抗体を用いて創薬標的膜たんぱく質の結晶構造を得ることに成功 -全く新しい阻害機構を持った薬剤の設計が可能に-

抗体を用いて創薬標的膜たんぱく質の結晶構造を得ることに成功 -全く新しい阻害機構を持った薬剤の設計が可能に-

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用語解説

モノクローナル抗体

単一の抗体を産生する細胞が作る抗体のクローンで、1種類の抗原とだけ反応する。

X線結晶構造解析

解析対象のたんぱく質を結晶化し、X線照射によって得られる回折データから、結晶内部で原子がどのように配列しているかを決定する手法

アデノシンA2a受容体

アデノシンA2a受容体はアデニル酸シクラーゼ促進性のGたんぱく質(Gs)と共役するGPCRで、線条体や大脳皮質、海馬、冠血管、肺、血小板など生体内の幅広い部位に分布している。その生理機能は、神経活動の制御、血管拡張、内蔵平滑筋の弛緩など多岐に渡る。コーヒーに含まれるカフェインはアデノシンA2a受容体の拮抗剤であり、アデノシンの結合を阻害することにより睡眠覚醒作用を示す。コーヒー愛飲者はパーキンソン病にかかりにくいと言われていたが、近年アデノシンA2a受容体の拮抗剤がパーキンソン病などの神経変性疾患に対する効果が正式に認められ、その特異的医薬品創成が盛んに行われている。

ピキア・パストリス(Pichia pastoris

酵母の一種。高密度培養が可能であるため、組換えたんぱく質の発現系としてよく使われている。

アゴニスト(作動薬)

受容体に結合し、神経伝達物質やホルモンなどの生体内物質(リガンド)と同様の機能を示す物質のこと

アンタゴニスト(拮抗薬)

受容体には結合するが、受容体の作用自体は起こさない物質で、本来結合すべき生体内物質が受容体に結合することを阻害する。

Fabフラグメント(右図参照)

抗原との結合領域を含む抗体の一部。抗体はパパイヤに含まれるたんぱく分解酵素パパインによって、2分子のFabフラグメントと1分子のFcフラグメントに分解される。抗体フラグメント(Fab)は重鎖(Fab(H))と軽鎖(Fab(L))から形成されている。

超可変領域(右図参照)

Fabフラグメントの先端半分にある抗原の結合領域(可変領域)のうち、直接抗原と接触するため変化が大きい領域で、CDR(complementarity-determining region)と呼ぶ。

アロステリック逆作動薬活性を持つ機能性抗体

生体内物質(リガンド)が結合する部位とは異なる部位に結合し、完全にたんぱく質を不活性化する機能を持った抗体