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山中伸弥 iPS細胞研究センター長がラスカー賞を受賞 (2009年9月14日)

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山中教授の受賞理由と、同教授・松本総長のコメントなど

 アルバート・アンド・メアリー・ラスカー財団(米国ニューヨーク市)は、2009年9月13日、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells: iPS細胞)の樹立に世界で初めて成功した山中伸弥 物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長(同再生医科学研究所再生誘導研究分野教授)にアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を贈ると発表しました。

 ラスカー賞は「アメリカのノーベル賞」とも言われ、世界で権威のある科学賞の一つです。日本人の受賞者としては、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏や昨年のラスカー臨床医学研究賞受賞者である遠藤章氏らに続き6人目になります。山中教授(47才、グラッドストーン研究所の上席研究者兼務)と同時に、ジョン・ガードン卿(76才、ケンブリッジ大学)にもラスカー基礎医学研究賞が贈られます。両教授は、分化した体細胞を未分化な状態に戻すという「細胞核のリプログラミング(初期化)」のプロセスに関して画期的な発見を発表しました。その研究成果により、新たな幹細胞研究のアプローチが示され、難病の病態解明や細胞移植など再生医学の新たな道を拓きました。

 ガードン卿は、1950年代半ば以来、ほぼ全ての体細胞が全遺伝情報を保有することを実証し、カエルの卵子を用いた実験で、分化した細胞を未分化な状態に逆戻りさせ、さらに体の様々な組織に分化することができるという「細胞核のリプロクラミング」研究を切り拓きました。この研究の流れをくみ、1997年にはスコットランドの研究者グループが体細胞の核を除核卵子に移植することによりクローン羊「ドリー」を誕生させました。さらに、2006年には山中教授がマウスの皮膚細胞に4つの遺伝子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入することにより、様々な組織に分化する能力をもった多能性幹細胞-iPS細胞-の樹立に成功したと報告しています。山中教授の方法は受精卵を用いずに細胞核の初期化を可能にする点で画期的でした。ガードン卿と山中教授による研究成果を基にさまざまな細胞核の初期化研究が実施されており、将来、患者さんの体細胞を初期化し、それらから分化誘導された患部の細胞を用いて病態の解明、薬剤の副作用や毒性評価への応用や、将来的には損なわれた組織や臓器を修復する細胞移植への応用が可能になると期待されています。

 ラスカー臨床医学研究賞は、慢性骨髄性白血病の治療薬であるイマチニブ製剤(商品名:グリベック)を開発した功績により、ブライアン・ドラッカー教授(54才、オレゴン健康科学大学)、ニコラス・ライドン博士(52才、前ノバルティス社の研究者)、チャールズ・ソーヤーズ博士(50才、メモリアル・スローン・ケタリング・がんセンター)に贈られます。

 また、ラスカー・パブリック・サービス賞は、米国ニューヨーク市における10代の喫煙率を低減させるなどの政策をとり公衆衛生の推進に努めた功績によりマイケル・ブルームバーグ ニューヨーク市長(67才)に贈られます。

 授賞式は10月2日にニューヨーク市で行われます。

山中伸弥教授のコメント

 「細胞核初期化研究の父であるジョン・ガードン卿とともにラスカー賞を受賞することを大変光栄に思います。iPS細胞技術は、ガードン卿をはじめとする多くの研究者の成果と研究室メンバーの努力により誕生し、世界中の研究者により急速に発展しました。今回の受賞は、これら多くの方々のお陰であります。iPS細胞技術の医学応用を一日でも早く実現できるよう、これからも精一杯努力してまいります。」

松本紘総長のコメント

 「本学山中教授が世界で最も権威ある科学賞の一つである「アルバート・ラスカー賞」を受賞されたという報に接し、京都大学として大変名誉なことと思います。これは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に初めて成功された山中教授への期待の大きさを示すものであり、京都大学としても同教授を中心とする組織や新研究棟の整備を進め、より一層の支援を行っていきたいと考えています。iPS細胞技術が一日も早く実用化され、患者さんの笑顔が見られる日が来ることを願ってやみません。」

ラスカー財団について

 1942年にアルバート・ラスカー、メアリー・ラスカー夫妻によって設立されました。メアリー・ラスカーは医学研究への公的支援の重要性を米国で訴えた最も有力な活動家であり、財団の活動を指揮しました。財団は基礎および臨床医学をリードする科学者や顕著なパブリック・サービスを行った個人にラスカー賞を授与しています。このような活動により、医学研究への支援を提唱し、病気や障害の予防や治療に貢献することを目的としています。

ラスカー賞について

 世界で最も権威のある科学賞の一つで、1946年に授与開始されました。医学研究賞の審査員長は、1985年にラスカー基礎医学研究賞とノーベル生理学・医学賞を受賞したジョゼフ・ゴールドスタイン教授(テキサス大学)です。過去のラスカー賞受賞者は343人です(内訳:141人が基礎医学研究賞、133人が臨床医学研究賞、59人がパブリック―サービス賞、10人が特別功績賞)。このうち76人のラスカー賞受賞者がノーベル賞を受賞しています。なお、過去20年間では、28人がノーベル賞を受賞しました。2009年の受賞者および過去の受賞者に関する情報は、以下のホームページからアクセスできます。

注釈

人工多能性幹細胞(iPS 細胞:induced pluripotent stem cell)

体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界に先駆けてマウス体細胞を用いたiPS細胞の樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

日本人の過去のラスカー賞受賞者

花房秀三郎氏(1982年受賞)、利根川進氏(1987年受賞)、西塚泰美氏(1989年受賞)、増井禎夫氏(1998年受賞)、遠藤章氏(2008年受賞)。
 

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