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医療技術短期大学部 卒業式 式辞 (2005年3月17日)

尾池 和夫

 京都大学医療技術短期大学部を卒業される看護学科82名、衛生技術学科42名、理学療法学科20名、作業療法学科14名、計158名の皆さん、また専攻科助産学特別専攻を修了される20名の皆さん、おめでとうございます。ご列席のご来賓、教職員とともに、またご家族とともに、心から皆さんの門出を祝福したいと思います。今日の皆さんで、卒業生は累計3830名、専攻科修了生が累計578名になりました。

 2004年4月1日に国立大学法人京都大学が置かれ、その法人によって、医療技術短期大学部が、京都大学と並んで設置されました。その新しい制度のもとに、今日、初めての卒業生、修了生を社会に送り出すことになりました。

 皆さんの輝かしい笑顔を拝見していて、これから社会に出て、力一杯活躍しようという心意気が伝わってきます。皆さんがこの学舎で今日まで学習を深めてこられた、その成果がいよいよ役立つときが来ました。その日を迎えたということを記念して、心からお祝い申し上げます。


 この医療技術短期大学部は、1975年(昭和50年)に設置され、今年で30年ですが、その前史は100年以上の昔にまで遡ります。1899年(明治32年)、京都帝国大学医科大学看護婦見習講習科が開講して、その歴史が始まったのです。医科大学と附属病院が開設されて看護婦を養成する必要ができました。そのとき、学生は入学と同時に各病棟に配属され、日給をもらって勤務しながら講義を受けたそうです。実技の学習は、看護婦服務心得に基づいて、看護婦の規則がそのまま学生に適用されているものでした。それ以来、医学部と病院とともに、さまざまな変遷を経験してきました。

 昨年4月、京都大学には医学部保健学科がスタートしました。その第1期生からは、すでにさまざまな声が寄せられており、教育者としてうれしい声があります。例えば、先生方が身近に感じられることに驚いたとか、学生のやる気に応えてくださる先生方がたくさんいるとか、将来の自分の選択肢が非常に広いと感じたとか、たくさんの先輩と知り合いになれたとか、さまざまな表現から有意義な学園生活が始まっていることがわかります。

 これは、ひとえに、この医療技術短期大学部での長年の教育と研究の積み重ねが、多くの先達によって行われ、皆さんの先輩たちが社会ですばらしい活躍を続けてきて、その伝統が活きているからこそ、新しい制度のスタートと同時に聞こえてくる声であろうと思います。皆さんも、ぜひ、その輝かしい伝統を、さらに発展させるよう、社会に出て活躍してほしいと思います。

 日本の医学のレベルは高く、医療の水準も世界のトップレベルに位置づけることができると言えるでしょう。医学の進歩は、人類に希望を与え、多くの人々の関心の焦点となるものです。そして先端医療や生命倫理など、さまざまな課題を人類に与え、考えさせるものでもあります。

 人類の幸福を目的とするのは、すべての学問に与えられた使命でありますが、医療の分野は、中でも人々の目に見えやすい分野であり、人の幸せを目ざして進歩していく分野です。その医療の分野で仕事をされる皆さんの役目は、直接的に人のために尽くすという、崇高な体験をしていると感じ取ることのできる分野でもあるのです。医療人を志して入学し、学習を積み重ねた皆さんの活躍の世界は、大変幅の広いものであり、新しい医療技術の先端を担うエキスパートとしての誇りのもとに、資質高く養成された人材として活躍できる場であります。

 また、昨年のように大災害が続いたときには、普段の勤務の場所から離れて駆けつけるというような場面もあるでしょうし、遠い国であっても、その災害の現場で活躍するというような機会もあることでしょう。


 今までの皆さんの学習は、一般的な学問体系の中で整理された教育システムを生かして行われてきました。社会に出て、これからの皆さんの活躍する場では、患者という個別の人が対象となる現場であります。それは際限なく多様な世界であり、あるときには、どう対処していいのかわからなくなる場面も出てくることと思います。そのようなときにも沈着冷静に、知識を最大限に動員して正しい判断をするように日頃から準備し、心がけてほしいと思います。皆さん一人ひとりが対応する患者さんたちは、それぞれ多様な一人ひとりの人格であるということを、毎日思い起こしながら精いっぱいの活躍をしていただきたいと思います。

 皆さんが、意欲に満ちた専門職として、医療の現場で活躍されることを期待し、社会のいろいろな場所で活躍されることを祈って、私のお祝いといたします。

 おめでとうございます。

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