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2005年仕事始め 挨拶 (2005年1月4日)

尾池 和夫

 みなさん、明けましておめでとうございます。

 初めての「仕事始め」の行事です。昨年末は仕事納めの行事も行わずに年末を迎えました。多くの方々は正味6日間の休養をとって、しっかり心身の充電をされたことと思います。年越しに除夜の鐘を撞く機会を持った方もいるかもしれません。あるいは鐘の音を故郷で聞いた方もおられることでしょう。

 新年にあたり、いろいろ考えることもありますが、その中から選んで3つのことをみなさんに話したいと思います。

 第1は歴史のことです。1897年に設置された京都大学の歴史は、2005年の今年、108年目に入ることになります。除夜の鐘が取り去るという108の煩悩と同じ数字だと思いながら、鐘の音を聞いておりました。108年というと長いようでもありますが、京都の老舗の歴史にくらべれば、あるいは世界の有名な大学の歴史に比べると、まだまだ短いとも言えます。

 このような歴史を考えながら、昨年、ようやく京都大学同窓会準備室を設置しました。今まで、学部ごとに、あるいは教室ごとに、またゼミごとに、多くの同窓会が置かれているのですが、それらのゆるやかな連携組織を作って行きたいと考えています。皆様のご協力をお願いしたいと思います。今年も、課外活動のクラブなどで100周年を祝うところがいくつかあるかもしれません。例えば、硬式庭球部が100周年のお祝いをすると聞いています。これらの同窓会も、また元教職員の同窓会もできるように連携していきたいと思います。

 2番目に、今年は男女共同参画社会をテーマにして私自身が学習したいと思っています。京都大学では、このような取り組みがまだ遅れているように思います。例えば、京都大学の教職員や学生のために、保育所を増やす必要はないだろうかと考えてみます。学生や院生以外も利用できる「地域開放型」で、社会人学生のための福利厚生の充実が必要ではないでしょうか。生涯学習を課題とする以上、この問題を並行して考えることが必要だと思います。

 社会人が大学院に入る傾向が強くなると、働いている夫婦の一方が大学院に行く事になるでしょう。そのとき保育所が必要になります。もちろん零歳児も受け入れ、保育時間を長くし、預ける側が保育時間の長さを決めることができるというような工夫も必要になるでしょう。

 このようなテーマで学習するための情報を、あるいは考え方をぜひ私に提供していただきたいとお願いします。


 3番目は、昨年7月20日に定めた京都大学の教職員像のことです。「京都大学の教職員は、京都大学の基本理念の下に、その将来像の実現にむけて、教育、研究、支援業務、大学・部局の運営のそれぞれにおいて自らの使命を自覚し、その職責の遂行に全力を尽くす」と始まっています。 これを一年の仕事始めの今日、席に戻ってもう一度よく読んでみてほしいと思います。

 その最後は、「教育・研究を支援し、大学・部局を運営していく業務は、その持続的発展のために極めて重要である。教職員は、大学が社会的存在であることを認識し、高次の専門的能力と総合的視野をもってその職責を全うできるよう常に自己研鑽に努め、教育・研究基盤の充実、大学・部局の円滑な運営と発展に寄与する」とされています。みなさん一人ひとりがその仕事を完璧にこなしていくためには、その仕事に必要な能力を身につけていなければなりません。そのための自己研鑽であります。

 高次の専門的能力を持つということは、みなさんの一人一人が私よりもよくできるということ意味します。仕事のことで、私に教えてくれなければなりません。私になるほどと思わせることが必要であります。みなさんの仕事からの提案を私は勉強し、みなさんの出す情報から私は正しく京都大学や社会の将来を読みとります。それが間違っていてはもちろん困りますし、単にインターネットのページから検索できるものであっても困るわけです。情報は生産する仕組み、伝える仕組み、蓄積する仕組み、検索利用する仕組みと受け取る人の理解力があって初めて意味をなすものであり、みなさんの仕事はそのような仕組みを受け持っているのです。

 私は昨年の4月1日、法人化にあたって職員のみなさんに、失敗をおそれない職員であってほしいということ、よく考えて信じるところを実行してほしいということ、アイディアを積極的に役員へ伝えてほしいということなどをお願いしました。そしてそれをすぐ実行してくださった職員がいました。たいへんうれしく思いました。

 その一方、昨年は途中で非公務員となって、いささか戸惑った方もいたようです。その戸惑いが実はたいへん重要なことであります。京都大学の自治はますます強化され、国からの交付金をもとにしながら、大学の意志によってさまざまなことができる制度になりました。戸惑いながら今までのしがらみに捕らわれずに仕事をしてほしいと思います。

 一部ではあるでしょうが、法人化しても国家公務員精神を失うことなく、今までと同じように、担当の理事に話す前に文部科学省の担当者に相談するという事例が見られたことも事実であり、それに関してはいささか私は残念に思います。今年はそのようなことのない一年であってほしいと思いながら、みなさんの仕事をしっかりと見守って行きたいと思っています。

 また、新しい一年が始まりましたが、今年は正味一年が国立大学法人として運営する初めての一年になります。私は法人化してからの1年半をまず立ち上がりの期間と想定して、役員の任期を最初だけ1年半に設定しました。今年の9月末でその1年半が参ります。なるべく早くその次の段階の見通しをつけてスムーズに次の期間へつないでいきたいと考えています。

 今年も、まずはみなさん方がご自分の体をいたわって、健康な一年を過ごすことに心がけていただきたいと思います。その上で、力一杯仕事をする、そういう一年であってほしいと願いつつ、私の新年の挨拶といたします。

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