坂口 志文 再生医科学研究所教授が慶應医学賞を受賞 (2008年10月3日)

坂口 志文 再生医科学研究所教授が慶應医学賞を受賞 (2008年10月3日)

  このたび、第13回(2008年度)慶應医学賞の受賞者に坂口志文再生医科学研究所長・教授が選ばれました。

 坂口志文教授の受賞理由は免疫応答のブレーキ役となるリンパ球(制御性T細胞)を発見し、制御性T細胞の機能、各種免疫疾患における役割の解明、さらにこの細胞の発生の鍵となる遺伝子を同定した業績に対するものです。
 慶應医学賞は、基礎医学・臨床医学ならびに医学に密接に関連した生命科学の諸領域を対象として、世界の医学・生命科学の領域において医学を中心とした諸科学の発展に寄与する顕著、かつ創造的な業績をあげた研究者を顕彰するため1996年の創設以来、国内外の多数の有識者から推薦された候補者の中から、国内・国外の研究者それぞれ1名の2名に授与されてきました。
 以下同教授の略歴と業績を紹介します。

 坂口教授は、昭和51年京都大学医学部を卒業、同年京都大学大学院医学研究科に進学、昭和58年京都大学医学博士の学位を授与されました。京都大学医学部卒業後は、京都大学医学部附属病院医員等を経て、外国の大学や研究所の研究員等を歴任したあと、平成4年新技術事業団「さきがけ研究」専任研究員、平成7年東京都老人総合研究所免疫病理部門長、平成11年京都大学再生医科学研究所教授を経て、平成19年10月より再生医科学研究所長に就任し、現在に至っています。

 坂口教授は、平成15年に持田記念学術賞、平成16年に米国Cancer Research Instituteより、William B. Coley賞、平成17年に武田医学賞、高峰記念三共賞、平成19年に文部科学大臣表彰科学技術賞、平成20年に上原賞を受賞しています。
 坂口教授は、正常な個体中に存在し、自己免疫病、アレルギーなどの免疫疾患の発症を抑制しているリンパ球として制御性T細胞を発見し、その機能、発生過程の分子的基礎を明らかにしました。この細胞群を増殖、機能強化することにより様々な免疫疾患の発症を阻止できること、また移植臓器に対する拒絶反応を抑制できることを示しました。逆に、この抑制性細胞群の減少、機能弱化により癌細胞に対する免疫応答を惹起、強化できる可能性を示しました。
 ヒトの免疫疾患の克服に向けて同教授の今後の活躍が期待されています。