総長・若手職員座談会

総長・若手職員座談会

法人化から2年。
各国立大学の独自性がますます重要になってきています。
今後京都大学はどうなるのか、そこに勤める職員はどうあるべきなのか、
若手職員が尾池総長に聞いてみました。

京都大学の使命

Aさん:最初に大きな話になるのですが、京都大学の使命についてうかがいたいと思います。

総長:使命はいっぱいありますね。本来、大学は人類の文化を支える場所でありますから、あらゆる人のためにあらゆることができる場所でなくてはなりません。そで、京都大学では地球社会との調和・共存という基本理念を定め、様々なことに取り組んでいます。実際、京都大学には無いものがないほど、さまざまな人がさまざまな場所で仕事をしていますしね。ただ、その内容は多分野に渡り分かりにくい面もあるかもしれませんので、京都大学の使命は教育と研究と医療の三つに取り組み、それを通して世界人類に貢献することとまとめて言っています。

教員と職員の関係

Cさん:大学を運営する場合、「教員も職員も両輪になって」と言われますが、教員に比べて職員の役割は分かりにくいと思います。総長が考える、職員の役割についてお聞かせください。

総長:「両輪になって」というのは、一輪車が倒れやすいと思われているから言われることですが、回っていれば倒れることはありません。私は、教育は一輪車でだけでできると考えています。京都大学には一輪車がいっぱいいるわけです。一輪車に乗るその教員を、なるべく効率よく、京都大学のミッションを意識しながら走らせる仕組みを作るのが職員です。バラバラの方向に行かないように、まとめること。また、修理すること。それが職員の役割です。そういう一輪車を一生懸命に支える場所を作っていくと、京都大学は走りやすいらしいと、ものすごく上手に一輪車に乗る人がきてくれます。一輪車の走りやすい環境を作るのが職員の役割だと思ってみたらどうでしょう。

インターフェイス

Bさん:総長のお言葉で「職員は教員と学生の間をつなぐインターフェイス」という言葉がありますが、私は総務部所属で、教員・学生と接する機会が多くありません。このような場合の教員と学生の間をつなぐインターフェイスとはどのようなものなのでしょうか。

総長:インターフェイスというのは私の地球科学の仕事から出てくる言葉ですが、地球から伝わってくる信号をセンサーに伝えるため、それらの間に設置されるものです。このインターフェイスは大変なもので、測定対象から出た信号を正確にセンサーに伝えられるかどうかが勝負になります。職員にはこのインターフェイスの役割が求められるわけです。大変重要な役割です。ただ、この仕事は一人でできるようなものではないので、組織で対応しているんですね。その中には教員と接することが多くても学生とあまり触れ合わない職員もいるし、それの逆の職員もいる。職員それぞれで分担して役割を果たしているんですね。皆さんもそれの構成員なのです。

Cさん:インターフェイスは幅があるものなのですね。

総長:そうですね。インターフェイスは、いわば座布団のように厚みがあるもので、多くの人で構成されています。直接繋がっていないかもしれませんが、自分で組織を動かしているのです。

環境・安全

Dさん:社会で重要視されている環境・安全に対する京都大学の取り組みをお聞かせください。

総長:大学は学生や先生が安心して研究・教育をしていかなければならない場所ですから、環境・安全という分野はものすごく力を入れてやっていかなければならいことだと思います。安心して働ける場所を作っていくのと、京都を文化遺産・京都議定書の町と見ている世界の人達の思いに応えるのも、私達の仕事です。また、世界に情報を発信して
いくという役目もあります。京都大学は、京都という地域の文化を守っている場所であるという誇りが持てたら、私は良いと思います。

Dさん:では、職員はどのような意識を持って仕事に取り組むべきでしょうか。

総長:例えば、規格などいろいろありますが、国立大学のスタンダードは何なのか、京都大学スタンダードというのを自分達で決めていって欲しい。世界の大学が目標にしてくれる新しい物さしを作れるといいですね。21世紀型の持続可能な社会実現のために、大学はこうでないといけないということを考えてほしいですね。職場の環境・安全を守る本質は何だということを考えながら。飲みに行った時にでも、京都大学ではここは違うとかいう議論をしながら、酒が飲めるような仕事の仕方をしてほしいと思います。

病院の役割

Bさん:京都大学の使命の部分で、医療という言葉が出てきました。京都大学病院の役割はどのようなものでしょうか?

総長:大学病院の役割は本当の健康や死は何だということを考える社会を作ることや、実際に病気を治療すること、更に、治癒した人がうまく仕事をすることができるように支援していくことです。つまり、人間の体に関するトータルな役目が大学病院の役目で、それを医学研究科、薬学研究科、工学研究科、再生医科学研究所などが支えているんですね。また、これらをもって地域社会に貢献することも役割の一つなのですが、この成果を蓄積することによって同時にグローバルにも貢献することができます。

Dさん:京都には他にも病院がありますが、そことの関係はどのようになっているんでしょうか。

総長:京都にあるということで、周囲にはいろいろ大きい病院があります。東京のような一極集中ではなく、近畿全体にたくさんあります。そこには競争もありますが連携もあり、これをいかに利用していくかというのも重要なんですね。将来的には周囲の大学と連携し、職員が病院に特化して職場を異動できるような仕組みを作っていきたいと考えています。

京都大学職員を目指す方々へ

Aさん:最後に京都大学を志望される方に、一言、メッセージをお願いします。

総長:京都大学は働きがいのある職場なので、志望されるのであれば、よく本を読んでものすごい量を勉強してきてください。これの一言です。何をやっていないかを探すのが本当に難しいくらいいろんな事をしていますから、その中で仕事していこうと思ったら何でもよく知ってないといけないので、広く浅くではなく、広い分野を深くですね。京都大学の先生はたくさん本を書いていますから、京都大学の先生の本をまず読んできてください。少なくともどんな人が、どういう研究をしているかなど、職場の人がしていることを知ったうえで来てほしいですね。

座談会メンバー

尾池 和夫

第24代京都大学総長
尾池 和夫 第24代京都大学総長
1940年生まれ。地震学専攻。
1963年京都大学理学部卒,1972年理学博士。
1973年京都大学防災研究所助教授。
1988年理学部教授。評議員、理学研究科長、副学長を歴任。
2003年12月に京都大学総長に就任し現在に至る。
日本地震列島(朝日新聞社)、活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、図解雑学・地震(ナツメ社)、続俳景―洛中洛外・地球科学と俳句の風景(宝塚出版)ほか著書多数。

Aさん

企画部企画課大学評価掛
平成16年10月採用
業務内容:自己点検・評価、認証評価機関による第三者評価、国立大学法人評価委員会が行う評価への対応、大学評価支援室に関する業務、その他本学の点検・評価に関する連絡調整等。

Bさん

総務部総務課法規企画掛
平成16年10月採用
業務内容:教育研究組織、事務組織の設置改廃手続きや学内規定の制定改廃に関する事務、または事務の合理

Cさん

研究・国際部研究協力課国際企画掛
平成16年10月採用
業務内容:国際交流関係委員会のサポート、職員の海外渡航に関する事務、また海外の教育研究機関との連絡調整等。

Dさん

施設・環境部環境安全課環境技術掛
平成17年1月採用
業務内容:環境・安全・衛生に関する法への対応、環境に対する取り組み、委員会の運営、環境報告書の作成、安全衛生教育関連の講習会の実施等。