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京都大学医療技術短期大学部卒業式・修了式 式辞 (2004年3月17日)

尾池 和夫

 京都大学医療技術短期大学部を卒業される151名のみなさん、また専攻科を修了される20名のみなさんに、心からお祝い申し上げます。ご来賓の方々、ご列席の教職員とともに、またご列席のご家族とともに、祝福いたしたいと思います。

  みなさんが入学してこられたときには、長尾 真先生が入学式の式辞を述べられました。今日ここで、私は、みなさん方のほとんど全員に、おそらくはじめてお目にかかるのではないかと思います。お目にかかるなり、おめでとうと申し上げて、送り出すのですが、それでも、今、こうしてみなさんの輝かしい、晴れ晴れとしたお顔を拝見しておりますと、本当にみなさんが心ゆくまで学習を深めて、今日を迎えたのだと、確信することができます。そして、心からお祝い申し上げます。
みなさんの学んだ京都大学医療技術短期大学部のシンボルマークは、1981年、昭和56年7月に決定されました。ユリノキの2枚の葉で、調和と協調の大切なことを示したものであります。この季節には、ユリノキはまだ、小さな葉を付け始めたばかりですが、みなさんが社会に出て活躍している、5月から6月には、百合に似たたくさんのきれいな花をつけていることでしょう。
明治初年に日本へ渡来したこのユリノキは、成長が早く、庭園などでは高さ20メートルくらいにもなりますが、自生地では樹高は50メートルにも達します。原産地の北アメリカ東部では、もっとも丈が高く、葉の幅がひろい高木であり、高さ60メートル、幹の直径3メートルにもなった記録があります。
今までの十数年の教育課程で大きく育ってきたみなさんが、これから社会に出て、さらに一段と成長し、医療の分野で活躍されることを象徴する、実にたのもしいシンボルであります。

 いうまでもなく、医療という仕事の中で、患者は人として尊ばれ、人権が尊重されるのですが、病気が完全に治ったとしても、治療のプロセスの中で精神的な傷が残ってはいけません。患者の一人ひとりと、みなさん方とは、対等な立場で、患者の治療と健康という目標に向かって行かなければなりません。そのためには、今までの学習に加えて、つねに新しい知識を身につける努力と、自らの心身の健康を守る心がけとが大切となります。そのような研鑽に裏付けられた誠実な仕事があってはじめて、患者との間に信頼関係を築いていくことになるはずであります。

 京都大学医療技術短期大学部は、昭和50年4月22日、京都大学に併設されました。今年、4月1日には、国立大学法人京都大学が、国立大学法人法によって設置され、その法人が、この医療技術短期大学を設置し、現在在学している学生さんたちの教育を続けます。

 短期大学部開設時には、看護学科及び専攻科助産学特別専攻が設けられました。ついで昭和51年、衛生技術学科が設けられました。
また、さらに、昭和57年4月、理学療法学科、作業療法学科が設けられ、今日に至っています。現代社会の急速な発展と変化は、各種の災害や、各種の成人病などによる身体障害者を増加させており、これら障害者を社会生活に復帰させるための技術者を養成するために、これらが設置されました。

 これまでの医療技術短期大学部を改組して、京都大学は昨年10月に、医学部保健学科を設置し、この4月には第1期生を迎えます。医師とともにティーム医療を構成することが必要で、そのためにはすぐれた医療専門職が不可欠であります。また、幅広い知識や、高度な技術を備えて、その上に豊かな人間性を兼ね備えた医療専門職が、社会から大きな期待をもって求められています。
その期待に応えて、看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士などとして活躍する人材が、今後もこのキャンパスから次々と巣立っていくことになります。今日卒業式を迎えた、みなさんの後輩として、その卒業生たちも、医療ティームの中で活躍する人材になることでしょう。この保健学科を母校として、後輩を暖かく見守ってあげてほしいと思います。

 医療技術短期大学部では、みなさんがよく身につけられたように、「健康科学」を提唱して、この分野の確立に努めています。病気を治すことを第一の目標としてきた今までの医療の考え方に対して、病気を経験したり、障害が残ったとしても、豊かな生活を送れるようにすることが重視される社会にならなければなりません。健康科学はそのために提唱されています。人は、脳と体と心を鍛え、その健康をいつまでも保つことによって、はじめて幸福な生活ができるのであります。

 附属病院では、先端医療を進めるとともに、地域と連携した医療やリハビリテーション、女性のための医療など、医療を通して社会に貢献しています。このような環境の中で学習を深めたみなさんが、いよいよその学習の成果を実践する日がやって来ました。元気で意欲にあふれた専門職として、医療の現場で活躍されることを期待しています。

 今日、この式場で、友人や列席の方々に祝福された卒業生や修了生のみなさんが、これから、病院や、リハビリテーションセンター、老人施設、小児施設、教育施設、地方自治体、養護学校、スポーツジム、保健センター、大学、研究所、救急施設、企業など、社会のいろいろな場所で、精一杯の力を発揮して活躍しておられる姿を想像しながら式辞を述べさせていただきました。これを持ってみなさんの門出を祝い、私の餞といたします。

 おめでとうございます。

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