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名誉教授称号授与式 挨拶 (2004年4月5日)

尾池 和夫

 副学長、各部局長、教職員の列席のもと、名誉教授の称号を受けられた皆様に、お祝いを申し上げます。長い間、研究者として、また教育者として、京都大学の教員として、知の蓄積に貢献していただき、また多くの学生たちを育てていただいたことに、京都大学を代表してお礼を申し上げます。

 先日、ある会議の席で、ご高齢の名誉教授の先生から、いろいろときびしいご意見を賜りまして、会議の後、委員の一人に、名誉教授は大変や、と思わず申し上げましたら、「私も5日に称号授与される予定です」と言われ、恐縮しました。
 実は、私も本来ならいただく席に座っているはずでした。理事の中にも、お2人の方が、称号授与された方々の席に座っておられます。

 この授与式に先立ちまして、先日、2月23日には、長尾 真先生に名誉教授の称号を差し上げました。そのことをここであらためてご報告いたしたいと思います。なぜならば、長尾 真先生の業績は、先生の並々ならぬ才能と熱意とご努力によるものでありますが、その上に、今日名誉教授の称号を授与された皆様方のご協力とご理解があってのものでもあると思うからであります。

 長尾先生は、よく日本語の話をされました。日本人は日本語を知っていると思うかもしれないが、日本人でも決してそうでなく、ことばの使い方を間違えます。表現の仕方を調べるために字引をひいても、ほとんど書いてない。計算機は、ことばのあらゆる使い方を網羅的に集めたりすることができて、辞書作りに使うといいと思う、と言っておられました。
 そして、情報の群落と動態、情報同士の競合、情報の消費、情報の力・行動力、情報の地理的・民族的・国家的特徴などという、新しい表現を次つぎとあげらました。そして「情報の生態学」を提唱されました。何が一番印象に残っているかというと、それを語るときの長尾先生の笑顔です。人工知能を語りながら、何とも楽しそうに、にこにこして話されたのです。それが1993年頃の話でした。

 さて、1997年、京都大学は100周年を迎え、お祝いの行事が行われました。その年の12月16日に第23代の総長に就任されました。
 その時からしばらく、公式の行事の時には、あまり笑顔をお見せにならなくなり、いつも慎重に話され、大変細かく気を配っておられるご様子で、大変なお仕事だと、横で感謝しつつ拝見しておりました。
 総長に就任された長尾先生は、実務化の総長と私はいろいろの場面で申し上げたことがありますが、それは、例えば京都大学の教員と学生数の変化の数字に見られます。平成10年度では、それぞれ2809名、20852名だったのが、平成15年度では、それぞれ2906名、21532名というように、確実に増えている、つまり全体として発展しているということでもわかります。

 長尾先生の業績の記録は、皆様の記録でもあります。桂に新キャンパスができました。アジア・アフリカ地域研究研究科、情報学研究科、生命科学研究科、地球環境学堂・学舎などの大学院のコースの創設がありました。また、再生医科学研究所などが生まれ、京都大学の歴史に係る各種の資料の収集、整理、保存、閲覧及び調査研究を行うことを目的とする大学文書館や、京都大学から世界に向けた知の結集・情報発信センターとして国際融合創造センターも設置されました。おかげさまで、今年4月1日には、東南アジア研究所と生存圏研究所が設置されました。
 国際交流にも、遠隔講義がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)との間で開始されるなど、いろいろな成果がありました。

 長尾先生は、総長を退任された後、また、おおやけの場所で、思い切り笑顔を見せられるようになりました。名誉教授の称号授与式のあとでも、この百周年時計台記念館から、にこにこして図書館に向かわれました。

 本日の皆様方の笑顔を拝見していて、法人化直前までの京都大学を発展させてくださったという満足感に満ちているように見えます。法人化という、いつもとはちがって、余分のご苦労をいただいたと思います。ありがとうございました。そのご努力を十分に活かしていくよう、私も努力していこうと思っております。今後とも、後進のご指導を賜りますよう、京都大学をよろしくと願いして、私の挨拶といたします。

 名誉教授になられた皆様、本日はまことにおめでとうございます。

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