小泉 昭夫 医学研究科教授が、第33回環境賞を受賞

小泉 昭夫 医学研究科教授が、第33回環境賞を受賞

小泉 昭夫 医学研究科教授が、財団法人日立環境財団と日刊工業新聞社が主催する「第33回環境賞」において、優秀賞を受賞しました。

教授は、昭和53年に東北大学医学部卒業し、同年4月より同医学部衛生学教室の助手、昭和58年より米国のミシガン州立大学 Post doctoral research fellow、昭和60年カリフォルニア大学リバーサイド校Assistant Research toxicologistをへて、昭和62年より秋田大学医学部助教授、平成5年同学部教授、平成12年に京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻、健康要因学講座環境衛生学分野教授に就任しました。学外では、日本産業衛生学会評議員、Journal of Occupational Healthの編集委員長、日本衛生学会理事、医師国家試験委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員、環境省経年モニタリング委員、日本学術振興会学術システム研究センター専門員、内閣府食品安全委員会、秋田県労働衛生指導医、などを歴任してきました。

今回の受賞テーマは「環境汚染物質のリスク評価にむけた人体試料バンクの創設」で、東北大学医学部時代からの恩師である池田正之本学名誉教授との共同受賞。1970年代後半から池田名誉教授とともに日本全国から集めた食事と血液サンプルを、池田名誉教授から寄贈を受け、秋田在任中に集めた1980年代の血液と母乳、2003年から全国9大学および4病院の協力を得て集めた血液、母乳、食事サンプルを統合し、延べ3万人以上の方から寄贈を受けた合計 35,738検体をバンク化しました。試料は、京都大学大学院医学研究科および社会健康医学専攻系の理解と支援により設置していただいたサンプルルームに保管されています。国内外に他にヒトの食事、母乳、血液を集めた生体試料バンクはなく、国内外の環境科学の研究者へ貴重なサンプルの提供を加速する予定です。

バンク創設により難分解性汚染物質の地理的・経年的変化を観察することが可能となり、急激に汚染の進行している化学物質に対して迅速に予防原則を発動したり、環境行政施策の事後評価、あるいは大規模な汚染物質の拡散のコンピュータシミュレーションの妥当性の検証などに役立つものと期待されます。また、現在までバンクを用いて、食事中および血液中のPCBsの濃度が1980年代からの10分の1に減少したこと、PBDEs (Polybrominated diphenyl ethers) の日本人での特異的異性体の急激な増加や、難分解性汚染物質の母乳への移行のQSARモデルの確立などを行なってきました。特に、有機フッ素化合物の Perfluorooctane sulfonate (PFOS)と Perfluorooctanoic acid (PFOA) については、曝露評価、毒性評価を行なっており京阪神の住民のPFOA濃度は過去20年で急激に増加し、世界最高レベルであることを証明してきました。

教授らの研究室では、環境と遺伝素因の両面から健康問題に取り組むことを常にこころがけ研究と教育を行なってきました。上記課題以外にも、環境要因が発症に寄与するHartnup病の病態の解明と原因遺伝子の特定を世界に先駆けて行い、また、脳動脈瘤の遺伝素因の解明などを行なってきました。さらには、教授らが開発した糖尿病モデルマウスであるAkita mouseを用いて、食行動に注目し、スタッフ、大学院生とともに日夜奮闘しています。