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女性は生理が近づくとなぜ憂鬱になるのか?

2012年3月8日


正高教授

 閉経前の成人女性の大多数は排卵後の生理がちかづく時期になると、多少とも気分がおちこんだり、鬱になったりすることは以前からよく知られています。欧米ではPMS(前メンス症候群)という診断名が流布しています。しかし、いままでその判断は本人への質問紙による、主観的な気分の表現のききとりにとどまり、気分の変化を客観的にとらえる試みはまったく行われてきませんでした。

 最近、正高信男 霊長類研究所教授らは、60人の29~30歳の健康な独身女性を対象に生理後5日(卵胞期)、13日(排卵期)、25日(黄体期)に8枚の花の写真と1枚の蛇の写真を同時にみせ、そのなかから蛇の写真を正しくできるだけ迅速にみつけだすという視覚探索課題の実験をおこない、その成績を比較する実験をおこないました。その結果、黄体期には卵胞期、排卵期にくらべ、蛇の発見が早くなる事実をみいだしました。

 おもしろいことに、反対に8枚の蛇の写真と1枚の花の写真を同時にみせ、そのなかから花の写真をみつけだす成績には変化がありません。嫌悪刺激に対する感受性だけが、生理前に特異的に亢進すると考えられます。この手法は、人間の不安状態を簡易にかつ信頼性が高い状態で計測する可能性をひらいたものと考えられます。

 なお、この研究成果は3月8日付けのScientific Reportsに公表されました。

関連リンク

  • 論文は以下に掲載されております。
    http://dx.doi.org/10.1038/srep00307
    http://hdl.handle.net/2433/153487 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI))
  • 以下は論文の書誌情報です。
    Masataka N, Shibasaki M. Premenstrual enhancement of snake detection in visual search in healthy women. Sci. Rep. 2. 2012. DOI:10.1038/srep00307

 

  • 京都新聞(3月9日 29面)、産経新聞(3月9日 26面)、中日新聞(3月9日 3面)および毎日新聞(3月9日 29面)に掲載されました。