京都大学を中心として結成された「トイレの未来を考える会」が日本水大賞(グランプリ)を受賞しました。(2012年4月5日)

京都大学を中心として結成された「トイレの未来を考える会」が日本水大賞(グランプリ)を受賞しました。(2012年4月5日)


ポータブル型無水し尿分離トイレの福祉施設でのデモンストレーション

 水に関わる活動を表彰する「日本水大賞」の今年度受賞者に、本学を中心として結成された「トイレの未来を考える会(代表:清水芳久 工学研究科教授)」が選ばれました。し尿を分離して処理出来る簡易無水型の組立式トイレを開発し、東日本大震災の被災地に導入した活動が評価されました。

 「トイレの未来を考える会」は、し尿を分離して処理するこれまで発展途上国で蓄積してきた研究成果を利用して、小林広英 地球環境学堂准教授、原田英典 同助教、藤枝絢子 同助教、松田知成 工学研究科准教授、平山修久 同准教授らの計13名の有志が集い、東日本大震災直後から活動を始めました。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方・関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらしました。家屋への被害は、全壊・半壊を合わせて24万戸を超え、停電世帯は800万戸、断水世帯は180万戸に上りました。ピーク時の避難者数は40万人を超え、2,000箇所以上の避難所が開設されました。水、食糧、医薬品、毛布、衣類などの緊急支援物資が全国から届けられましたが、トイレについては、十分な備えがなく、また必ずしも優先的には対応されず、従来の水洗トイレが使用できなくなったことで、多くの人々が劣悪で非衛生的な環境での排泄を余儀なくされ、被災者にとって大きな問題でした。

 同会では、このような東日本大震災後のトイレ環境の救済のために、上水道や下水道システムの完全復旧までに、床上にそのまま設置して利用できるばかりではなく、避難所や仮設住宅等を含めた既設の洋式・和式トイレ便座の上に容易に設置できるもので、周辺環境への影響を軽減できるような、自立型の無水し尿分離トイレユニットの開発と被災地への導入を実施しました。

 開発に際して、市販の簡易トイレの状況を調査した結果、いずれも排泄したし尿を凝固剤等で固めて処分するもので、これでは日々蓄積する廃棄物の処理が必要となり、被災地に更なる負担をかけてしまうことが懸念されました。し尿を簡易に分離し、病原菌を含まない尿は汚染物質(窒素・リン)を沈殿除去後に放流・土壌浸透し、便には消石灰と籾殻炭の混合物を添加しアルカリ化・乾燥化によって衛生処理を実現することが可能なものとなりました。

 なお、今回の日本水大賞(グランプリ)は、日本水大賞委員会(名誉総裁:秋篠宮文仁 親王殿下、委員長:毛利衛 日本科学未来館長)により176件の応募から選考されました。