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第1回堀場雅夫賞授賞式記念パーティーでの祝辞 (2004年10月18日)

尾池 和夫

 何よりもまず、堀場 雅夫さんに、今日の第1回堀場雅夫賞の授賞式を迎えられたお祝いを申しあげます。昨年、株式会社堀場製作所創立50周年を期に、堀場雅夫賞が創設され、もちろんその第1回が「pH計測」の分野で、そして、第1回の受賞をされた3人の方々、陶究(すえ きわむ)さん、杉本 直己(すぎもと なおき)さん、下島 公紀(したしま きみのり)さんが選ばれました。記念すべき第1回に選ばれたことを心からお祝い申し上げます。とくに下島さんのセンサーは、私も南海地震の前兆現象の観測に使いたいと、たいへん興味を持ちました。

 堀場 雅夫さんは私の尊敬する先輩でして、きびしく教えを受ける先輩であります。先日、この祝辞を述べるようにと依頼に来られた副社長さんから、堀場会長の著書を一冊いただきました。昨日、この原稿を書いておりまして、その後でご著書を読み始めて、今朝、212ページまで読みましたら、そこに「スピーチでは原稿を読むな」と書いてありまして、さてはこれが今回のご教示かと、気づいたわけです。

 そこで、原稿をやめて、最近の私自身の生活と、計測というものとの関わりを考えてみることにしまして、あらためて測るということの大切さを思いました。

 先週、14日は上宝観測所の40周年で、地球の動きを測る研究者たちと祝いました。私が40年前に地球の長周期の運動を総延長200mのトンネルを掘って、測り始めたのが、その上宝観測所です。地球の自由振動や、深発地震の長周期波動を、実際にそこで捕らえました。そのときの機器がまだ動いているのだそうです。

 15日、飛騨天文台で、太陽のエネルギーの変化を測る研究者たちと議論しました。太陽の全面画像が、世界で最も高い分解能で得られる天文台です。

 そこで出会った研究者たちは、いずれも物理現象をリアルタイムで測る、しかも「おもしろ、おかしく」測る人たちであります。

 16日、時計台記念館で、イギリス・ロマン派学会の創立30周年の挨拶をしました。そこでは、ロマン派の歴史が始まった頃に水素の発見があったことなどを話しました。1766年、キャベンディッシュによって、pH、水素指数のもとが発見されたのであります。そして、ロマン主義の終わる頃、1834年、ファラデーが、酸、塩基、塩は電解質であることを発見しました。

 そして今日、第1回の堀場雅夫賞授賞式であります。堀場 雅夫さんは、物質の量を、つまり化学的な量をリアルタイムで測る、質の時間変化というか、物理化学の測定方法を開発してきた方であると思っています。

 科学技術が果たす役割がこれまでに比べて多様になってきている状況を踏まえた最近のある調査結果のポイントとして発表された概要によりますと、科学技術への期待は変化して、環境との共生、心の豊かな社会、生活への安心が重要視されているということです。このことからも、堀場さんの考えてきたリアルタイムの測定がますます重要なものとなっていくと私は思います。

 第1回堀場雅夫賞受賞者のみなさまの研究の発展を祈って、昨年創立50周年を迎えた株式会社堀場製作所のますますの発展を祈って、また、大正13(1924)年12月1日生まれの堀場 雅夫さんの、50日ほど早いですが、80歳を祝い、ますますのご活躍とご健筆を祈って、私の第1回堀場雅夫賞祝賀会のお祝いの言葉といたします。
 ありがとうございました。

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