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2005年新年名刺交換会 挨拶 (2005年1月4日)

尾池 和夫

 みなさん、明けましておめでとうございます。

 今年の初詣は、茨城県鹿島の鹿島神宮へ行ってきました。境内の要石が、しっかりと鯰の頭を押さえているかを確認するのが目的でありました。

 京都大学の基本理念には、地球社会の調和ある共存に貢献するということばがあります。私にとって自然と人のことを考える年末年始でした。地球科学の研究者にとっては、地球に大きな現象が起こるたびに「なるほど」と教えられることばかりです。思いもよらないというような現象はあまり起こることはありません。しかし、世界の多くの市民にとっては、思いもよらない現象が起こるのです。そこに科学者と市民の知識の大きな差があります。


 地球のことを知るのは大学での研究であり、市民に知識を伝えるのは教育です。研究は進んでいても、その成果が市民に伝わらなければなりません。
 大学で仕事する研究者自身の著作活動、講演会やテレビ番組企画への協力なども重要なことであると思います。ただ、市民にわかりやすく話をするということは、かなり訓練をしないとたやすくできることではありません。

 大学が行う組織的なものとしては、広報活動への定常的な財政的、人的投資が必要であります。ホームページや広報誌などでの情報の発信もあり、講演会や展示会、博物館など、市民に開放された場を通じて行う活動もあります。

 京都大学ではシニアキャンパスという名で、社会人をキャンパスの中に受け入れてみたり、高校生のためのオープンキャンパスや体験授業、出前講義などを試みてきました。また本年は、オープンコースウェアと呼んで、京都大学の講義を世界の人に公開することを考えています。また、ジュニアキャンパスと呼んで、中学生に学問をきちんと講義するという計画も持っています。今日は元教員の先生方がたくさんお見えになっておられます。このような活動の中で、元教員であった方々にもぜひご協力をお願いしたいと思います。

 京都大学オープンコースウェアのWebサイト(外部リンク)

 自然に対して人工の典型は法律であると思います。自然の現象は納得できるのですが、法律はなかなか分からないことがあります。昨年、もっとも私が分からなかったのは国立大学法人法という法律でした。国会審議で多くの付帯決議もあったのですが、始まってみると毎年予算が減らされるし、病院の経費は2パーセントずつ減らされる。それで第1期の間は動かさないと言っていたと思うと、今度は、さらに一番の大きな難問が、平成17年度の予算編成の結果であります。この中で、政府は、授業料の標準額を改訂するとしました。改訂とはすなわち値上げであります。

 私はかねてより、授業料を下げるよう改訂する提案をするのが文部科学省の役目であると述べてきました。今回の改訂は決して容認できることではないと、国大協でも意思表示しました。世界的に見ても飛び抜けて高い授業料で、家庭の教育費の負担が大きく、少子化を招いています。学生たちが安心して学習に励むことのできる環境を守るために、皆様方のご協力をお願いしたいと思います。

 難問がいろいろありますが、ともあれ、新しい年が、皆様方にとって、よい年であることを願って、年始の私の挨拶といたします。ありがとうございました。

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