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石川冬木 生命科学研究科教授が日産科学賞を受賞しました。(2009年6月19日)

 このたび、本学生命科学研究科 石川冬木教授が日産科学賞を受賞しました。同賞は、財団法人日産科学振興財団が、生命科学、理学・工学分野において、地球環境に係わる基礎研究で卓越した研究業績をあげ、さらに発展が期待される研究者を褒章するものであり、今回で16回目を迎え、30人目の授与となります。
  今回の受賞は、石川教授の「細胞老化を規定する染色体テロメアの研究」に関する業績が評価されたものです。
  授賞式は、2009年6月18日に日産自動車株式会社本社で行われました。

研究大要

 あらゆる生物の設計図であるDNAは、ヌクレオチドと呼ばれる基本単位が長く線状に結合してできた化学物質です。細胞が分裂するとき、DNA合成酵素によって、1本のDNAは2本にコピーされ、その1本ずつが分裂によってできたそれぞれの娘細胞に受け渡されることで、設計図が子孫に伝わることが保証されています。DNAの2重らせん構造を発見したことで著名なワトソン博士は、1970年代初頭までに、DNA合成酵素の反応機構が明らかにされたことを受け、1972年にDNA合成酵素は線状DNAの最末端を完全にはコピーできないことを予想しました。この予想は、「末端複製問題」として知られ、その後実際に細胞内で起きていることが証明されました。すなわち、細胞分裂においてDNAがコピーされるたびに、DNAはテロメアと呼ばれる末端部分から短小化するのです。DNAの短小化は、細胞が老化する原因のひとつです。細胞が分裂を繰り返し、DNAがある長さにまで短小化すると、細胞分裂が停止し細胞は寿命を迎えます。
  生物界はヒトを含む真核生物と、大腸菌のようなバクテリアなどの原核生物に2分されます。全ての真核生物は線状DNAをもち、細胞分裂のたびに「末端複製問題」によってテロメアDNAは次第に短小化し、この短小化を代償する特殊な仕組みを必要とします。一方、原核生物は両端が閉じた環状DNAをもつために、「末端複製問題」がおこらず、分裂によってDNAが失われることはありません。真核生物と原核生物が、なぜこのように異なる形状のDNAをもつのかは不明でした。

 石川教授は世界ではじめて、環状DNAをもつ真核生物の作成に成功し、そのような真核生物は有性生殖をすることができないことを発見しました。有性生殖は真核生物にのみ見られる現象であり、原核生物には存在しません。また、有性生殖は遺伝子の組換えをもたらすことで、それぞれの個体が少しずつ異なる多様性のある遺伝子を持ち、生物に複雑さを与えると考えられています。このことから、石川教授は、真核生物は、「末端複製問題」によって、細胞が老化する運命を引き受ける一方、有性生殖によって複雑な機能をもつ体制を作る道を選んだという結論に達しました。このことは、真核生物と原核生物という生物界を2分する生物が異なる形状のDNAを持つことで、全く異なる進化を遂げたことを意味します。
  以上の業績の他、石川教授は末端複製問題を解決する方法のひとつであるテロメラーゼという酵素の基礎研究に関する数々の先駆的な研究活動を行い、世界的に高く評価されております。これらの研究成果は、細胞の癌化や老化の予防・治療に役立つことが期待されます。

業績の要約

 環状DNAをもつ酵母の作成に成功し、生物が多様の種に進化した理由を解明しました。また、テロメアの研究により、細胞が老化するしくみ、癌細胞が増殖するしくみを解明しました。

  1. 環状DNAをもつ酵母(真核生物)の作成に成功し、それは、有性生殖が出来ないことを発見しました。真核生物は線状DNAをもつおかげで、末端部分のテロメアが細胞老化を引き起こすという側面はありますが、有性生殖を行うことができるので、生物の多様化につなげることができたと言うことができます。
  2. テロメアの短小化を解決するテロメラーゼ活性をヒト細胞で検出することに成功しました。また、正常細胞ではテロメラーゼ活性がなく細胞が老化するのに対して、癌細胞で高い活性をもち無限に増殖できるようになる仕組みを明らかにしました。
  3. テロメアを構成する因子を明らかにすることに成功しました。

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