日米研究インスティテュートの設立について(2009年2月23日)

日米研究インスティテュートの設立について(2009年2月23日)

 京都大学、慶應義塾大学、東京大学、立命館大学、早稲田大学の5大学は共同で、ワシントンD.C. に米国NPO「日米研究インスティテュート」を設立します。

 国際社会の構造的変化の中、日米両国は様々な課題に直面しています。こうしたグローバルな問題を解決するため、「日米研究インスティテュート」は、学術的な研究基盤に立ちながら、現実的なニーズに応える研究を発信します。また、世界の研究者との共同研究を通じ、新しい時代の要請にこたえる日米の若手研究者(ポスドク含む)を育成していきます。

 アメリカにおいて政策論争と政策情報の中心であるワシントンD.C.において、独立した視点から、日米の大学の研究ネットワークを駆使し、日米の大学、実業界からの人材をフルに活用した研究活動を行い、従来にない具体的な成果を挙げていきます。

設立場所

米国ワシントンD.C.

設立時期

2009年4月(予定)、設置後免税措置のできるNPOへ申請

設立目的

  • 学術的研究を基礎に実践的政策分析を展開
  • 次代の日米間の諸問題を解決する人材の育成
  • 日米問題に提言できるコミュニティの形成

組織体制

理事会: 基本方針、事業計画と事業報告の承認・監査、運営に必要な資金の調達
運営委員会: 事業計画の策定と、研究事業・人材育成、事業の具体的な企画・運営
研究グループ: 日米の大学・企業等からの派遣・訪問研究員
事務局: 広報、財務、賛助法人・個人の受入、研究助成金・受託研究の受入、寄付事務、情報発信、研究サポート 等

研究活動

  • 運営委員会は理事会が策定した事業計画にしたがい、研究テーマ、メンバーを選定し、研究グループを構成します。
  • 各研究グループは、グループリーダーをはじめとするそれぞれの研究テーマのスペシャリスト数名で構成されます。また、日本または米国の若手研究者(ポスドク)を採用します。
  • 研究グループは本研究所(ワシントンD.C..)を拠点に、日米双方の研究員を中心に研究活動を行い、定期的にワークショップ、シンポジウムを開催します。
  • 当インスティテュートは、研究グループの研究成果を、ニューズレター、HP、年間報告書などにより、日米における政府の政策決定者および企業リーダーに発信していきます。
  • 研究成果は、日本語・英語の双方で作成します。

米国大学との連携

ワシントンD.C.のジョージワシントン大学、ジョージタウン大学の他、ハーバード大学、エール大学、コロンビア大学などの米国トップクラスの大学との共同研究、研究員の交流などを通じて、より高度な研究と人材の育成を行います。

具体的な研究テーマ例

金融のグローバル化と世界経済変動における日米の果たす役割

 米国のサブプライムローン問題に端を発して、世界経済は金融収縮を起こし、米国、EU、日本の先進経済を始め、これまで顕著な成長が見られた新興経済も成長が減速している。日米政府、金融当局、実業界の果たすべき短期的、長期的な役割と政策の効果について議論し、具体的な方策を提言する。

日米代替エネルギー政策と世界経済

 エネルギー価格の上昇とあいまって、農産物市場における需給の逼迫は、農産物・食料品価格を上昇させ、先進国においては家計部門の厚生を低下させ、途上国においては最貧層のただでも低い生活の質をさらに低下させている。 この状況下で、今後とるべき日米の代替エネルギー政策のあり方を議論し、具体的な方策を提言する。

日米中関係を見すえた外交政策

 これからの日本外交は、米国と中国との関係を抜きにしてはあり得ない。日米、日中、米中関係がどのようなメカニズムで動いているのかを分析し、それぞれの関係の中で日本の利益が守られ、増進する外交政策の立案が可能になる。

多極化する競争環境と日米企業のグローバル連携

 20世紀が日米欧の3極市場におけるテクノロジーとファイナンスの力学に立脚した時代であったのに対して、21世紀はBRICsなど新興市場が台頭する結果、多極化していく。と同時に、グローバル競争の主役も製品ビジネスからサービス・ビジネスへとシフトしていく。そうしたまったく新たな戦略的対応を必要とする21世紀型ビジネス環境における日米企業のグローバル連携のあり方について提言する。

気候変動問題の解決に向けた日米の取組み

 米国における新政権は、温暖化ガスの排出量を削減する中期目標を設定すると表明した。その数値を実現するための具体的な政策の効果と世界経済・社会への影響について検討し、日米間で可能な協力内容を具体的に提言する。

パンデミックを閉じこめる国際制度の構築

 鳥ウィルスと人ウィルスの混合型の新型ウィルスが発生すれば、世界中の各国政府首脳が協調して、その発生した新型ウィルスを閉じこめる必要が出てくる。その場合には、各国政府は主権国家として、その国に居住する人々の行動の自由と世界中の人々の生命の保護との板挟みになりながら、国際協調により何らかの方法で新型ウィルスを閉じこめるための国際制度を模索すべきであろう。

医薬分野における知的所有権の移転支援

 医薬品産業の特徴として他産業と比較して、研究と開発に長い期間と多くの費用がかかる。また、後発医薬品の参入には、法政策に関する様々な問題がある。後発医薬品参入に関する法制度が整備されている米国の判例をもとに、グローバルに対応できる知的財産の移転支援を提言する。

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