セクション

ハダニは天敵から身を守るためによそ者同士で協力する

2012年2月21日

 矢野修一 農学研究科助教の研究成果が、ドイツの行動学専門誌(Behavioral Ecology and Sociobiology電子版 2月18日付)に掲載されました。

【論文情報】
タイトル
Cooperative web sharing against predators promotes group living in spider mites
(対捕食者防御網の協同利用がハダニの集合性をもたらす)
著者:
Shuichi Yano (矢野修一)

研究の背景と概要

 サバンナで草食獣と肉食獣が命がけの攻防を繰り広げるように、葉っぱの上では植物を加害する害虫と、それを餌にする天敵との攻防がみられる。農作物の害虫として知られるハダニ類の体長は0.5ミリと小さく、葉面に薄い網を造り、葉面と網の間に群れて葉の汁を吸う。動物が群れると通常は餌や住み場所をめぐる仲間内の競争が激しくなるので、よほどの利益がない限り群れることは割に合わない。著者は、ハダニが天敵に対して共同で身を守るために群れることを解明した。

 ハダニの網は大部分の天敵が侵入できない安全地帯だが、餌の葉が劣化して居場所を移すたびにハダニは網を新築せねばならず、網が完成するまでにコウズケカブリダニなどの天敵に攻撃される。この時に群れが大きいほど犠牲になるハダニの割合が小さい。これは天敵が1匹目のハダニを平らげる間に網が完成して、2匹目に手が出せないからである。また、単独で網を新築せねばならないハダニは、すでに他個体が新築した網をみつけるとすかさず駆け込んで網にタダ乗りする。一方の、苦労して網を造った先住個体は、間借りする新参個体を追い出さずに仲良く暮らす。これは先住個体にとっても、新参個体と協力して天敵から身を守る方が得策だからである。驚いたことに、この協力関係は別種のハダニ(ナミハダニとカンザワハダニ)の間でもみられる(写真)。共通の天敵に対して別種が協力する行動は、同種内の協力行動から発達したようだが、ハダニが同種の交尾相手を識別できることを考えると、別種だと知りながら打算的に協力している可能性が高い。人の世では異質な者同士が状況に応じて手を組むことは簡単ではないが、生死をかけたダニの世界では当たり前の行動らしい。

   

  1. 写真:寄り添って暮らす(1)カンザワハダニと(2)ナミハダニ、その隙をうかがう天敵の(3)コウズケカブリダニ。2匹のハダニの周囲は網(右写真)に守られている。

関連リンク

  • 論文は以下に掲載されております。
    http://dx.doi.org/10.1007/s00265-012-1332-5
    http://hdl.handle.net/2433/153051 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI))
  • 以下は論文の書誌情報です。
    Yano S. Cooperative web sharing against predators promotes group living in spider mites. Behavioral Ecology and Sociobiology. 2012.
    doi:10.1007/s00265-012-1332-5.

 

  • 科学新聞(3月9日 2面)に掲載されました。