて、皆さまのご苦労への感謝の気持ちの代表とさせていただきたく存じます。京都大学のために長い間ご努力下さったことに深く感謝申し上げます。そしてまた、次の多様な人生を、お元気で楽しんでいただきたく思います。京都大学は皆さんにとって、単なる職場ではなく、それ以上にきっと愛着を持つ大学であったことと思います。この京都大学を自分が育てたという思いで、また皆さんの母校だという思いで、いつまでも見守っていただきたいと思います。

 お世話になった皆さまに、京都大学を代表して心からお礼を申しあげます。

 どうもありがとうございました。

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